「嬉しい! でも、私なんかが出ていいのかな……」

 恋愛リアリティ番組「テラスハウス」(フジテレビ系)への出演が決まり、喜びながらも戸惑っていたプロレスラーの木村花さん。笑顔の報告から8カ月後、彼女は22年の短い生涯を閉じることに――。

◆◆◆

 花さんは元プロレスラーの母・木村響子さんとインドネシア人の父親との間に横浜市で生まれた。高校を中退後、母の後を追うようにプロレスの道に進む。

 母子を良く知るライターの須山浩継氏が明かす。

「花は表には出さないけれど努力家で、『個性が出るから』と自らヒール的な立場を選んだ。『テラハ』には自分の意思で出演したと聞いています。中学の時に沖縄でアイドル活動をしたこともあり、プロレス以外でも人前に出たいという気持ちがあったのでしょう」

 花さんが昨年9月から出演していた「テラスハウス」は、“台本のない恋愛リアリティショー”として2012年から放映。だが、「週刊文春」は14年に「ヤラセ」や「セクハラ」が横行していた内情を報じている。

「15年からNetflixでも配信を始めて以降、SNSの反応をかなり意識しながら番組作りをするようになった。そういう意味で、花さんが起こした“あの事件”は制作側にとって“ラッキーな出来事”だったのです」(番組関係者)

コスチューム事件「怒りすぎてしまって……」

“あの事件”とは3月31日に配信された「コスチューム事件」のこと。花さんが「命と同じくらい大事」という試合用コスチュームを同居する男性メンバーが誤って洗濯、乾燥し、着られない状態になったのだ。

「放送直前、花から『今度、コスチュームトラブルが出る。演出じゃなくて本当にあったことだけど、怒りすぎてしまって……』と、気に病んだ様子で打ち明けられました」(古い友人)

 放送では激怒する花さんが「ナメんのもいいかげんにしろよ」「何か言えよ」と男性に詰め寄り、帽子を取って投げ捨てる様子が流れた。その直後から花さんのSNSには〈お前も悪い〉〈暴力ありえない〉といった声が殺到し、炎上した。

 しかし、この“反響”を受けた制作陣は二の矢、三の矢と“燃料”を投下する。

「制作側としては、花さんは数字が稼げる“使える”キャラでした。その後、女性出演者との会話で、花さんが『私、そんな悪いことした?』と反論して号泣する未公開動画も配信しました」(前出・番組関係者)

 次々と出される動画に、SNSでは〈ブス〉〈消えろ〉〈キモイ〉などの罵詈雑言があふれた。やがて花さんは〈生きててごめんなさい〉などとネガティブな投稿を繰り返すようになる。

自殺が後を絶たないリアリティ番組

「悪役はキャラだけで、本当の花は涙もろい繊細な子。5月に保護猫を引き取り、『からあげ』と名づけて可愛がっていた。中傷なんて無視すればいいのに真面目に一つ一つ見て心を痛め、ここ1カ月はふさぎ込んでいました」(前出・友人)

 こうしたリアリティ番組は海外でも人気だが、出演者の自殺が後を絶たない。

「昨年、英国の番組では、浮気していないことを嘘発見器で証明しようとして失敗し、婚約者と破局した63歳男性が自殺。韓国でも14年、29歳の女性が『番組が放送されたら韓国で暮らせなくなる』と母親に告げ、撮影現場で自殺した。制作側は出演者のSOSに気づかず、映像の面白さを追求してしまうのです」(放送ジャーナリスト

「テラハ」では山里亮太らMC陣が、出演者について「怖いね〜あの子は」「クソみたいな奴らがいなくなってよかった」などと発言し、視聴者を煽ることもあった。ITジャーナリストの篠原修司氏はこう語る。

「テラハのように、芸能人のMCが出演者に辛辣なコメントをする構成では、視聴者も『こいつは叩いていいんだ』と勘違いしてしまう。SNSダイレクト誹謗中傷できる今の世の中で、炎上が予想される動画を配信した制作側が、演者のフォローをちゃんとしていたのか疑問です」

 フジテレビに見解を問うと「番組にご出演されたことが話題になり、中にはSNS上で心ないコメントがあったことを非常に残念に思います」と回答。

 5月23日、花さんは〈愛されたかった人生でした〉〈ばいばい〉とSNSに投稿した後、命を絶った。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年6月4日号)

木村花さん