第2次世界大戦では、飛行機は性能向上だけでなく、現代に繋がる大量生産体制までも確立、日本においても万単位で飛行機の生産が行われました。同期間中に使用されたなかで、最も多く生産された主要軍用機のトップ5を見ていきます。

トップは「空飛ぶ戦車」の異名を持つソ連機

1939(昭和14)年から1945(昭和20)年まで続いた第2次世界大戦期に、航空機は飛躍的な発展を遂げました。わずか6年ほどのあいだに、全世界で計80万機近くが生産されています。大戦において使用された主要軍用機、すなわち戦闘機攻撃機爆撃機のなかで生産数トップ5を挙げてみました。

1位:イリューシン IL-2対地攻撃機(ソ連)

第2次世界大戦中に用いられた主要軍用機で最も生産数が多いのは、ソ連のイリューシン設計局が開発したIl-2対地攻撃機です。同機は1939(昭和14)年12月20日に初飛行し、1941(昭和16)年から1945(昭和20)年までの4年間で3万6183機が生産されました。

エンジンからコクピットまでの機体外板が装甲を兼ねており、航空機としてはきわめて高い防御力を持つのが特徴です。そこから別名「空飛ぶ戦車」とも呼ばれました。

なお、Il-2の愛称として「シュトルモビク」というのが比較的知られていますが、これは「襲撃機」や「攻撃機」を表すロシア語であり、同機以外の地上攻撃機でも用いられます。

2位:メッサーシュミット Bf109戦闘機(ドイツ)

戦闘機として史上最も生産された機体は、ドイツバイエルン航空機製造が開発したBf109Me109)です。1935(昭和10)年5月28日に初飛行すると、1936(昭和11)年から1945(昭和20)年までに3万3984機が生産されました。

また、大戦後にはチェコスロバキアスペインで、独自改良のアヴィアS-199やイスパノHA-1109/-1102などが生産されています。これらも含めると、その数は3万4852機になります。

なお1938(昭和13)年に、バイエルン航空機製造から設計者のメッサーシュミットが独立したため、以後Me109という呼称も使われるようになります。Bf109Me109の両方の呼称があるのはそういう理由からです。

バトルオブブリテンを戦った傑作機がランクイン

第2次世界大戦の優秀機は、戦争終結後も生産されることがあります。

3位:スーパーマリン スピットファイア戦闘機(イギリス)

前述したメッサーシュミットBf109の好敵手として、よく比べられるのがイギリスのスーパーマリン「スピットファイア戦闘機です。

初飛行は1936(昭和11)年3月5日で、1938(昭和13)年から量産がスタート、大戦後も生産が続けられ、1948(昭和23)年までの10年間で2万351機が作られました。なお空母で運用する艦上機型の「シーファイア」が2646機、生産されているため、両者を合計すると2万2997機になります。

同機には前述した艦上機型も含めて23ものタイプがあり、末期型はエンジンだけでなくプロペラ形状や胴体形状まで一新されて、初期型とは別の機種と思えるほど変わっています。

なお愛称の「スピットファイア」には、「短気な人」や「癇癪(かんしゃく)女」という意味もあるそうで、同機の主任設計技師は終生、この愛称を気にいることはなかったそうです。

4位:フォッケウルフ Fw190戦闘機(ドイツ)

空冷エンジン搭載の戦闘機として最も生産数の多いのが、ドイツFw190戦闘機です。初飛行は第2次世界大戦勃発直前の1939(昭和14)年6月1日で、同年から量産が開始され、1945年の大戦終結までに2万51機が生産されました。

ただし、D型だけは高高度性能の向上を図るため水冷エンジンに換装したため、機種形状が異なります。空冷エンジン搭載は初期型のA型と、戦闘爆撃機仕様のF型およびG型で合計約1万9300機です。

ちなみに、大戦後フランスが低コストで高性能な戦闘機を調達するために、Fw190を自国で再生産しています。SNCAC NC900の名で64機が作られ、1947(昭和22)年までのごく短期間、運用されていました。

4発エンジンの大型機で最多生産はアメリカ製

第2次世界大戦の最多アメリカ機は、戦闘機ではなく爆撃機です。

5位:コンソリデーテッド B-24「リベレーター」爆撃機(アメリカ)

4発エンジン機として史上最多の生産数なのが、アメリカのコンソリデーテッドが開発したB-24爆撃機です。第2次世界大戦で使用されたアメリカ機としても最多の生産数を誇ります。

初飛行は1939(昭和14)年12月29日で、翌1940(昭和15)年から本格生産を開始、1945(昭和20)年の大戦終結までに1万8482機生産されています。なお、アメリカ海軍向けに垂直尾翼や銃座など大幅に変更したPB4Y-2「プライヴティア」哨戒爆撃機が739機生産されているため、これを加えるとB-24シリーズとしては約2万機にもなります。

ちなみに、日本の軍用機で最も生産数が多いのは、「零戦」こと旧日本海軍零式艦上戦闘機です。とはいえ、その数は1万430機で、ここにあげた各機の半分から3分の1でしかありません。冒頭に述べたとおり、主要軍用機を戦闘機攻撃機爆撃機に限定した場合、生産数では17位もしくは18位です。

主要軍用機に絞らず、第2次世界大戦で使用された機体として見ると、最多生産機はソ連のポリカルポフPo-2(U-2)になります。同機は複葉機で性能は低かったものの、扱いやすい汎用機として、練習機や偵察機、連絡機、軽攻撃機と多用途に使われました。

Po-2は、大戦後の他国におけるライセンス生産分まで含めると4万機以上といわれます。この数には民間機としての生産数も入っているため、純然たる軍用機の数にはなりませんが、上には上がいるともいえるでしょう。

わずか4年間で3万6000機以上生産されたソ連のIL-2対地攻撃機(画像:サンディエゴ航空宇宙博物館)。