緊急事態宣言5月25日に全面解除され、徐々に日常を取り戻しています。大手コンビニチェーンファミリーマートでは6月1日から、787店舗が時短営業を開始。いわゆるアフターコロナの在り方を見据えた動きも具体化されています。

 ファミリーマートは3~4月の新型コロナウイルスによる外出自粛の影響を受けている中でも、加盟店支援として売上減少割合に応じた見舞金を各店舗に支給したり、休校支援としてフードバンクへ焼き菓子4万個の寄贈を行ったりしていました。また、実施しているコロナウイルス対策関連情報も特設ページでまとめられています。

 さて、そんなファミリーマートの経営実績はどのようになっているのでしょうか。本連載ではTwitterアカウントアラートさん」(@blackc_alert)が、身近な企業を題材にして、企業の状況の調べ方・見極め方を解説しています。

業績推移:4年間で減収・増益

ファミリーマート
図1:ファミリーマートの業績ハイライト(業績・財務情報より引用)
 では、売上・営業利益の推移を確認していきましょう。今回は「業績ハイライト」ページから確認しました。グラフをもとに、2017年2月期~2020年2月期の4年間の推移をまとめると、

営業利益:事業利益は一貫して増益(赤字転落は特になし)
売上:4年間連続して減収(2017年2020年で、8,438.15億円→5,170.60億円。4年間で38.7%減)

 となり、ファミリーマートの場合は「減収・増益」と判断できます。減収=売上額が下がっているということなので、その状況下で利益額が増えたということは、コスト削減を実施したということを示しています。大まかに「売上-コスト=利益」と考えておくと理解しやすいです。

主にコスト削減で利益を生み出した

 では、具体的にどのようなコスト減を行ったかについては「株式会社ファミリーマート 2019年度決算・2020年度経営計画」を確認しましょう。

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<増益要因>…249億円
コスト削減…125億円
 内訳:本部生産性向上及び効率化…60億円
    店舗効率化…17億円
    統合関連費用減…48億円
収益力向上…75億円
減損・閉鎖損の減少等…49億円

<減益要因>…▲115億円
加盟店支援・店舗設備投資…▲50億円
★特殊要因…▲65億円
 内訳:早期退職制度…▲108億円
    合併税効果…93億円
    子会社「カネ美食品」株式評価損等…▲50億円
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 となっており、主にコスト削減で利益を生み出したことが明らかになりました。

日商と客数も前年比で減少

 コスト削減の対応としては「新端末発注・システム改善、スマホ決済を全店舗に適用」「セルフレジ対応店舗拡大」などが挙げられています。ファミリーマートのセルフレジは筆者も実際に使ったことがありますが、待たされず、自分のペースで淡々と会計できるので、キャッシュレス会計手段を持っている人にとっては便利だと感じました。

 なお、上記の決算は「2020年2月まで」の値なので、緊急事態宣言に伴う外出自粛の影響は一部しか織り込まれていません。そのため、改めて「月次報告」も確認していきましょう。

2020年3月】
日商:前年比伸び率▲7.6%(前年比92.4%)
客数:前年比伸び率▲10.1%(前年比89.9%)

2020年4月】
日商:前年比伸び率▲14.8%(前年比85.2%)
客数:前年比伸び率▲22.2%(前年比77.8%)

 いずれも「前年比伸び率」なので、前年比に変換したものも併記しています。

セブン、ローソンよりも落ち込みが大きい

 参考として、セブンイレブンローソンの2大競合の同時期のデータも比較します。

2020年3月】
セブンイレブン:売上96.8% 客数92.9%(いずれも前年同月比)
ローソン:売上 94.2% 客数 92.0%(既存店・前年同月比)

2020年4月】
セブンイレブン:売上85.3% 客数95.0%(いずれも前年同月比)
ローソン:売上 87.4% 客数 79.9%(既存店・前年同月比)

 飲食店などの場合は客数3~6割減という実績と比べると客数の落ち込みは抑えられていますが、食品・日用品を主に扱うコンビニエンスストアであっても客数減は避けられなかったことが明らかになりました。また、3大コンビニエンスチェーンの中ではファミリーマートが3~4月ともに前年同月比で最も落ち込み方が大きく、苦戦していたことが伺えます。

伊藤忠、ドン・キホーテとの関係

 続いて、さきほどの利益の内訳内で出てきた「カネ美(かねみ)」および、ファミリーマートの企業的な立ち位置についての解説に進みます。

 カネ美は「カネ美食品」のことを指し、惣菜・弁当の製造とスーパー内等での販売を手掛ける愛知県の企業です。元はユニーファミリーマートHD社の子会社でしたが、2019年4月12日に保有株式の一部がパン・パシフィック・インターナショナルHD(PPIH。ドン・キホーテの運営元)に譲渡されています。

 ユニーファミリーマートHDは2017年11月2019年1月と2回に分けてユニーの全株式を現在のPPIHに譲渡し、2019年4月にはカネ美食品の一部株式もPPIHに譲渡します。「株式会社ファミリーマート 2019年度決算・2020年度経営計画」には2020年度の重点施策として「PPIHとの協業」が掲げられており、商品開発・海外展開での提携を中心として今後も提携関係は継続していく見込みです。

 また、ファミリーマート社は2018年8月に伊藤忠商事子会社化しています。直近の意思決定に伊藤忠商事も一定程度関わっていると言えそうです。

フランチャイズオーナーとの関係性について

コンビニ サラリーマン
イメージです(以下同じ)
 コンビニエンスストアと言えば、フランチャイズオーナーとの関係性も重要です。冒頭で示した時短営業を容認する施策も、オーナーとの関係性改善に関わるものです。

 ファミリーマートがどのような施策を行っていたかについて簡単に確認します。ファミリーマート2016年に競合・サークルKサンクスを傘下に入れたのち、それ以降は店舗数を減少させ、新規出店を抑制していました。そして、2020年3月からは「店舗再生本部」を新設し、低収益店舗を直営化し、収益改善したのちに再度フランチャイズ化する動きを進めています。

 しかし、フランチャイズチェーン(FC)加盟店の男性従業員(当時62歳)が2012年に勤務中に事故死した事件について、2016年12月に遺族との和解が報じられました(和解金は当該フランチャイズオーナーファミマが分担して支払い)。フランチャイズ店舗での劣悪な環境が全くなかったかというと否定しきれない面があります。

 そして、フランチャイズオーナーを労働者と認定するかについては、各労働委員会でも判断が割れている面があり(2015年東京都労働委員会は「労働者性がある」と認定したものの 、2019年に中央労働委員会は「労働者には当たらない」と認定)、断定は難しい状況です。今後もより良い在り方を探る必要があるでしょう。

口コミサイトからみえる現場の声

ファミリーマート
ファミリーマートの口コミトップopenworkより引用)
 さて、働く側としてはどうでしょうか。実際に働いた時の所感を把握するために、口コミサイトを確認していきましょう。各種口コミサイトは転職支援事業をビジネスにしており、各企業がクライアントにもなっている関係上、著しい悪評は公開されないようになっています。その制約を踏まえて、現場の声を確認していきます。

良い点:
・給与水準が高い(平均年収619万円、「有価証券報告書」より。業界平均は371万円)
・社内ポイントを貯めることで希望部署への異動を申請しやすくなる(キャリアポイント制度)
・店舗数規模が大きいので「世の中への影響力」を感じやすい

気になる点:
・希望退職制度実施による士気低下が見受けられる
・休日にも連絡が来ることがある
・業界的に純粋な拡大が期待しにくい

 大手ゆえに基本的な条件はいい印象がある一方、2020年2月に1000人を超える規模の希望退職(40歳以上の社員が対象) を募ったり、売上の伸びが頭打ちになっていることから組織内の課題が多く噴出している印象を受けました。残っている従業員が自分の生活そのものについて不安に思っているため、ちょっとしたトラブルが大きな揉め事に発展することも多く、入社には相応の覚悟が必要です。

 ただし、まれに「混沌とした現場の立て直しが好きで得意」という特性の人がいるので、そういう人にとってはやりがいがある現場であると考えられます。しかし、多くの人には勧めにくい現場でしょう。

ファミリーマート「ホワイト/ブラック度」判定

ファミリーマート★★★☆☆

 新型コロナウイルス流行に伴う外出自粛による客数減を乗り切った1企業です。休校支援目的で商品の無償提供を行うなど、プラスの対応も行っている点も評価できます。

 また、コンビニフランチャイズ店舗と本部の関係性が取り沙汰されやすい傾向にありますが、時短営業を公式に認めるなど、店舗拡大に限界がある現状を踏まえた対応を着実に進めている点が印象的でした。今後のセルフレジ対応拡大など、効率改善の取り組みにおいて注目すべき点も多いでしょう。

 しかし、店舗減に伴う余剰人員を整理する目的で希望退職を募ったことが現場への悪影響を及ぼしている可能性があるのが非常に気になりました。余剰人員を整理することが必要な局面はもちろんありますが、残ったメンバーへの悪影響は必ず出るタイプの施策なので、残ったメンバーへのケアが必須であると言えます。

 また、この局面ではプラスのモチベーションをもって働ける人は非常に限られているため、率直に言っておすすめしにくいです。これらのマイナス要素を踏まえて、最終的に★3としました。

<取材・文/アラートさん>

【アラートさん】

ブラック企業を生き抜いた歴戦のプロダクトマネージャーが、公開情報からホワイトorブラックを判定し、率直な理由とともにお伝えします。twitter:@blackc_alert、note:ブラック企業アラート

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