2013年8月19日に決まった「同人マーク」のロゴデザイン。でも、同人マークそのものがあまりまだ知られていないせいか、誤解が目立ちます。一部のサイトでは「このマークが無いと二次創作を作っちゃ駄目!」のように説明されていたりもします。これは違いますし、あまりよくない表現なので、ちょっと簡単に説明していきたいと思います。

●そもそも同人マークって何なの?

「このマークがついている作品の二次創作同人誌を作ることを作者本人が認めていますよ」というものになります。運営するのはクリエイティブ・コモンズジャパンの活動母体であるコモンスフィアとなります。

そもそも二次創作同人誌は、著作権的にかなりグレーな存在でした。グレーというか、黒と言ってもいいでしょう。残念ながら日本にはパロディオマージュを認める法律がありません。そのため、過去にも二次創作の同人作家が訴えられて負けるという事例がいくつかありました。ドラえもん最終話同人誌問題とか、ポケモン同人誌事件とかが有名です。

なので、基本的には二次創作同人誌は、作者の黙認の上で成り立っている文化でした。著作権法違反親告罪のため、告訴がなければ公訴を提起することができません。つまり、作者側などから文句が出なければ、黙認しますよというものなのです。

今回の同人マークは、作者側が「このマークがついている作品は、二次創作作品の即売会での配布のみを許可しますよ」というものです。今までは黙認していたものを、明確に作者側から許可を出せるようにしてみたというわけなのですね。

●なんで同人マークが必要なの?

いま、著作権が大きく変わる可能性が出ています。それは、日本がTPPに参加するかもしれないからです。

TPPに参加すると色々なことが変わる可能性があるのですが、問題になっているのは著作権法違反非親告罪化するかもしれないということです。非親告罪化するということは、著作者側が訴えなくても、第三者が違反していると判断をしたら訴えられる可能性が出てくるというわけです。

こうなると、いくら著者側が問題ないよと言っていても、警察側の裁量で勝手に取り締まることができてしまうわけです。これは困りますよね。

なので、作者側が「二次創作同人誌を作ってもいいですよ」と黙認している証拠として使われるのがこの同人マークになるわけです。同人誌側がつけるものではありません。作った同人誌を運営団体に審査のために提出するわけでもありません。著作権法違反非親告罪化したときに、警察ともめたりした場合に作者が許可をしている証拠になるという、同人誌作家を守るためのものなのです。

もちろんこれは、二次創作同人誌の配布のみを許可しているものです。作品をそのままコピーすることは禁止されています。そして、このマークが無い作品の二次創作をしてはならないというものではありません。著作権法違反非親告罪化が実現してしまったときの防波堤となる、言わば漫画業界や二次創作同人誌市場を守るためのディフェンス的な案なのです。

この同人マークは、8月末の講談社週刊マガジン」より連載が開始される、同人マークの提唱者である赤松健作品で初めてつけられる予定です。まずは運営してみて不具合が起きるようだったら修正されていくとのことで、TPPの状況も含めて今後とも注目していきたい問題です。
(杉村 啓)

「同人マーク」は公募の末、かすり氏によるデザインが採用された。 8月末の講談社「週刊マガジン」における赤松健の新連載より記載が開始される。