アメリカでも日本同様、政権の“司法介入”が問題視されている。

 5月7日、司法省は元大統領補佐官のマイケル・フリン氏(61)の起訴を取り下げた。氏は2016年大統領選のロシア疑惑における捜査で、FBIに虚偽の供述をした罪などに問われていた。

「17年12月、フリン氏はワシントン連邦地裁で『FBIに対し虚偽の供述をした』と自ら罪を認め、捜査に協力する意向を表明しました。しかし実刑は免れないと感じたフリン氏は方針を転換し、無罪を主張し始めた。すると昨年2月に司法長官に就任して以来トランプ氏の意向をくんできたバー氏が、フリン問題の再検証を指示。FBIへの供述を『正当な根拠がないまま行われた』と判断し、起訴取り下げとなったのです」(現地特派員)

 5月14日2000人以上の司法省、FBIのOBがバー司法長官の辞任をもとめ、公開書簡に署名した。

 司法当局の判断に大喜びしたのはトランプ大統領だ。

「彼は無実だ。私を大統領から引きずり下ろすために狙われた」などと、捜査を改めて批判。“無罪”のフリン氏の「再起用を検討する」とまで述べた。

トランプの顧問弁護士”バー氏の徹底したトランプ擁護

 就任以来、ホワイトハウスの守護神となったバー司法長官は、トランプへと伸びる司直の手をことごとく断ってきた。

「バー氏は、昨年9月に告発されたウクライナ疑惑については一切、捜査しなかった。またロシア疑惑で有罪となったトランプ側近のロジャー・ストーン氏の裁判に介入し、4人の検事が担当を降りるなどし、なんと求刑が軽減された。この時も司法省のOBら1000人以上がバー氏辞任を求める声明を出しています。また昨年9月には、検察が節税や脱税を疑われるトランプ大統領に対し納税申告書の提出を求めたところ、バー氏は提出を拒否するトランプサイドについたのです。メディアからトランプの顧問弁護士と呼ばれる所以です」(同前)

大統領の権力は最大化されるべき」という信条のバー氏が、司法長官をつとめるのはこれで2度目。

「幼い頃から共和党支持者のバー氏は、CIAなどを経て、90年代前半にパパ・ブッシュ政権で司法長官を務めた。ほぼ引退状態にあった18年6月、彼はロシア疑惑の嫌疑がかけられたトランプを徹底擁護。トランプにその功績を認められ、ジェフセッションズ前司法長官の更迭後に抜擢されたのです」(同前)

 フリン氏の起訴見送りについてワシントンの連邦地裁は承認しておらず、現在も混乱が続いている。

(近藤 奈香/週刊文春 2020年6月4日号)

バー氏はトランプのツイートに苦言を呈したことも ©共同通信社