新型コロナウイルスにより、満員電車への恐怖感が社会的に高まることとなった。感染拡大は収まりつつあるが、この意識はしばらく消えることはなさそうだ。

ところで、なぜ人々は満員電車に乗るのだろうか。

ラッシュ時でも満員電車に乗る人々

私は2013年まで阪急電鉄神戸本線(大阪梅田~神戸三宮)の塚口駅アルバイトをしていた。仕事内容は朝・夕ラッシュ時における乗降案内だった。列車によってはお客様を車内へと押す「押し屋」も行った。

塚口駅兵庫県尼崎市に位置し、大阪梅田駅から10.2kmのところにある。同駅からは伊丹線(塚口~伊丹)が分岐し、特急以外の列車(通勤特急、快速急行、急行、通勤急行、準急、普通)が停車する。 筆者が働いた朝ラッシュ時には主に通勤特急、通勤急行、準急、普通が塚口駅に停車した。塚口~大阪梅田間における通勤特急、通勤急行、準急の停車駅は十三駅のみだが、塚口駅上りホーム(大阪梅田方面)で最も混雑したのは通勤特急で、通勤特急以外の列車では利用客を車内へ押すこともなかった。

なぜ、利用客は満員に近い通勤特急にあえて乗るのだろうか。現場から考えられる理由として3点挙げられる。1つ目は多くの伊丹線列車(伊丹発塚口行き)が上り通勤特急に接続することだ。伊丹線塚口駅に到着すると、通勤特急を待つ列が一気に長くなる。

2つ目は通勤特急の1本前を走る普通が園田駅で通勤特急の通過待ちをすることだ。そのため、園田駅で通過待ちする普通の利用客は塚口駅で通勤特急に乗り換える。

3つ目は通勤特急が「速い」ことだ。園田駅で普通を追い抜く分、塚口駅から大阪梅田駅までの所要時間は停車駅が同じ通勤急行や準急よりも3分ほど速い。忙しい朝にとって3分はとても貴重だ。

「速さ」よりも「安全」を重視するならダイヤはどうなる?

阪急塚口駅の例を考察すると、多くの利用客は「速さ」を優先して「満員電車」に乗っていた。しかし「満員電車」への恐怖が高まっている昨今、利用客が「速さ」よりも「安全」を重視するとダイヤはどうなるだろうか。

極論を述べると車内の混雑率を均一化するために、列車本数を増やした上で朝ラッシュ時の全列車を普通に統一する策が考えられる。長距離路線であれば東急田園都市線の準急のように、優等列車を一定区間において各駅に停車させることも一案だ。また、時差通勤の普及により、朝ラッシュ時向けダイヤの時間帯が延びるかもしれない。

新型コロナウイルスにより、通勤事情はどのように変化するのだろうか。もしかすると、今までの常識では考えられなかったダイヤや交通形態が出現するかもしれない。

フリーライター 新田浩之)

(阪急神戸本線(西宮北口~大阪梅田)の路線図)