微生物マスク

image credit:Sum Studio

 コロナによるマスク不足が人々の創造性を高めた。独創的なアイデアのマスクやフェイスシールドが次々と登場している。

 3Dプリンター技術を使用したものや聴覚障碍者を配慮したもの、実用性と同時にデザイン性も重視したものなど多岐にわたる。

 だがそのほとんどはプラスチックを使用して作成されている。そこで今回、デザイナー2人が生分解性のマスクを開発。材料はなんと、自宅キッチンで簡単に培養できる微生物だという。『designyoutrust』などが伝えている。

―あわせて読みたい―

コロナ対策に間に合うか?顔周りの空気を浄化するハイテクマスクが予約販売中。ただし発送は7月予定
シュノーケルマスクを3Dプリンター製バルブで人工呼吸器に接続しCPAPマスクに変換する技術開発に成功(イタリア)
マスクをすると手話が成り立たないから。聴覚障碍者用のマスクを21歳女子大生が開発し無料で発送(アメリカ)
マスクをするならフェイスハガーでありたい。社会的距離なら保てるかもしれないエイリアンなマスクを制作(アメリカ)
おしゃれ度がアップする、サングラス一体型のフェイスシールド


Xylinum Mask from Garrett Benisch on Vimeo.

微生物で作ったセルロースマスクが開発される

 N95マスク使い捨てマスク同様、人工不識布プラスチック繊維で作られたポリマーベースのフィルターが主要素材となっており、これがPPE(個人用防護具)不足の原因とも言われている。

 Sum Studioのデザイナーであるギャレット・ベーニッシュさんとエリザベスブリッジズさんは、PPEに対するより持続可能なアプローチを提供。

 N95マスクの代替品となるプロトタイプとして、キシリナム(xylinum)マスクと呼ばれるセルロースマスクを開発した。

5_e1

image credit:Sum Studio

 キシリナムマスクは、アセトバクター属のキシリナム・アセトバクターという一般的な細菌の副産物であるバクテリアセルロースでできており、なんと自宅キッチンで簡単に育成できるという。キシリナム・アセトバクターは、味付けされていないコンブチャ(紅茶キノコ)に含まれている。

2_e1

image credit:Sum Studio

必要な材料は、水とお茶、砂糖、コンブチャ(紅茶キノコ)


 実際に、家で揃えるのは簡単な材料ばかりだ。水とお茶、砂糖、そしてキシリナム・アセトバクターの少量の微生物サンプルだ。

 液体の表面に生息するキシリナム・アセトバクターから作成されるバクテリアセルロースは、増殖するにつれてセルロース繊維を単一の膜に編み込んでいく。

3_e1

image credit:Sum Studio

 素材はやや透けているが、顕微鏡画像で見ると驚くべきタイトさで編み込まれた繊維質の構成が見えるということだ。

4_e1

image credit:Sum Studio

 スコービー(菌株)の膜が十分厚くなったら、吊り下げて乾燥させる。

 シートは、強力かつ柔軟性があり、何より生分解性なので環境にやさしい。

 このシートに防水加工もしくは油を塗ることで、薄い革の柔らかさと強さを同時に実現させることができるそうだ。

6_e0

image credit:Sum Studio

持続可能な解決策の提供を目指して


 全てのプロセスにかかる時間は約2週間。セルロースフェイスマスクのアイデアの魅力は、材料が容易に手に入り、自宅でもどこでも作成することができるという点だ。

 何年も劣化しない石油プラスチックとは異なり、このセルロースマスクは野菜や果物と同じぐらいの速度で分解する。

 現時点では、まだこの新しいマスクに対するテストは行われていないが、Sum Studioではこのプロジェクトを進めることにより、多くの現代の問題に対する持続可能な解決策を提供でき、バイオデザインの使用についての可能性が注目されることを望んでいる。

 それではここで、コンブチャ・レザーの作り方を紹介しよう。こちらのサイトからPDFでダウンロードできる。

mask_e

image credit:Public Lab

材料


コンブチャ
オーガニックのアップルサイダービネガー200ml
・グラニュー糖200g
・紅茶または緑茶のティーバッグ2袋、 
・水2L

用意するもの

・ゴム製手袋1組
・消毒液が入ったスプレーボトル
ダクトテープ
・容器よりも大きいサイズのヒートマット
・密閉性のある容器
正方形のガーゼ(10cmx10cm)
・革を乾燥させるための木製のボードまな板など)
・計量カップ

ステップ

1.容器の蓋の真ん中に8cm弱ほどの正方形の穴を開ける。その後、穴を開けた部分にガーゼをダクトテープで貼りつける。

2.容器の中を70%アルコールが含まれた消毒液でしっかり消毒し、乾かす。次に、.ヒートマットを容器の下に置く(まだスイッチは入れない)

3.水を鍋で沸騰させ、火を止めて湯の中にティーバッグを15分間入れる。ティーバッグを取り除いたら砂糖を入れて混ぜる。鍋の液体を容器に移す。

4.30度以下の室温で液体を覚ます。サイダービネガーを入れ、次にコンブチャを入れる。
コンブチャの菌株は容器の下に沈んでいく。発酵は48時間~72時間。薄い膜と泡ができてきて、コンブチャも浮き上がってくる。

5.容器の蓋を閉めて、ヒートマットのスイッチをオン。

6.消毒した手袋で、容器の中身を週1ペースで確認。汚染されていないかチェック。4週間も経つと、シートに厚みが増してくる。容器から取り出す。

7.台所用洗剤でシートをよく洗う。

8.木やフェルトメッシュの上で表面を1~2週間かけて乾かす。3Dフォームに変えて柔軟性と耐久性を実験してみる。


 ちなみに、色付けをしたい場合は醤油でも可能だそうだ。


How to Grow Leather-Like Material Using Bacteria (Making Kombucha Leather)

 実際に作ってみて、つけてみないことには息苦しさとかフィット感とかはわからないかと思うので、科学実験好きな人は試してみてはいかがだろうか?

 見た目的にはとても斬新で、シアー感があるし、おしゃれとも言えなくもないが、日焼けして向けた皮っぽくもあるので、これをつけて外出したら必然的に社会的距離は得られるのかもしれない。

written by Scarlet / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52291320.html
 

こちらもオススメ!

―料理・健康・暮らしについての記事―

お菓子を食べる奇妙なクリーチャーが自宅に出現。子供たちは大喜び
コカ・コーラ社とカールスバーグ社、1年で分解される植物由来のプラスチックボトルの開発を支援
美術館が呼びかけた「有名絵画そっくりチャレンジ」に力作が続々
王冠でかっ!ドイツのバーガーキング、社会的な距離実現のため、巨大な王冠はっとを配付中
トイレの排水口を覗くとそこは線路だった。フランスの列車のトイレ構造がわかる動画

―知るの紹介記事―

あの時助けてあげたアヒルのヒナは、大きくなっても男性と固い絆で結ばれていた(アメリカ)
地球外生命体を探し方。太陽系外惑星の反射光に隠された”コード”から居住可能性を判断する方法(米研究)
アニメで見たことあるやつ!ファッション業界の多様性、空気注入型の風船パンツが登場
ペンギンのフンから発生する笑気ガスを吸って研究者がイカれてしまうという事案が発生(サウスジョージア島)
まるでネズミの群れのよう。氷河の上を群れで移動する緑色の「氷河ネズミ」の正体は?(アラスカ)
発想は斬新、つける勇気さえあれば。微生物から作られた生分解性マスクが開発される(アメリカ)