「【シゴトを知ろう】パティシエ 編」では、恵比寿にあるレストラン「セルサルサーレ」で働く芳賀龍さんにパティシエの仕事内容や学生時代に学んだことを教えていただきました。 今回の番外編では、休日の過ごし方や、仕事の中で一番思い出に残っているエピソードなどを伺いました。

下働き時代の経験が今に生きている

―― パティシエになるためには厳しい修行が必要だというイメージがありますが、実際のところはいかがでしたか?
 
「厳しい修行が必要」というのは、確かに感覚的に刷り込まれてきました。
しかし、実際には必ずしも必要というわけではなく、自分にとって必要だと思ったら、そういった環境を選べばよいと思います。若いうちならいくらでもやり直すことができるので、勇気を持って現場に飛び込むことも、時には必要な気がします。
ちなみに、僕にとっては厳しい修行は必要でした。パティスリーで1日中洗い物をしたり、掃除をしたり、まさに人々がイメージする「下働き」を経験してきました。逃げ出したいと思ったときもありましたが、諦めずに下積みを続けたのは、今となってはとても大切な糧となっていますし、自信にもつながっています。

―― 休日はどのように過ごされていますか?また、休日の過ごし方でお仕事につながることはありますか?

休日には、よくサーフィンをしに海へ出かけます。心身ともに、とてもリフレッシュできるんです。
他には、映画を観たり、美術館へ行ったり、アートに触れ合うことも好きです。基本的に全ての経験・体験が仕事につながると思っているので、自分が好きだな、きれいだなと感じるものをたくさん見たり、聞いたりすることが大切だと思います。
もちろん他のお店のお菓子やデザートを食べに出かけることもありますが、それ以外の経験の方が、パティシエの仕事にいつか必ず生きてくると思っています。

チームプレイに惹かれて、レストランで働くことを決意

―― パティシエの職場にはパティスリー、ホテル・ブライダル、レストランなどさまざまな場所がありますが、それぞれどんな違いがありますか?また、その中でレストランを選んだ理由を教えてください。

下積みのころはパティスリーで働いていました。当時の経験からいうと、黙々と集中して、一個のきれいなケーキを作り上げるのがパティスリーの仕事の特徴だと思います。ホテル・ブライダルは勤めたことはありませんが、宿泊客や、ブライダル・パーティーなど多くの方がそれぞれ目的を持って集まる場所では、料理やお菓子が主役というわけではなく、あくまで同じ空間の中の一つの部門としてお客様に提供する場所があるというイメージですね。
私が今働いているレストランは、食事を楽しみに来てくださる方のための場所。「最高においしいものをサービスして、みんなに楽しんでもらおう!」という、レストランが一丸となって作り上げるチームプレイに惹かれて、働くことにしました。お客様の目の前で繰り広げるライブ感が好きですね。


―― これからの芳賀さんの夢をお聞かせください。

今は、お店の中で最高のサービスを探求しているところですが、いつか独立して、人が集まり、何かが生まれるような場を作りたいと思っています。たとえば、流れる音楽・手に取る本・過ごす時間が、来る人に影響を与えるような環境。そこでおいしいお菓子やデザートを楽しめるような空間を生み出したいと思っています。

自分が作ったデザートがシェフに認めてもらえるとうれしい

―― 最後に、お仕事の中で、一番の思い出や達成感を感じたエピソードについて教えてください。

自分自身が納得できるデザートが作れたとき、シェフにも「おいしい」「見た目もきれい」と思ってもらえたときは、いつもうれしいですね。シェフに認められたものであれば、絶対にお客さんにも感動してもらえるので。また、シェフから伝えられた「こういう感じ」という抽象的なイメージを自分なりに捉え、細かい部分までクオリティ高く表現することができたときにも達成感を感じます。日々、探求・挑戦を続け、レストラン全体を盛り上げていくための一役になれればと思っています。
 
 
レストランというチームプレイの場で働く、芳賀さんならではのお話が伺えましたね。
パティシエには、製菓や調理の技術はもちろんですが、イメージを具現化する力や、美的なセンスも必要です。芳賀さんが休日にされているように、自分の好きな映画や美術に触れて感性を磨くことも、パティシエの仕事には大切なようです。この仕事を目指す人は、そうした意味でも視野を広く持ってみると今後にもつながるのではないでしょうか。
 
 
profile】セルサルサーレ 芳賀龍
http://selsalsale.com/index.html