東京都足立区の荒川河川敷で6月3日、野生のシカ(体長約1.5m)が捕獲された。付近では5月末から目撃情報が寄せられていた。

区は地域住民の安全のため、シカの捕獲許可を申請し、都がそれを認めた。シカが河川敷から市街地に出れば、道路で車や人にぶつかるおそれがあったからだ。「シカは大きいし、動きが早いし、飛び跳ねるんです」(区の危機管理部)

捕獲されたシカは、区の施設で一時保護されている。愛らしいシカの様子が各メディアで報じられたこともあってか、「引き取りたい」との問い合わせも届いているが、区職員の表情は浮かない。

「一般のかたに渡してはいけないと都から指導を受けていて、お断りしています。引き取り手募集などの記事が出ていましたが、取材先に意図がうまく伝わらなかったかもしれません」

●捕獲されたシカはどうなるのか

今後は「殺処分の可能性も否定できません」とのこと。一般人がペットとしてシカを飼うことはできないのだろうか。

東京都の自然環境部によれば、野生鳥獣のシカは生態系被害や農作物に被害を起こす「害獣」として扱われている。

「鳥獣保護管理法や、環境省の基本指針によって、愛玩を目的とした野生生物の捕獲は認められていません。今回のシカについても、一般人によるペットとしての飼育は認められません」

「野生のシカは適切な生息数に調整しています。かわいいので、助けてあげたいというかたの気持ちもわかりますが…。殺処分という結末になってもご理解いただければと思います」

●区も苦慮

区では捕獲と並行して、動物園で引き取ってもらったり、山に放したりすることも考えていた。

しかし、どちらも実現しなかった。山林を持ついくつかの自治体に打診したが、「駆除対象なので山に放されるわけにはいかない」と断られたという。

動物園で引き取れないのは「野生のシカは檻に入れられると、檻に激突して自傷行為をすることも。また、病気を持っていた場合、飼育動物に感染するリスクもある」などの理由からだ。

足立区では、2019年秋に現れた野生のイノシシも捕獲され、殺処分となった。

捕獲された「荒川のシカ」に殺処分の危機 東京都「ペットとしては飼えない」