首都高の出入口は一般的に、スロープ状のランプウェーで一般道と接続していますが、足立区の加平出入口は、とぐろを巻いたようなループ構造になっています。ローマのコロッセオにも似た外観のランプウェーはなぜ誕生したのでしょうか。

向かい合うふたつの「コロッセオ」

首都高の出入口は一般的に、高架の本線と地上の一般道がシンプルなスロープで結ばれていますが、なかには変則的な形状の場所もあります。そのひとつとして、東京都足立区にある6号三郷線の加平出入口が挙げられるでしょう。

加平出入口は環七通りと接続し、上下線双方の出口、入口とも完備、また下り線側の入口から上り線へ入るといったことも可能な、首都高としては珍しいフルインターチェンジです。

特徴的なのはその構造で、ランプウェーがとぐろを巻いたようなループ状の構造になっており、かつ、上部がアーチ状になった窓が連続する側壁が設けられています。この、あたかも古代ローマの円形闘技場「コロッセオ」を思わせる円形状の巨大な建造物が、環七通り内回り外回りおよび首都高の上下線を挟んで斜めに向かい合う形で、ふたつそびえ立っています。

このループ構造により、高低差のある高架の首都高と地上の道路とを結んでいるわけですが、同じ足立区内で環七通りに接続するS1川口線の鹿浜橋出入口は、単純なスロープ構造です。なぜ加平出入口は、「コロッセオ」のようになったのでしょうか。

極めて合理的な構造の「コロッセオ」

首都高速道路によると、加平出入口は「環七通りの双方向と直接接続すること」かつ「一般道側に交差点を設けないこと」を前提に、「できる限り用地を小さくする」という3つの条件を満たすべく設計されたといいます。

S1川口線 鹿浜橋出入口の場合、環七通り外回りから首都高の川口方面には直接流入できますが、それ以外のランプウェーは、荒川の土手に沿って走る首都高高架下道路に接続しており、環七通りと行き来は可能なものの、直接つながっているわけではありません。

対して加平は、ふたつの「コロッセオ」にそれぞれ入口と出口が並列しており、環七通りから首都高ランプウェーに入るのも左折、首都高から環七に出るのも左折でできます。

いまでは、このようなループ状のランプウェーはC2中央環状線3号渋谷線が接続する大橋JCTをはじめ複数のJCTに見られるほか、2020年2月に開通したK7横浜北線の馬場出入口(一部ランプは未開通)も、丘陵地を通る一般道と首都高の地下トンネルを結ぶためループ状の構造をしています。いずれも小さな用地で高低差を克服しているもので、これら首都高における「ぐるぐるランプ」の元祖が、1985(昭和60)年に開通した加平出入口なのです。

ちなみに、加平の「コロッセオ」はふたつとも、上空から見ると空洞になっており、そのスぺ―スはいずれも首都高の管理用車両の駐車場になっています。一方、前出の大橋JCTも外から見ると、地下から地上に筒状の建造物が突き出た形になっていますが、この上は緑地化され水田まで作られており、地元小学生などの環境学習の場として使われています。

※一部修正しました(5月29日18時45分)。

上部がアーチ状になった窓が連続する加平出入口の側壁。この円形の建造物がふたつ、環七通りと首都高を挟んで向かいあう(2020年3月、乗りものニュース編集部撮影)。