日韓関係が再び破局に向かって走り出した。韓国の裁判所が、日本企業に対する徴用工賠償訴訟に関連し、日本製鉄の韓国内資産の売却のための手続きを再開したのだ。

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日本企業の資産を現金化へ

 韓国メディアによると、6月1日大邱地裁浦項支部は、日本製鉄韓国人強制徴用被害者賠償のための資産差し押さえ書類などを公示送達を決めた。公示送達とは、相手に書類が届かなかった際、裁判所の職権で一定期間が過ぎれば、相手側に書類が渡されたものと見なし、訴訟を再開させる方法だ。

 韓国最高裁2018年、イ・チュンシクさん(96)ら元徴用工6人が新日鉄住金(現・日本製鉄)を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、原告勝訴の判決を下した。日本製鉄に対し、原告側に一人あたり1億ウォン(約760万円)の賠償を命じる判決だった。

 その後、原告側は、日本製鉄が賠償に応じないとし、財産を差し押さえて現金化してほしいという申請を大邱地裁浦項支部に提出した。これを受け、韓国裁判所は2019年の1月に日本製鉄が韓国大手のPOSCO(ポスコ)と共同設立した合弁会社の(株)PNRの株式19万4794株などを差し押さえ、関連書類を日本に送達した。

 しかし、送達された書類は、日本外務省によって5カ月後に韓国へ返送され、韓国では日本で遅延戦術を使っているという批判が起こった。差し押さえ決定文が企業に渡されてからこそ資産売却の手続きを進められるゆえに、日本外務省が書類伝達を妨害しているという指摘だった。

 ところが、約1年後の今年6月1日、韓国裁判所が突然「公示送達」という方法を通じて日本企業の財産売却のための動きを開始した。韓国メディアによると、日本製鉄に対する公示送達期限は8月4日午前0時で、この期限が過ぎれば差し押さえられた日本製鉄の韓国内資産について現金化の命令を下すことができるようになる。

 韓国メディアは、今回の公示送達措置を皮切りに、韓国の裁判所に差し押さえられている三菱重工や不二越の韓国内の資産に対しても、同様の売却手続きが行われることになり、日本の強い反発が予想されるとの見通しを示している。

日本の輸出規制についても再びWTOに提訴へ

 一方、ほぼ同じ時期に韓国政府は、日本の輸出規制強化措置をWTO世界貿易機関)に再訴すると明らかにした。

 韓国産業通商資源部は6月2日、韓国に対する3大品目の輸出規制とホワイト国(輸出手続きの優待国)リストからの削除決定に対し、5月末までに立場を表明するよう求めたが、日本側が何の反応も示さないとして、WTOへの提訴手続きを再開すると宣言した。さらに韓国外交部は同日、韓国メディアに対するブリーフィングで、日本の反応次第で日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)終了も検討できるという立場を示した。

尹美香騒動のさなかにクローズアップされ出した日韓間の懸案

 興味深いのは、これまで止まっていた日韓間の懸案が、偶然にも尹美香(ユン・ミヒャン)騒動のさなかに再び動き始めたことだ。これについて、経済専門誌の「ソウル経済新聞」は次のように報じている。

「産業部は先月(5月)12日、日本の輸出規制強化の諸事由がすべて解消されたとし、『5月末まで具体的な立場を明らかにしなさい』と日本側に要求した。当時は、慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんの暴露後、尹美香議員に対する疑惑が次々と出てきたときだ。尹美香議員は、よりによって同日、自身のフェイスブックに『親日勢力の不当な攻撃の強度が強まるほど、私尹美香の平和・人権に向けた決意も山ほど高まるだろう』というコメントアップし、“親日カード”を切り出した」

「産業部が日本に最後通牒に対する答弁を要求した5月末は、あいにくにも、尹美香議員が国会議員バッジをつけた時だ。検察の捜査など今月に入っても尹美香議員をめぐる論争の余地が依然として残っているだけに、産業部が準備した“WTO提訴手続き再開”カードは、時ならぬ“親日・反日”攻防に反転として作用する可能性もあるという診断が出ている」

「(WTO提訴には)最終結論まで少なくとも3~4年はかかる上、政府側が対話再開の可能性を残しているだけに実益は大きくないという見方が支配的だ。ただ、国内政治的には“親日・反日”フレームが敏感に働くだけに、尹美香議員論議など内部世論に及ぼす影響は相当なものかもしれないという見方が出ている」
ソウル経済新聞電子版・6月3日付の記事『文政権の対日逆攻は尹美香論争を静めるか』より)

 韓国では、今回の尹美香事件によって文在寅ムン・ジェイン大統領の支持率が2週連続下落したという報道が出ている。だが、偶然にもダブってしまった強力な「反日」ワンツーパンチによって、文在寅大統領や政権に対する韓国国民の支持率は再び反騰するものと見られている。

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