利用者減のダメージはかなり大きいようです。

鉄道やバス、タクシー、福祉輸送など全国の交通事業者や研究者で構成される「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム実行委員会」は2020年5月29日(金)、「続・くらしの足をなくさない!緊急フォーラム新型コロナによる交通崩壊をみんなで乗り越えよう!~」をオンラインで開催、赤羽一嘉国土交通大臣をはじめ、公共交通などの関係者820人が参加しました。

新型コロナウイルスの影響により、公共交通の利用者が大幅に減少する一方、事業者には安定したサービスの提供も求められ、経営を圧迫しているとのこと。4月24日(金)に開催された第1回の緊急フォーラム以降、利用者減がますます進行していることが発表されました。また同時に、高齢者や障がい者らの外出が減少することで、フレイル(心身双方の機能低下)の進行といった社会的な課題も生まれているそうです。

名古屋大学教授の加藤博和さんによると、ある大手私鉄では、影響が比較的緩やかだった3月まで(2019年度)の時点で、グループ全体の営業収益が130億円の減収、4月は旅客収入が前年比で半減するなど、影響はさらに大きくなっており、2020年度の損失は「とてつもない額」になると嘆息を漏らしました。

トラフィックブレイン社長の太田恒平さんによると、5月の輸送人員は新幹線で前年比約9割、大手私鉄約6割、中小民鉄約6割、貸切バス7割以上、乗合バス約6割、タクシー約5割、それぞれ減少しているといいます。減便も行われ、現在は本数も次第に戻ってきている段階ですが、減便の効果が比較的大きいとされる乗合バスですら、営業コストの27%は固定費だそうです。鉄道においては、たとえ3割減便しても、運転費の縮減効果は全体の4%に過ぎないといい、利用の低下がそのまま収益低下に直結しているとしています。

「緊急提言」を国へ提出

3時間の議論ののち、4月に実施された第1回緊急フォーラムで作成された「提言」を踏まえ、それを具体化するために事業者や国、自治体、そして利用者らが「全員で達成すること」として、次のような枠組みが策定されました。

●全体
・「必要な交通があること」「つながりの大切さ」を認識。
・感染状況に応じた対応計画の策定と実施(いわゆるBCP)。
・現状に関する情報共有と共闘。
・対策の迅速な実施。

●現場の安全確保
・感染リスクの医学的評価。
・評価に基づく感染防止策のガイドライン作成(感染状況別)とその事業者への普及、感染防止資材の確保。
・ガイドラインに基づく感染防止策の実施と利用者への啓発。
・感染防止策実施について国民、自治体、マスコミ等への広報・情報発信。

●必要な運行の合意形成
・必要な運行の量、質の基準作成(感染状況別)。
・運行計画、変更手続きの柔軟化。
・減便や小型化によるコスト削減と需要抑制。
・交通モード間の融通。
・マイカー利用の制御。
・日々変わる運行状況に関する情報発信。

●事業継続のための経済的支援
・事業継続のための緊急資金手当て。
・平常時における公的補助制度の拡大適用、弾力化。
・特別措置による運行支援(減収補填)。
・感染防止策等、経費増への支援。
・職員の罹患に対する補償。

これらは、それぞれの立場で行動プランを考えるための「枠組み」であるとのこと。詳細は、「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム」ウェブサイト上にて公開予定だそうです。

緊急事態宣言期間を経て、交通事業者はさらに疲弊。路線バスではドライバーへの感染防止を目的に最前列席の利用を制限する例も(2020年5月、乗りものニュース編集部撮影)。