気象情報会社のウェザーニューズ2020年5月28日、気象データビジネスの将来予測に利用するための新サービス「WxTech(ウェザーテック)サービス」を始めた。

JBpressですべての写真や図表を見る

 WxTechサービスでは、ウェザーニューズが保有するさまざまな気象データと、企業が保有するビジネスデータとの相関を分析し、売り上げや来客数に大きな影響をおよぼす気象データの種類(気象要素)を特定する。企業はその気象データの予報を用いて売り上げや来客数を予測し、商品棚の陳列内容、従業員やアルバイトの勤務シフト最適化などに役立てる。さらに、予測と結果を検証し、相関関係の分析モデルに反映させ、精度を継続的に高めていく(図1)。

ビジネスにとって有用なデータの活用は広がっているが、そうしたデータのほとんどは過去の状況を示したもの」。同社石橋知博執行役員(写真)はこう話し、気象データビジネスに取り入れる意義を次のように説明する。「気象予報は、未来の状況を高い精度で、かつ連続的に示すことができる数少ないデータだ。ビジネスデータと気象データとの相関を把握できれば、気象予報に基づいて、将来的にビジネスがどのように推移するかを予測し、その予測に対して最適なアクションをとることができる」。

ビジネスデータに相関の強い気象データを特定する無料サービスも

 WxTechサービスの最大の特徴は、気象データの活用に手軽に着手できることだ。ウェザーニューズは、企業や店舗、自治体がそれぞれのビジネスサービスごとに、特に大きなインパクトがある気象要素を特定する無料のサービスサイト(https://wxtech.weathernews.com/)を公開した。

 企業や店舗はまず、日別の売上高や来客数などを記録したデータ(CSV形式のファイル)を用意する。続いて、気象要素との相関関係を分析する地域を地図上で指定。最後に、用意したファイルをサイトにアップロードすると、さまざまな気象要素のなかからビジネスへの影響が大きなものが自動的に導き出される。

 無料のサービスだが、1km四方のメッシュでエリアを区切った高精細な気象の過去データを使える。最高気温、最低気温、平均気温はもちろんのこと、日中(午前9時から午後6時)の最高気温/最低気温、朝(午前0時から午前9時)の最低気温、当日寒暖差、1時間最大降水量、最大湿度、平均風速など、20種類ほどの気象要素と、ビジネスデータとの相関関係を分析できる。分析の結果、相関係数が大きい上位5位までの気象要素が示される。

 分析した結果から、思わぬ気づきが得られる可能性もある。ウェザーニューズ千葉市の公開データを使って、熱中症と相関の強い気象データを調べた例を挙げよう。2019年8月の熱中症の救急搬送数と最も強い相関関係があったのは「日照時間」で相関係数は0.72だった(図2)。「日照時間」に次いで大きかったのは、「日中の最低気温」(相関係数0.69)だった(図3)。

 熱中症は、最高気温が高い日に多く発生するようなイメージがあるかもしれないが、実際は日照時間や日中の最低気温と強い相関があるようだ。日差しを和らげる雲が少なく日中の最低気温が十分に下がらない日こそ注意が必要だと分かる。この結果を考慮すると、自治体は日照時間や日中の最低気温の予報データを重視して、熱中症への警戒呼び掛けを行えばいいことになる。

企業はAPIを利用してデータを取得

 ウェザーニューズはWxTechサービスの提供に合わせて、ユーザー企業が利用するための「気象データAPI」を整備した。企業は気象データAPIを使ってウェザーニューズの気象データリアルタイムで自社システムに取り込める。

 気象データAPIを使うと、過去のデータだけでなく、1kmメッシュの天気予報250メートルメッシュの高度別天気予報といった予報データも利用できる。また、花粉指数や紫外線指数といった各種指数とビジネスデータとの相関関係など、より踏み込んだ分析が可能になる。

 気象データAPIを利用する場合は、データの種類ごとに定めた単価と月間の利用量に基づく従量課金だ。「気象データを活用できる機会を中小規模の事業者やスタートアップ企業にも広げたいので、利用金額は低くおさえた」(石橋執行役員)。例えば、1kmメッシュの天気予報データの単価は0.3円。1日に3回データを取得すると、取得回数は1カ月で合計約90回となり、利用料金は27円ほどになる計算だ。このほかに利用料金の請求業務など事務処理コストが発生するため、最低利用料金が設定されるか、月額基本料がかかるが、その金額は数万円程度からになるとみられる。

 天気や気温が人の行動や意思決定を左右し、商品の売れ行きや業務の繁閑に大きな影響をおよぼすことから、ビジネス分野における気象データへの注目度は近年急速に高まっている。ウェザーニューズに寄せられる問い合わせも増えていて、「以前は1カ月あたり数件程度だったが、この3カ月ほどは1カ月あたり20件程度に増えている」と石橋執行役員は話す。

 こうした需要をとらえウェザーニューズは今後1年間で、WxTechサービスを有料で利用する企業500社の獲得を目指すという。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  気象センサーでゲリラ豪雨や雷をピンポイント予測

[関連記事]

新型コロナの影響で人出に変化、位置情報から判明

気象と自動車のデータを組み合わせ道路冠水を検知

1kmメッシュに区切った東京都周辺の天気予報の画面例(ウェザーニューズ提供)