京都国立近代美術館で「チェコ・デザイン 100年の旅」展が開催中。新型コロナウイルス感染拡大防止のための臨時休館により延期となっていたが、5月26日(火)より感染予防策を行い、美術館の再開館と同時に開幕した。会期を7月5日(日)まで延長して開催される。

【写真】「チェコ・デザイン 100年の旅」会場風景。コロナ対策で館内では会話は控えめにするよう呼びかけている

芸術家アルフォンス・ミュシャ(ムハ)が生まれ、またフランス絵画から影響を受けたチェコ・キュビズムと呼ばれる独自の様式を生み出した国として知られているチェコ。展覧会では、家具や食器から、アニメやおもちゃに至るまで、20世紀のチェコで生まれ、世界を魅了した数々のデザインにスポットライトを当て、それらを歴史背景とともに紹介する。

■コロナ対策を行い、全国の国立美術館の中でも先陣を切って再開館

チェコ・デザイン 100年の旅」を開催する京都国立近代美術館は、新型コロナウイルスの影響で休館していた全国の国立美術館の中でも最も早い再開館となった。柳原正樹館長は開館を喜びつつも「来館者の方には検温をしたり、あるいは密にならないようになど、色々なガイドラインを元に展覧会を開催しております」と、感染症対策について話す。

美術館では、職員のマスクやフェイスガードの着用、1時間に50人の入場制限を行うほか、来館者にもマスクの着用と、万が一感染者が確認された場合は情報をホームページで公開するため、来館した日付と時間の記録をするよう呼びかけている。

■家具からおもちゃまで。チェコの優れたデザインを時代背景と共に紹介

本展覧会は、チェコのデザインの100年を10章に分け、歴史をたどりながら観ることができる。展覧会を担当した特定研究員の本橋仁氏は「この展覧会の特徴はなんといってもチェコのデザインを100年を通じて紹介しているということ」と見どころを語る。過去におもちゃやアニメなど、部分的に取り上げられることはあったが、今回のように20世紀の100年を通して観られるのは初めてなのだそう。

時には厳しい国家情勢に置かれたチェコをデザインとともに知ることができる本展覧会。それでも展示品を見ていると思わず「おしゃれ」や、「かわいい」といった言葉が出てしまう。本橋氏にチェコのデザインが注目される理由を聞いてみると「どんなにとがった最先端の前衛的なものを取り入れても、自分たちの生活のしやすいように変えていってしまう。特にキュビズムは絵の表現なのに小箱にしている。そういった翻訳の仕方が愛されている理由なのかも」と語った。

■展示物だけじゃない。京都限定の工夫を凝らした展示方法にも注目!

展示物の優れたデザインの数々はもちろんだが、展示方法のデザインにも注目したい。会場に入ると、むき出しの木材の板や木枠で壁が覆われていることに気付く。説明が書かれた紙は板に赤いテープで留められているだけ。ガラスケースの中の展示物も外側から見ると、木枠でフレームの様に分けられている。

この仕掛け人も、実は特定研究員の本橋氏。「チェコ・デザイン 100年の旅」は全国を巡る巡回展だが、展示方法には京都開催だけの独自の工夫を取り入れた。本展覧会で作品も展示されている舞台美術家、ズデニェク・ロスマンの著作から、かつてドイツで行われ、建築家、デザイナー、アーティストの3人が作った展覧会を参考にしたのだそう。

通常の展覧会では説明パネルなどは施工業者に任せているが、今回はどのように情報を示すのかも含め、建築の分野にも精通する本橋氏が、グラフィックデザイナーと共にゼロから作り上げた。

また、デザインの展覧会ということで、絵画などとは違い、食器などの生活に身近な物が展示されている。「作品」としてではなく身近なものとして感じてもらえるよう、タイトルなどが書かれたキャプションはすぐ横には置かず、あえて展示物から少し離したところに設置されている。

250点に及ぶチェコのデザインとともに、展示のデザインにも注目して楽しんでみてはいかがだろうか。感染症対策に配慮しながら、じっくりと展覧会を堪能しよう。

●「チェコ・デザイン100年の旅」開催概要

期間:2020年5月26日(火)~7月5日(日)

会場:京都国立近代美術館

開館時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、開館時間は変更となる場合があります。来館前に最新情報をご確認ください。

休館日:毎週月曜日

観覧料:一般 1400円、大学生 1000円、高校生 500円、中学生以下無料

新型コロナウイルスの影響により、会期が変更されています。会期変更前に購入した前売り券は変更後も利用できます。

「チェコ・デザイン 100年の旅」5月26日(火)~7月5日(日)に期間を変更して開催中