新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた生活や経済を下支えするため、政府は2020年度予算の1次補正と2次補正を編成した。民間の支出も含めた事業規模は1次と2次を合計して233兆円に達する過去最大の規模だ。ただ、2次補正に盛り込まれた10兆円の予備費を巡って、永田町では憶測が浮上している。

GDPの4割に上る世界最大の対策によって、この100年に1度の危機から日本経済を守り抜いてまいります」。2次補正を政府が閣議決定した2020年5月27日安倍晋三首相は政府・与党の幹部を集めた会合で宣言した。4月20日に閣議決定され、同30日に成立した1次補正からわずか1カ月後に2次補正を編成したのは、感染拡大が及ぼした影響が広範に及んでいるからだけではなく、与党から矢継ぎ早に寄せられた歳出要求をほぼ受け入れざるを得なかったという側面もある。

2次補正「一般会計の歳出規模」は31.9兆円

2次補正は一般会計の歳出規模としては31.9兆円で、25.6兆円だった1次補正を上回った。2次補正だけでも事業規模は117兆円に達する。2次補正で生活関連では、低所得のひとり親世帯に5万円を支給する。新型コロナウイルス患者に接する医療従事者には最大20万円の慰労金を渡す。また、緊急事態宣言による外出自粛要請で売り上げが減った飲食店を対象に家賃を最大600万円給付する。

1次補正では国民1人当たり一律10万円を支給する制度が盛り込まれたばかりだが、2次補正でも現金給付が目白押しで、家賃補助など与党側が求めた項目が相次いで認められた。「アベノマスク」など新型コロナウイルスを巡る対応のまずさや検察庁法改正問題で招いた混乱によって、「官邸主導」で長期政権を維持してきた安倍首相の求心力の低下は明白だ。「安倍1強」は既に過去の話になったかのようだが、2次補正の歳出の3分の1を占める10兆円の「新型コロナウイルス感染症対策予備費」が衆議院の解散・総選挙と絡めて永田町では語られ始めている。

予備費とは、具体的な使い道を決めずに備えておく予算を指す。何かの用途に使う場合は国会の審議は不要で、内閣が自由に使える。通常国会は6月17日に会期末を迎え、例年ならば秋の臨時国会まで国会が開かれないので、その間に感染が再び拡大した場合に備える、という大義名分は確かに成り立つ。ただ、年間の当初予算でさえ予備費といえば5000億円程度が相場で、これを10兆円も積み増すのは異例だ。

二つの任期満了とオリパラと「解散の選択肢」

そこで浮上しているのが、「安倍首相は秋の臨時国会で冒頭解散を模索しているのでは」という憶測だ。桜を見る会などを含め、野党から攻撃される材料は豊富にあり、安倍首相は国会を開きたくないはず。そこで予備費を積んでおけば不測の事態が起きても国会を開かずに対応でき、予備費を使って「新型コロナウイルス対策」の名目でバラマキ型の経済対策をぶち上げて世論にアピールしたうえで、秋の臨時国会の冒頭で解散して総選挙になだれ込むのでは......との見方だ。

安倍首相自民党総裁としての任期満了は2021年9月、衆議院議員の任期満了は21年10月であり、東京オリンピックパラリンピックは21年7月から9月にかけて開かれる予定だ。衆議院解散選択肢が狭まる中で、使える制度をフルに活用して最も有利なタイミングを狙っていても不思議ではないという解説が永田町まことしやかに語られている。

安倍内閣の支持率が世論調査で急降下を続け、青木幹雄・元自民党参院議員会長が唱えた「青木の法則」(内閣と自民党の支持率の合計が50%を割ると政権は危険水域)に照らすと、50%台に突入した数字も出た。危機が迫っているとの見方が自民党内でもジワリ広がっており、安倍政権の次の一手に注目が集まる。

通常国会は6月17日に会期末を迎える。