新型コロナウイルスは、中小の小売・飲食店舗を苦境に追いやっている。ワクチンが存在しない状態で新型ウイルスに打ち勝つには、まず人の移動を規制するしかない。だからこその自粛要請であるが、その間の売上は誰が補償するのか? また、緊急事態宣言前の客足がそのまま戻ってくるとは限らない。閉店を余儀なくされる店舗も相次いでいる。そこで各地方自治体が、キャッシュレス決済サービスと連携した独自の還元キャンペーンを開催するようになった。

 市区町村によっては、30%のポイント還元が行われる
という。

浜松市限定の「30%還元」

 5月、静岡県浜松市はこんな発表を行った。市内の小売・飲食店舗を支援するため、PayPayとの連携規格を7月から催す。その内容は、市内の店舗約6000店でPayPayキャッシュレス決済を行うと、30%分のポイントが付与されるというもの。ポイント還元分の予算は浜松市が捻出する。

 付与上限は1決済2000円相当、月1万円相当までとされている。これを鑑みると、総額5000円以上の買い物にも満額対応できる計算だ。飲食店で利用するとしたら、家族での食事や友人数人を連れた飲み会に丈の合った内容と言える。また、100回に1回の確率で決済金額全額がキャッシュバックされるキャンペーン(付与上限10万円相当)も同時開催する。

 もちろん、この企画は浜松市限定のもの。市内の中小店舗に対する緊急助成というニュアンスが強い。しかし昨今の事情を考慮すると、浜松市に続く自治体が今後現れるのではないか

コロナ前にPayPayと提携した西尾市

 市区町村が主導或いは後援する形で独自のキャッシュレス決済還元企画を打ち出す。この流れ自体は、新型コロナ発生以前からあった。

 去年9月、愛知県西尾市PayPayと連携協定を結んでいる。これは市内飲食店の効率化を目指したもので、全国初の試みだったために当時はかなりの注目を集めていた。

 地方自治体がこのような取り組みを実行するのは、並大抵ではない。なぜなら東京や名古屋に住んでいる人とそうでない人では、キャッシュレス決済サービスの理解度に大きな差があるからだ。

 首都圏生きる限り、Suicaスマートフォンは欠かせないもの。だが、首都圏から外れた地域ではどうだろうか?

 「キャッシュレススマホも必要ない」と考える人がまだまだ多いのが現実だ。行政が公的な政策としてキャッシュレス決済サービスとの連携を実行するなら、未だデジタルバイドの向こう側にいる市民を何とか納得させる必要が出てくる。

 そういう意味で、西尾市は決して低くないハードルを飛び越えたと表現できる。しかし、今ではそのハードルは低くなった。新型コロナの猛威を味わった今、我々は「新しい生活」を余儀なくされている。あるひとつの災難によって新しいテクノロジーが大衆に受容されるというのは、人類史上しばしば発生する出来事だ。

◆オブザーバーとして企画に参加する自治体

 間近に開催予定の企画をここで紹介すると、『がんばれ掛川! PayPayピックアップテイクアウトがおトク!キャンペーン』というのがある。

 開催場所は静岡県掛川市6月8日7月7日まで、掛川市内の対象飲食店舗で事前注文サービスPayPayピックアップと連動した還元キャンペーンが実施される。還元率は10%、付与上限は1000円相当/回、5000円相当/期限。店内喫食ではなくテイクアウトを前提にした内容で、掛川市はオブザーバーとしてこの企画に携わる。

 スマホとその機能に使い慣れていない市民に対する啓蒙という意味でも、「地方自治体×PayPay」のコラボ企画は大きな価値がある。<文/澤田真一>

【澤田真一】
ノンフィクション作家、Webライター1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジーガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログたまには澤田もエンターテイナー