列車が平均して移動する速さに「表定速度」があります。山手線に接続する路線のうち、「表定速度」が速いのはどの路線でしょうか。総武・常磐線方面として、JR京葉線や京成線、つくばエクスプレスなども含め調べました。

ラッシュ時の「表定速度」を比較

首都圏で住む場所を決める際、最寄り駅から都心までどれだけ早く通勤できるかというのは大きな指標となります。その所要時間は距離によって一概に決まらず、路線や列車の種別によって開きがあるのも現状です。いったいどの路線のどの列車が、距離に対して早く都心に到達できるのでしょうか。

駅の停車時間も含めて、列車が平均して移動する速さを求めたものに「表定速度」があります。これをもとに、総武・常磐線方面の10km圏から50km圏にかけて、朝ラッシュ時の表定速度を調べてみました。具体的な範囲は、首都圏つくばエクスプレスよりも東南側に伸びる路線が対象です。

調査は、JR山手線を中心に放射状に延びる路線のうち、ラッシュの最混雑時間帯である平日朝7時50分から8時30分に山手線接続駅へ一番速く到達する、乗り換えなしの直通列車を対象としています。発駅は10km圏から50km圏のうち、快速や急行といった優等列車が停車する主要駅を優先的に選んでいます。

そのため、お昼の時間帯には速い列車でもそのパフォーマンスを活かしきれていなかったり、速達列車がラッシュ時にはなかったりする場合があります。また、別途料金が発生する特急やライナーなどは除外しています。

キロ数は時刻表などに記載されている「営業キロ」に基づいており、実際の距離とは異なる場合があります。また、算出された数値はあくまで計算上のもので、運転状況により体感的なスピードと乖離する場合があります。

10km圏から30km圏は常磐線が速い 駅間の長さが要因

では、10km圏から見ていきましょう。1位はJR常磐線の松戸~日暮里、2位は京成本線の青砥~日暮里でした。どちらも日暮里駅に接続する路線で、駅間が長いのが特徴です。常磐線の松戸~北千住間は10.5kmを無停車で走りますし、京成本線の青砥~日暮里間も、通勤特急が9.4kmをノンストップで駆け抜けます。

続く3位は、JR京葉線の葛西臨海公園~東京と、つくばエクスプレスの青井~秋葉原で、表定速度は同率の48.9km/hでした。このふたつは各駅停車タイプですが、これも駅間が長いことで有利になっていると思われます。たとえば、7位のJR総武線 小岩~秋葉原間では6駅に停車しますが、京葉線つくばエクスプレスは4駅です。

続いて、20km圏はどうでしょうか。1位は常磐線で変わらずですが、表定速度を10km圏の55.4km/hから、64.6km/hに伸ばしています。これは柏~松戸間の11.2kmを停車しないで走るためと考えられます。

2位には、10km圏では5位だったJR総武線快速が浮上しています。僅差でつくばエクスプレスも3位を維持しています。要因は常磐線と同様、いずれも東京都外に出たことで、駅間が長くなったためと考えられます。4位には京葉線が続いています。

30km圏でもこの上位の顔ぶれは変わらず、1位 常磐線、2位 つくばエクスプレス、3位 総武線快速、4位 京葉線と続いています。

40km 50km圏では京葉線が躍進 特急よりも止まらない通勤快速

では、40km圏を見てみましょう。情勢が一変し、それまで4位につけていた京葉線が1位に躍り出ています。表定速度も67.9km/hと、頭ひとつ抜きん出ています。これは区間が40km圏に広がり、通勤快速が新たに対象となったためです。

京葉線通勤快速は、千葉市蘇我駅を出発すると東京都江東区新木場駅まで、29分間ノンストップで走り続けます。この間35.6kmで、表定速度は73.7km/hです。新木場駅からは八丁堀駅東京駅に停車し表定速度は落ちますが、それでも67.9km/hを保っています。同区間を日中に走る特急「わかしお」でも途中、千葉市海浜幕張駅に停車しますので、特急よりも停車しない列車といえるでしょう。

それまで2位にいたつくばエクスプレスは4位へと後退し、常磐線総武線快速が2位と3位につけています。

50km圏でも、京葉線内房線直通)がトップに立ち、2位に常磐線が続きます。3位は京葉線外房線直通)で、つくばエクスプレスは4位と変わりません。

つくばエクスプレス首都圏最速の130km/hを出すことが可能で、日中運行される快速は、茨城県つくば駅と東京の秋葉原駅の58.3kmを45分で結びます。表定速度にすると77.7km/hにもなるのですが、朝の通勤時間帯は運行されておらず、このポテンシャルを活かせずにいます。以前は朝も通勤快速が運行されていたのですが、2020年3月のダイヤ改正で廃止されました。

距離に対する時間効率がよい総武・常磐線方面

50km圏で見ると、1位から4位まで表定速度60km/h以上となっています。千葉・茨城方面は、距離に対する時間効率がよいと同時に、住宅の購入価格や家賃の相場が安いのも特徴です。コストパフォーマンスに優れているといえるかもしれません。

2020年4月現在、新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務テレワーク)という働き方が大きく取りざたされ、また広く浸透しました。まだ先行きは不透明ですが、毎朝満員電車に乗って会社に出社する、という既成概念が変わりつつあるようにも、筆者(河嶌太郎:ジャーナリスト)は思います。もしそうなれば、週2、3日の出社なら40km圏より離れた郊外に住むという考え方も出てくるかもしれません。

今回は表定速度に着目しましたが、速度面以外でも本数や遅延混雑率、狙って座れる始発駅かどうかなど、路線を選ぶ基準は多々あります。そのなかで、住む場所を選ぶひとつの参考になればと考えます。

JR常磐線のE531系(画像:写真AC)。