NHKで好評放送中の大河ドラマ麒麟がくる」。主人公明智光秀長谷川博己)を中心に毎回、濃密な群雄割拠の戦国絵巻が繰り広げられているが、6月7日放送の第二十一回では、ついに歴史に名高い“桶狭間の戦い”が描かれる。東海最強と言われた戦国大名今川義元の大軍二万五千をわずか三千の兵で打ち破った織田信長は、この勝利をきっかけに天下取りへと大きく歩みを進めることとなる。この大一番を前に、信長役の染谷将太、義元役の片岡愛之助、義元の家臣・朝比奈親徳を演じる山口馬木也が、第二十一回の見どころを語ってくれた。






-桶狭間の戦いに臨む信長の心境をどんなふうに捉えましたか。

染谷 桶狭間の戦いは、長く対立してきた今川義元を自分の代で討ち取る、信長にとって、また一歩、“織田信長”に近づく戦いだと思っています。徐々に戦いへと情勢が近づく中で、ある種の、自分が育った家族を失った信長は悩みます。戦略はもちろんのこと、死や、帰蝶のこと。しかし、桶狭間という突破口を見いだしたとき、信長は自らが出向くことで、自分という存在を懸け、自らを試すように全てを捨てて出陣します。

-一方の義元はいかがでしょうか。

愛之助 出陣のシーンは、大一番を迎える緊張感を感じながらも「負けるはずがない」という絶対的な自信を持つ義元の姿を、そして合戦のシーンは、戦場で命を落とした数少ない戦国武将ということを念頭に、“勇ましい武将”であり続けることを大切にしました。

-義元を演じる上で心掛けてきたことは?

愛之助 これまでの今川義元は、見た目で公家のようなイメージがありましたが、今回は頭が良く、強大な強さを持った勇敢な武将として描かれています。全体的にクールな印象ですが、その中に鋭さと燃えたぎるような情熱が見え隠れするように演じてきました。

-今回の大きな見せ場となる桶狭間の合戦シーンを撮影した感想は?

染谷 非常に過酷でした。雨上がりで土はぬかるみ、まともに立てない環境の中で必死に戦いました。キレキレな立ち回りにはなっていないと思いますが、1人の人間が命を懸け、ただ必死に戦う人間くささを意識して演じました。

愛之助 今回、義元にも殺陣のシーンがあります。出演のお話を頂いたときから“力強い今川義元”を目指してきましたが、この殺陣のシーンでその真骨頂を表現するべく、演出の方と殺陣指導の久世(浩)先生にご相談させていただきました。最後まで屈強な義元であることで、討ち取った信長の存在がさらに強くなると思い、絶命の瞬間まで戦う武将であることを意識しました。

山口 ロケでは雨が降っていて足場も悪く、何か神秘的で不思議な感覚がありました。

-桶狭間の戦いでは、今井翼さん演じる信長の家臣・毛利新介が、義元の首級をあげる活躍を見せますね。

愛之助 公私ともに仲がよいので複雑ですが、翼さんに討ち取られるなら仕方ないかと(笑)大河ドラマで共演できてとてもうれしかったです。

山口 途中から参加する身としてプレッシャーもありましたが、主役の長谷川さんをはじめ、毛利を演じる今井さんとも共演したことがあったので、なごみました。

-それぞれの考える第二十一回の見どころは?

愛之助 “信長と義元の駆け引き”が一番の見どころだと思います。圧倒的に有利な状況で着々と織田方の城を落としていく義元は順調そのもの。信長が突いてくるのはまさにそこで、少数精鋭で今川本陣を攻めてきます。結末は分かっている桶狭間の戦いですが、それがどのように描かれるのか、楽しんでいただければ。また、義元をはじめ、今川軍と織田軍の迫力ある殺陣のシーンにもぜひご注目ください。

山口 朝比奈は、ドラマの中では本陣の義元の目の前にいますが、史実では戦地におらず、後になって義元の死を聞いて後悔したという逸話が印象に残っています。そんな朝比奈の無念さを頭の片隅に置き、義元にそういう思いで忠義を尽くせたらと思いながら演じました。

染谷 信長は、「今川を討ち取ってみんなを喜ばせたい!」という思いで、そのためなら死ぬことも恐れません。そのピュアさが信長の強さでもありますが、同時に恐ろしさも感じました。そういう意味で、戦に向かう興奮や戦に生きる喜びなど、信長のさまざまな感情が見え隠れする回になっていると思います。また、一人一人の覚悟も丁寧に描かれた桶狭間の戦いになっているはずです。そして、戦いの後、光秀と信長が何を話すのか。そこにもぜひ注目してください。

 次週からいったん、放送休止に入る「麒麟がくる」。その直前の大きな山場となる“桶狭間の戦い”を描く第二十一回は、絶対に見逃せない。

(取材・文/井上健一)



織田信長役の染谷将太