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2019年は波乱の年

2019年自動車業界はふたたび大きな混乱に見舞われることとなった。

中国の新車市場が2年連続で縮小するとともに、米国、日本、英国、そしてインドでも販売台数が減少している。

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テスラモデル3

だが、こうした市場で320万台近く新車販売が減少した一方で、ドイツフランスブラジルでは販売数量増を記録している。

2020年も中国市場の減少傾向は続くと予想されており、とくに新型コロナウイルスの影響が懸念材料だ。

一方、フォルクスワーゲンは引き続きディーゼルゲートの余波に苦しみながらも、トヨタを上回って世界販売台数トップの座を維持することに成功した。

世界的なSUV人気が継続するとともに、米国市場ではGMがフォードを抑えてトップの座を維持している。

スポーツカーカテゴリーでは911が並み居るライバルを打ち負かした結果、ポルシェ2019年トップの座に君臨した。

パフォーマンスカー市場ではフォード・マスタングベストセラーとなり、テスラモデル3が世界のEV市場を席捲している。

今回ご紹介するすべてのデータは世界全体の85%を占める53の市場に関するJato Dynamics社の速報値に基づくものだ(12月実績には予想値も含む)。

各市場別世界販売状況*

中国市場は約200万台も販売台数を減らしており、これは20年以上ぶりのことだった。

多くの自動車メーカーが販売と収益面で大きく中国に依存するなか、2020年の業績を上向かせるにはこの市場の回復が喫緊の課題となっている。

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各市場別世界販売状況

2020年の新車販売増には、中国の消費者心理の回復と家計の債務残高の削減が必要です」と、Jato Dynamicsでグローバルアナリストを務めるフェリペ・ムニョスは指摘している。

市場全体での新車販売が1700百万台越えという歴史的な水準にあることを考えれば、米国における販売減はそれほど懸念されてはいない。

「昨年の実績は史上まれに見るものでした」と、ムニョスは話す。

世界全体で見ればインドが最大の下げ幅を記録しており、2018年に出された新車販売台数でのドイツ越えという予測もまだ先のことになるだろう。

「新規に導入された安全性と燃費性能に関する規制と税金の影響によって、インドでは多くが新車の購入を延期したり、契約をキャンセルしています」と、ムニョスは言う。

欧州における販売台数の微増は、平均CO2排出量95g/kmという2020年から導入される新規制を前に、排出量の多いモデルに対する駆け込み需要が12月に発生したことが要因だった。

*乗用車と小型商用車を含む

フランス vs 英国

Jatoが示した世界販売台数統計によれば、乗用車と小型商用車の合計でフランスが英国をわずかに上回り、世界第6位の新車市場となったようだ。

これにはふたつの理由がある。

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フランス vs 英国

英国の新車販売が5万6000台減少(EU離脱に伴う混乱とディーゼル人気の落ち込みによるものだ)した一方、フランスでは3万8000台の伸びを記録しており、商用車も英国に比べ大幅な販売増を達成している。

その結果、乗用車単体では英国が依然として世界第6位の新車市場の地位を確保しているものの、商用車を含めるとフランスが英国を上回ることとなった。

EV市場:テスラ・モデル3 vs 中国製低価格EV

テスラモデル3が圧倒的な販売台数により世界でもっとも売れたEVの地位を獲得しており、2位に約3倍もの大差を付けている。

2019年は米国と欧州でEVのベストセラーとなっており、上海工場の稼働開始に伴い、2020年には中国市場での躍進も期待されている。

販売台数第2位となったのが、フォルクスワーゲンゴルフ並みのボディに41kWhのバッテリーを積み、補助金無しでも1万5000ポンド(215万円)という価格を実現しているサルーンモデルのBAIC(北京汽車)のBJEV EUだった。

日産のリーフも依然として世界第3位のポジションを確保しているが、新型にモデルチェンジしたことを考えれば、この結果は満足できるものではないだろう。

ボディスタイル別:欧州での人気モデルは?

昨年には史上初めて日産キャシュカイフォルクスワーゲン・ティグアン、フォード・クーガといったミッドサイズSUVが、Cセグメントに属するハッチバックやワゴンモデルを販売台数で上回るのではないかと言われていたが、わずかに届かなかったようだ。

「それでもこのまま堅調に販売数を伸ばせば、来年には逆転するかも知れません」と、ムニョスは言う。

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ボディスタイル別:欧州での人気モデルは?

「それでも、ミッドサイズSUVが市場もっとも売れているカテゴリーというわけではありません」

スーパーミニが欧州では依然として人気のモデルであり、平均CO2排出量95g/kmという新規制のもと、シティカーと呼ばれるAセグメントの必要性が高まることで、今後数年間は販売数の増加が見込まれている。

高級車市場:メルセデスが好調

2019年の高級車市場は、世界販売232万台を達成したメルセデスBMWの追撃を振り切ってトップの座を維持することに成功している。

トップ5社がすべて前年越えか前年同等の販売台数を達成しており、レクサスボルボが最大の伸びを記録する一方、リンカーンも好調だった。

BMWSUVモデルチェンジと新型3シリーズの導入、さらにはメルセデスが販売数を減らした中国市場での販売増が強みとなった。

「ですが下位ブランドは苦戦を強いられており、インフィニティジャガーが大きく販売台数を落としています」と、ムニョスは話す。

インフィニティが欧州市場から撤退する一方、ジャガーは主力のサルーンモデルが不調だった。

2020年にはテスラランドローバーを上回って世界第7位の高級車ブランドになる可能性があり、これが実現すればテスラにとっては大きな成果となるだろう。

グループ販売台数:世界最大の自動車グループは?

フォルクスワーゲングループではすべてのブランドからさまざまな新型SUVモデルを投入することで、2019年の世界販売トップの座を維持することに成功している。

だが、トヨタとのし烈な首位争いに直面しており、過去20年に渡って育んできたハイブリッド技術がようやく市場に受入れられつつあることで、2019年トヨタトップ10社のなかで唯一となる販売増を記録している。

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テスラの当たり年

「最新のカローラRAV4がこの販売増に貢献するとともに、ハイブリッドモデルも引き続き売り上げを伸ばしています」と、ムニョスは話す。

テスラの当たり年

2019年テスラは世界EV市場で23%のシェアを獲得することに成功している。

米国市場が彼らの全販売台数の52%を占めており、それに続くのが欧州と中国だ。

「将来的にはより多くの電動SUVが登場するなかで、モデル3がその高い人気を維持できるかどうかに注目です」と、ムニョスは言う。

モデル3はサルーンであり、サルーンはいまSUVに市場を侵食されているのです」

スポーツカー:911の強さは変わらず

常に新鮮さを失わないポルシェ911は8代目へとモデルチェンジしても、世界でもっとも売れているスポーツカーの地位を保つことに成功している。

確かに販売台数はわずかに減少したものの、これは991から992への世代交代が大きな理由だった。

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ポルシェ911

第2位がシボレー・コルベットであり、同じくモデルチェンジの影響を受けることとなった。

新たなパフォーマンスモデルとなる2ドア(4ドアのグランクーペはこの数値には含まれない)の8シリーズがすぐに実績を上げたことは、BMWにとっては大きな喜びとなるだろう。

新型8シリーズが登場した結果、メルセデスAMG GTは第4位へと順位を落としている。

欧州市場:勝者と敗者

欧州市場ではテスラが最大の勝者であり、ポルシェジャガーアルファ・ロメオを上回るとともに、スマートに肉薄しており、この躍進のカギがモデル3の投入だった。

大衆車ブランドダチアも、すでにモデル末期の小型車2台と新型ダスターという限られたラインナップしか持たないにもかかわらず検討している。

スペインフランスではサンデロが最大の売れ筋モデルとなった一方、ダスターイタリアSUVベストセラーの座を獲得している。

旧態全としたSUVラインナップによって、最大の負け組となったのが日産であり、より新しいライバルたちにシェアを奪われる形となった。

ジュークモデルチェンジはもっと早く行われるべきだったのであり、キャシュカイも新たな厳しい戦いに直面している。

超高級車市場:ロールスが好調

超高級車ブランド7社は合計で3万5454台の新車販売を記録しており、平均的な新車価格を25万ポンド(3589万円)と控え目に見積もっても、その合計金額は約88億ポンド(1263億円)に達している。

ランボルギーニロールス・ロイスはそれぞれ新型SUVモデルが好調な一方、ヴァンテージとDBSスーパーレッジェーラの2台の新型モデルと投入したアストン マーティンでは年間販売台数5000台越えを達成している。

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SUVの台頭は続く

一方、サルーンモデルの不調が響いたベントレーは販売台数を落としているが、今年は新型フライング・スパーがこの傾向に歯止めをかけることになるかも知れない。

SUVの台頭は続く

昨年1年間でなんと2800万台ものSUVが販売されているが、2018年の6%という伸びに比べ、2019年の成長率はわずか1%に留まっている。

SUVとは自動車メーカーにとって麻薬のようなものです。販売台数と利益には貢献しますが、同時に平均CO2排出量の面では負の影響を及ぼすことになります」と、ムニョスは話す。

高級電動SUV市場:Iペイス vs eトロン vs EQC vs モデルX

テスラモデルXがわずかに新型アウディeトロンを販売台数で上回ったが、eトロンが勢いを増す一方でモデルXが新鮮味を失っていくことを考えれば、2020年、eトロントップの座を奪う可能性が高いだろう。

パフォーマンスモデル市場:マスタングの圧勝 ボクスター失速

フォードマスタングが引き続きこの市場を支配する1年となった。

だが、このセグメントで注目すべきはポルシェ718ボクスターとケイマンの失速であり、昨年1年間で20%も販売台数を減少させている。

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パフォーマンスモデル市場:マスタングの圧勝 ボクスター失速

3年前に718が積むエンジンが4気筒ターボのみへと変更されたことで、ポルシェ愛好家の不興を買ったことを思えば、フラットシックス搭載モデルの復活をポルシェが決断したのも当然だろう。

マツダの愛すべきMX-5(日本名:ロードスター)もわずかに販売台数を落としているが、スタイリングが重要となるこのカテゴリーで4年前に登場したモデルであることを考えれば、十分検討していると言えるだろう。

BMWの新型Z4は素晴らしいスタートを切るとともに、ポルシェ718との差を詰めることに成功したことは、ミュンヘンを喜ばせることになるだろう。

アルピーヌが誇るA110はわずかに5000台には届かなかったものの、このクルマの素晴らしさとロードテストにおける高い評価を考えると、いくつかの地域では懸念が残る結果となった。

ムニョスによれば、A110の2/3がフランス国内での販売実績とのことだ。

米国市場:GMがトップを堅持

米国市場では1920年代以降GMがトップの座に君臨し続けている。

10万台ほど販売台数を減らしたものの、フォードトヨタフィアットクライスラーオートモービルズのライバル勢も同じくわずかながら販売数を減少させている。

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米国市場:GMがトップを堅持

もっとも注目すべきは日産の10%減という結果であり、この減少幅は日本のライバルホンダシェアを逆転されるには十分なものだった。

セグメント別でもっとも販売台数を伸ばしたのが22%増を記録したシボレー・サバーバンなどのフルサイズSUVであり、小型ピックアップモデルやフルサイズのバンなども好調を記録している。

ブルーカラーの労働者や、子供の送迎にクルマを使用するいわゆる「サッカーマム」たちの間でSUVへの乗り換え需要が発生したことで、ミニバンやその他主要な3つのセグメントはいずれも引き続き販売数量を落とす結果となった。

中国市場:2020年には回復?

消費者心理が冷え込み、EVに対する補助金が削減されるなか、中国市場の販売減に歯止めをかけるのは容易ではないだろう。

「EVがガソリンモデルの販売減を相殺するほどの伸びを見せない限り、中国市場の回復には時間がかかることを覚悟する必要がありそうです」と、ムニョスは言う。


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