これまで数多くのクルマが世に送り出されてきたが、その1台1台に様々な苦労や葛藤があったはず。今回は「ニューモデル速報 第53弾 新型セドリックグロリアのすべて」から、開発時の苦労を振り返ってみよう。 REPORT:ニューモデル速報編集部

 新型セドリックグロリアの開発を率いることになる三坂泰彦(主管)は、販売企画部(当時)に勤務し、ディーラーから上がってくるクルマに対する要求をまとめて開発部門に伝達する立場にあった。しかし、あまりにも注文をつけるため、スカイラインの開発で有名な桜井真一郎から「それなら自分でやってみたらどうなんだい」と冗談を言われたこともあったという。

 そんなある日、上司に呼ばれた。人事異動だと予想し「ディーラーに出るんなら近い方がいいなぁ」と思っていたが、まさかの乗用車両開発担当の主管を命じられた。昭和60年1月のことだった。

吸気ブランチの長さを変えることで、よりスムーズな吸気が行なえるNICS(電子制御可変吸気コントロールシステム)を採用するVG20DET型エンジン。

 これまでクルマの開発にノータッチだった三坂だが、開発を担当する前に行なっていた市場調査から、そこで得られるデータは過去の状態を語るにすぎず、新しい商品を作る時には参考にはなるが全てではないことを知っていた。新製品を魅力的に感じてもらうためには、ユーザーの生の気持ちを開発陣が把握しなければならないと考えていた。

 そこで、社内の各部署を横断して集めたメンバーで「セドリックグロリア委員会」を結成し、商品力小委員会では設計や実験の担当者に直接ユーザーの家を訪問させてクルマについて聞き出させた。しかも、他社のクルマを持っている人の家に、飛び込みで。難しかったが、その代わりに勉強になることがたくさんあったという。