持続化給付金事業を実体のない“幽霊法人”が受注していた問題で、この法人が設立からこれまで、経済産業省の最高幹部が在籍している部署から累計1300億円を超える発注を受けていたことが、「週刊文春」の取材でわかった。

 今回、769億円で持続化給付金事業を受注した「一般社団法人サービスデザイン推進協議会(以下、サービス協議会)」は2016年に設立された。サービス協議会を実質的に運営していたのは、電通社員(当時)のA氏で、名目上のトップだった代表理事(当時)は「経産省の方から立ち上げの直前に代表理事を受けてもらえないかという話があって、それで受けた」と証言するなど、経産省が設立に関与していた。この時、経産省は肝いりで始めた「おもてなし規格認証」事業の公募を開始。不可解なことにサービス協議会が設立されたのは、公募開始日と同じ日だった。

 2カ月後の2016年7月、従業員4人のサービス協議会は4680万円で、この事業を落札。さらに、2017年度にはサービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金を約100億円で、サービス等生産性向上IT導入支援事業費を約500億円で落札。これらの三事業はいずれも、経産省の商務情報政策局が所管しており、当時、同局を担当する大臣官房審議官を務めていたのが前田泰宏氏だった。

 現在前田氏は経産省中小企業庁の長官を務めているが、今回の持続化給付金を所管するのは中小企業庁だ。サービス協議会は、持続化給付金事業(769億円)を含めて、設立以来4年で1576億円を経産省から受注しているが、そのうち少なくとも1300億円以上、率にして8割以上が、前田氏が幹部を務める部署からの受注だった。

「前田氏は、東大法学部卒で、持続化給付金の仕組みを作った人物。若い頃はベンチャー企業の人と合コンを開くなど、幅広い人脈を誇る」(永田町関係者)

 この前田氏の広い人脈の中にいたのが、A氏だった。電通関係者によれば、A氏は、「電通では町おこしに寄与する企画を担当していた。官公庁にも関係するので、よく足を運んでいましたね。A氏は前田氏とも一緒に食事に行くなどして、食い込んでいくスタイルでした」

 入札制度に詳しい同志社大学政策学部の真山達志教授が指摘する。

「今回の経産省と電通をめぐる問題は国民の疑念を招くのに十分すぎる内容です。そもそも電通などへの委託には不透明なところがあり、さらに役所と事業者の間に個人的関係まであるならば、さらなる疑念を持たれるのは当然です。民間同士の取引ならまだしも、血税を扱う政府・中央官庁には透明な公平性が求められる。今回のケースはその基準から大きく逸脱しているといえるでしょう」

当事者に話を聞くと……

 前田・中小企業庁長官は、「週刊文春」の取材に対し、手続きは適正に行っていると説明した上で、A氏とは「面識はあります」と回答した。さらに経産省は「(前田)本人に確認したところ、割り勘で飲食をともにしたことはあるが、接待を受けた事実はないとのことでした」と答えた。

 一方のA氏も、サービス協議会を通じて「(前田長官と)面識はございます。しかしながら、二人だけで飲食を共にしたことは過去一度もございません」と回答した。

 二人の個人的な関係が事業発注に与えた影響について経産省に尋ねると、「外部審査委員 会における公平な審査によって選定されたものであり、そのような事実はございません」と回答した。

 多額の公金をかけた事業を発注する経産省最高幹部と、受注する業者の近しい関係が明らかになった ことで、“幽霊法人”に対する契約が適正に行われていたのか、改めて説明が求められること になりそうだ。

 6月4日(木)発売の「週刊文春」では、前田長官はいかなる人物なのか、持続化給付金の現場 で起きているトラブル、電通が受注するとされている別の1兆7千億円事業など、安倍政権の160兆円予算の実態を詳報する。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年6月11日号)

無人のサービス協議会事務所