軽量スポーツカーをお忘れでは?
あなたがもしスーパーセブンという車名を知らなかったとしても不思議ではない。
【画像】あなたはどのタイプが好み 色も違えば形も違う「セブン」【比べる】 全239枚
だが細長いボディとそこから張り出したような4つのタイヤがレトロな雰囲気を醸し出すオープンカーの姿にはきっと見覚えがあるはずだ。
アルミニウムの地肌が剥き出しになった胴体はライト兄弟が作った軽飛行機のよう。そのコクピットにすっぽりとハマっているドライバーもまた「紅の豚」のような(クラシックバイク乗りのような?)コスチュームに身を包んでいることが多い。
「近頃の新車はどれも似たようなヤツばっかりでピンと来ない」なんて思っている人がいたら、あるカテゴリーをスッポリと見落としているのかもしれない。
ライトウェイトスポーツカーである。
バックヤードビルダーと呼ばれる小規模メーカーによって手作りされているイギリスの伝統的なスポーツカー。
車重1tを軽く切る彼らの中でも元祖といえる1台こそがスーパーセブンなのである。
スーパーセブンが飛び切り刺激的な乗り物であることはそのスタイリングからもわかるだろう。
走るための装備しかないこのクルマはどんなエンジンを搭載していても驚くほど速い。それだけでなくポルシェ911やクラシックミニよりも前に誕生し、今日も作り続けられている歴史の持ち主でもあるのだ。
自分で作れるレーシングカー
スーパーセブンの歴史は今から63年前となる1957年に始まった。
F1の強豪としても有名なイギリスのロータスが作り出した、その名もロータス・セブンというクルマがその元祖なのである。
ちなみにスーパーセブンという呼び名は特にパワフルなエンジンを搭載した特別なセブンのための名前だったが、その響きの良さによってセブン族全体のニックネームとしてひとり歩きしたものである。
ロータス・セブンは細い鋼管を組み合わせて作りあげた鳥かごのようなシャシーにフォードなどの大メーカーの生産車に積まれていたエンジンやギアボックス、デフなどをそっくり移植することで完成している。
セブンはもともとサイフの軽いクルマ好きのためのプロダクトだったため、完成車以外にも半完成や部品レベルといったキットの形式でも購入することができたのだ。
クルマ好きが自宅のガレージで自作して登録できるスポーツカー(!)。その方が楽しいからということもあるが、イギリスではキットの方が税金が安かったからというのが本当の理由である。
セブンのオーナーはサーキットまで自走していき、そのままクラブマンレースを走ることができた。
草創期のロータスの多くはレーシングカーだったが、セブンもまた競争するDNAを持った1台だったのである。
似たような手法で誕生したモデルも
ロータスはセブンの製造権を1970年代前半に同じくイギリスのケータハム社に譲渡している。今日新車で買うことができるセブンといえばロータスの血筋を引き継いだケータハム・セブンがその代表なのである。
だが構造がシンプルで飛び切り速いセブンはいつの時代も一部のマニアを熱狂させる存在であり、その結果として似たような手法で誕生したモデルが数多く登場した。
南アフリカのバーキン、ニュージーランドのフレイザー、オランダのドンカーブート、イギリスのウェストフィールド、そして日本の光岡自動車も1994年にロータス・セブンによく似た「ゼロワン」を販売し話題となった。
どっちが本物だ! こっちの方がクオリティが高い! といった論争はあるようだが、ニア・セブンと呼ばれるこれらのモデルに共通するのは、ドライブしてみれば「人生観が変わるくらい刺激的」ということ。
ドライビングポジションは手を伸ばせば地面に触れられるほど低く、ギアボックスは当然のようにマニュアル、サービス精神旺盛なサイド出しマフラーのおかげで4気筒でも威勢のいい排気音を響かせることができる。
そして何より車重が軽いので、体感加速だけでなく実際の加速も速いし、身のこなしも超がつくほどクイック。
車重500kgほどというのは、最新のスープラの3分の1の重さなのである。
229万円でF1に乗る夢を実現!
60年以上も生き長らえてきたセブンは、現在でも新車が手に入る。
一方、長年作り続けられてきたセブンなので、中古車にだって売り物がある。
中古車サイトを覗いてみると今現在は41台のケータハム・セブンが売られており、最安の個体は229万円となっていた。
クルマ好きの人生観がたったの229万円で変わるのであれば、これほど安い買い物はない?
家族の反対を押し切り、近所の好奇の目に晒されつつ、晴れてセブン・オーナーになった方にも、これからそうなるかもしれない方にも、ウィキペディアにも書かれていないとっておきのトリビアをプレゼントしよう。
スーパーセブンはかつて本当のF1グランプリに出場した経歴を持つ、れっきとしたF1マシンの末裔でもあるのだ。
1962年の南アフリカGPにロータス・セブンがエントリーし、11位で完走した記録が残されているのである。
古のF1マシンを現代の公道でドライブできるという奇跡のようなストーリー。その主人公気分に浸ることも、スーパーセブンのオーナーにだけ許された特権なのである。
近頃にわかに脚光浴びつつあるスーパーセブンだが、その歴史が知れ渡ればさらに盛り上がってもおかしくない逸材なのである。
■ケータハムの記事
【日本資本に】ケータハム、何が変わる? 電動化の中で進む道
【セブンの伝統を守る】ケータハム初のEV 2023年登場か モーガンと提携も
【珠玉の名車、岡山に】西日本最大のクラシックカー・ラリー ベッキオ・バンビーノ・プリマベーラ
【全参加者を登録】8年目を迎えたクラシックカー・レース TBCC ウィズ・コロナ時代の屋外イベントのあり方とは
コメント