福井県内を走る第三セクターえちぜん鉄道に一風変わった自動券売機が導入されました。それまで対面でのやり取りを重視し、きっぷは窓口販売のみだったという同社にとって初めての券売機です。導入の理由や経緯を取材しました。

福井のえちぜん鉄道 券売機は1台もなかったが……

福井駅を起点に勝山永平寺線三国芦原線の2路線を有するえちぜん鉄道は、2002(平成14)年に生まれた第三セクター方式の会社です。同社の特徴は、対面でのやりとりを重視していること。そのため駅には券売機が1台も設置されておらず、きっぷは窓口で係員から、または車内のアテンダントから購入します。

このように設立以来、長きにわたり券売機が置かれていなかったえちぜん鉄道ですが、2020年春、福井駅にタッチパネル式の自動券売機が1台設置されました。一般に思い浮かべる券売機と比べるとかなり大きく、オフィスコピー機やスーパーのセルフレジを想起させます。導入に至った経緯や、一風変わった自動券売機が採用された理由を同社営業開発部部長の佐々木大二郎さんに伺いました。

佐々木さんいわく「対面重視の考え方は変わらない」とのこと。ただ、人員確保が難しいなか、年々利用者が増加し、窓口も目に見えて混雑している現状を踏まえ、急いでいる人、自分できっぷが買える人向けに自動券売機を設置したとのことで、増台の予定はいまのところないそうです。

券売機がなぜ「一風変わったジャンボサイズ」なのか? 理由を聞いた

また、券売機がジャンボサイズである理由は、操作画面こそ利用客向けにアレンジされているものの、そのほかは係員が扱う機械やシステムがそのまま使われているためです。

なお、えちぜん鉄道と相互乗り入れを行っている福井鉄道でも、同様の券売機が設置されています。元々、えちぜん鉄道で使用されていた発券システムが、福井鉄道に導入されたのち自動券売機にも採用、そのうえでえちぜん鉄道に“逆輸入”されたそうです。

食堂で見られるボタンが並んだタイプの券売機よりもコストを抑えつつ、「窓口をひとつ増やす感覚」と佐々木さんは説明します。さらに、券売機が窓口の発券システムと同様であるメリットとして「係員が新たに仕組みを覚えなくて済む」「何かトラブルが起きてもすぐに対応できる」ことが挙げられます。

新型コロナウイルス感染症の影響から、この春は券売機の出番が少なかったそうですが、これから本領を発揮してくれることでしょう。

えちぜん鉄道の福井駅に設置された自動券売機(画像:えちぜん鉄道)。