今日、6月5日は「世界環境デー」です。1972年6月5日からスウェーデンのストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念し、国連によって制定されました。これを受けて日本も6月5日を「環境の日」とし、国民の環境保全に対する関心を高める日としています。環境保全の取り組みとして個人でできることといえばリサイクル。ペットボトルやアルミ缶など、資源ゴミの分別などはみなさんも日ごろから取り組まれていると思います。そんなリサイクルについて調べていたら「入れ歯リサイクルできる」という事例があったので紹介したいと思います。

イメージ画像

イメージ画像


古い入れ歯が新しい入れ歯になるわけじゃない

入れ歯リサイクルできる」と聞き、誰かの入れ歯を使いまわすの?と瞬間的に想像してしまった筆者。もちろん、冷静に考えればそんなことあるはずがありません。人それぞれ口の形状は異なりますし、精神衛生上もよろしくないですからね。
では入れ歯リサイクルとはどういうことなのでしょうか。
入れ歯には、部分入れ歯を残った歯に引っ掛けるための“クラスプ”という留め金が付いています。そのクラスプには針金のような細いコバルトクロムや、太い金銀パラジウム合金、ニッケルクロムなどの貴重な貴金属が使われています。この金属のみを入れ歯から回収し、精製することで資源のリサイクルができるということなのです(貴金属を使用しないクラスプは対象外のようです)。
そんな不要入れ歯リサイクルを呼び掛けているのが「NPO法人 日本入れ歯リサイクル協会(以下、入れ歯リサイクル協会)」という団体。不要になった入れ歯を回収し、貴金属を精製して得た収益を日本ユニセフ協会などに寄付しています。

イメージ画像

イメージ画像


不要な入れ歯が誰かの命を救っている

では、回収した一つの入れ歯から得られる収益で、一体どれほどのことができるのでしょうか。入れ歯リサイクル協会があくまで参考のために試算した平均金額から算出した例は以下の通りです。
・寒さから身を守るための毛布=約7枚分
・10リットルの貯水容器=約9個分
HIV簡易検査セット=約29セット分
・マラリアから身を守るための殺虫剤処理済の蚊帳=約4張分
・予防接種のための使い捨て注射器=約350本分
・勉強するためのノートと鉛筆=約46人分
注)輸送や配布のための費用は含まれていません
これらは日本ユニセフ協会を通じて行っている寄付ですが、生活に必要な水の容器、伝染病から身を守るための物資、そして勉強道具など発展途上国の子供の命を育むために貢献していることがわかります。最初は誰の目にもとまらない小さな取り組みだったと思いますが、地道な啓蒙活動を続けた結果、ユニセフおよび福祉事業団体への寄付総額は5900万円以上に上っています。(2020年5月現在)
入れ歯リサイクル協会では「歯にかぶせた金属や歯に詰めた金属、歯と歯をつないだ金属もリサイクルできる」としています。何かの理由で口腔内の金属を処分する際は、ぜひこの取り組みがあることを思い出してみてください。不要な入れ歯類は「不要入れ歯回収ボックス」に入れれば回収してもらえます。なお、不要入れ歯回収ボックスは取り組みに協力している地方公共団体の事務所や歯科医院などに設置されていますよ。

イメージ画像

イメージ画像


できることからはじめよう

現在、日本では「家電リサイクル法」をはじめ、「容器包装リサイクル法」や「食品リサイクル法」などの法整備が進み、資源の有効活用について様々な取り組みがなされています。
入れ歯リサイクル協会のように、意外な物のリサイクルに励む人たちの存在を知ると、世の中には資源として再利用できるものがたくさんあるということに気づかされますよね。筆者もゴミを捨てる前に「これは何かにリサイクルできないか?」と立ち止まって考える努力をしていきたいと思います。
※以下にリサイクル可能な代表的なものを記載します。矢印右が生まれ変わる製品例です。
・ペットボトル→ペットボトル、衣類、容器類など
アルミ缶→アルミ缶、自動車部品など
・スチール缶→スチール缶、自動車部品、建材、レールなど
・ガラス瓶→ガラス瓶、建材、断熱材など
・プラスチック容器→プラスチック製品、燃料、合成ガス、セメントなど
・新聞、雑誌などの古紙→本などの紙製品、ダンボールなど
・牛乳パック→トイレットペーパー、ティッシュなど
・蛍光灯→アルミ、プラスチック、ガラス、水銀など
・使用済み食用油→燃料、家畜用飼料など
・パソコン→鉄、銅、アルミ、金、プラスチック、ガラスなど
・スマートフォン→パラジウム、コバルトなど
これらは多くの自治体や企業でリサイクルに取り組んでいます。お住まいの各自治体の分別ルールにならい、みんなで環境保全に取り組めたら良いですね。

イメージ画像

イメージ画像

入れ歯もリサイクルできるという衝撃の事実