ボンバヘッ!でお馴染みのヒット曲『Bomb A Head!』のほか、DA PUMPの育ての親としても知られるm.c.A・T。日本屈指のプロデューサーの自伝的連載がスタートだぜっ!


自分の問題が前向きになったときに世界の問題にも目を向けてみてほしい

 みなさん、お元気ですか。5月後半から緊急事態宣言解除となりまして、全国で経済復興のターンだっ!となっておりますが、あんなに全国民ががんばって自粛してやっとこさの宣言解除にも関わらず、すでに第2波が来ている地域もあります。努力が台無しにならないように、冷静に、慎重に、アフターコロナウィズコロナ期を乗り越えていきたいものです。

<夏フェスで受けた人種差別~SNAIL RAMP・タケムラアキラ~

 新型コロナウイルスは、中国の武漢で大きく拡がり、全世界で猛威を奮い、人間の健康はもとより、経済行動にも未曾有の大ダメージを与えてしまいました。18世紀の産業革命以来、工場が何ヶ月ものあいだ世界的にストップ(特に中国・アメリカなど)したことはかつてなかったのではないでしょうか。常にCO2PM2.5などの汚いものが排出され続けていましたから、地球も200年以上、大ダメージを受け続けてきました。この何ヶ月で温室効果ガスの排出量が一時的ではありましょうが激減しているそうです。当然空気もきれいになりますよ。ちなみに、北極のオゾン層のでっかい穴が閉じる勢いだそうです(今回のコロナ禍との関係はないようですが)。若い頃、スプレーで髪を立ててたヘビメタ君たち(第6回参照)もひと安心(笑)。

 普通に暮らしていて、自分の、家族の、今の、老後の、そんなことを計算しながら真面目に働いてきた人々のなかには、青天の霹靂!なんて言葉では済まないような経済的大ダメージを受けている方もたくさんいることでしょう(前回も書きましたが音楽業界も大変!)。どうやって今後のローンを払っていけばいいのか! 子供の未来は? 国は何してくれるってんだ! 俺が何したって言うんだ! まだまだあるでしょう。そんなときに「でもね、別の見方をすればこの新型コロナのおかげで地球はキレイになったんですよ〜、考えてみてください」とかなかなか言いにくいです。自分は。わかっていても家族の心配が一番に決まってるよ、絶対。おまけに仕事も行けずに自宅待機が1ヶ月以上。家族が全員で顔合わすのが1日に晩御飯ぐらいだった家庭が、朝から晩まで一緒。一緒はいいんだけれど、マイホームを買う夢のために家族4人で狭い小さなアパートでがんばってた人たちもいることでしょう。大好きな家族でもイライラしちゃう状況を本当によくがんばったと思います。

 世界中の人たちもやはりこの状況にイライラを募らせているわけなのですが、イライラのはけ口、と言うかいつも脳裏に隠されていたことに沿って行動しちゃって、アメリカ国中のみならず世界的な反対運動・デモ運動からの暴動にもなっている、白人による黒人への人種差別問題。アメリカという国の作られ方による問題、つまり、いまだ白人の脳内に消えることなくある優位性(もちろん作られたものだが)が起こしたものでしょう。今や黒人は各方面で活躍しており、特に自分は音楽のブラックカルチャーに大きく影響されたひとり。アメリカの黒人ミュージシャンに憧れ、たくさん感動し、彼らが使うスタジオでレコーディングし、仲良くなり、少しでも近づけたのかな、なんて思っていた若き日があった。だが、アメリカで話を聞いていると、実際アメリカのなかには今も根強く消えない奴隷制の卑しき悲しき精神性がある。それは日本人が心底理解するのは難しいと思った。経験したことのない人間間の優位性・劣位性(で正しいかなぁ)なんていう問題を「うんわかる、わかる」なんて簡単に言えないよ。たとえイメージ的にはわかっても、実際はもっと想像以上にすごいものだよ。今回の問題を暴動・暴力・強奪などの行為に変えてしまっている、黒人じゃない輩もいるそうだし、とても悲しいことです。

 黒人のための言葉「Black Lives Matter」(黒人の命も大切)。白人は「All Lives Matter」(すべての命が大切)と言いますが、精神的に「優位に」思っている立場の人が言うことじゃないと思います。今日(6月5日)現在、まだ抗議運動は拡大しています。収束のために強制的な方法が使われないことを祈ります。新型コロナ禍で奇しくも表面化した問題について考えましたが、みなさんはどうお考えになられますか。できる範囲でいいんです、本当に。ちょっとだけ、今の自分の問題が前向きになったときにでも、世界ではこんな問題があるんだなと思ってみてください。

 でも自分が大変なときには最大に自分を(家族を)守らないとね。東日本大震災のときにね、ミュージシャン仲間の何人かが、自分の仕事がほぼキャンセルになっていて生活が苦しいのに、いいやつなんで「チャリティーなんだけど頼むよ」と言われたら断らずにやっていた。すごい借金しちゃって。大変なときはまず自分を守らないと共倒れですからね! 自分が守れてからでいいと俺は思います。

 そうそう、ちょっと前までやや混とんとしていた、国や自治体のいろんな給付金の申請のやり方、もらえる金額などがかなり詳しく国や自治体のホームページなどに出ていますよ。税金払っているんですからもらえるものはしっかりもらわないと!

 2週にわたって特別編になりましたが、次回から本編に戻ろうと思います。楽しんでいただければいいな。お互いにがんばりましょう! できる範囲で!

m.c.A・T

1993年に『BOMB A HEAD!』でデビュー。ライブ活動と並行してプロデューサーとしても活躍し、DA PUMPのプロデュースを手がけて一世を風靡する。現在もさまざまアーティストへの楽曲提供/プロデュースワークを行う傍ら、ライブ活動を展開している。

m.c.A・T『なんて言うんですか、こんな音楽感』第11回~人種差別問題