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(写真:アフロ

NHKの番組「世界のいま Mr.シップ」が6月7日、アメリカで発生したデモについて公式Twitterアカウントで説明。しかし、「筋違い」「差別の助長では」と厳しい指摘が相次いでいる。

アメリカでは先月25日、黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人の警官に首を膝で抑え続けられ不当に殺害された。そのことをキッカケに黒人差別への抗議としてデモが行われ、次第に暴動へと発展。混乱続くいっぽうで「Black Lives Matter」というスローガンが拡散され、Taylor Swift(30)やBillie Eilish(18)といった著名人たちを筆頭に黒人差別の横行する社会に人々が警鐘を鳴らしている。

そんななか7日、「世界のいま Mr.シップ」はTwitterアカウントで動画を投稿した。そこには黒人のキャラクターが登場し、「俺たちが怒る背景には、黒人と白人の間に貧富の格差がある」と語った。続けて白人のほうが資産を黒人の7倍も平均的に持っていることや、新型コロナウイルスの影響で黒人の失業が相次いでいると言及。そして「こんな怒りがあちこちで噴き出したんだ」と紹介した。

前述のように抗議が暴動にまで発展したのは、黒人差別への怒りが根底にある。貧富の差を理由に暴動が発生したという認識は果たして正しいだろうか?ネットでは「筋違いでは」と番組の認識を疑問視する声がこう上がっている。

《これではアフロアメリカンの人権のためのプロテストではなく、金のために暴動を起こしている印象しか与えない》
《動画自体があり得ない視点からつくられていて論外。米国内の黒人の怒りがどこから来ているのかを知るための勉強になってない》
《「経済格差が暴動の原因だ」みたいなミスリード、最悪。問題のすり替え、制作側の悪意すら感じます》

また動画に登場する黒人男性は、筋肉質でタンクトップ姿。そして、粗暴な口調でもある。番組はTwitterでこうも投稿している。

《白人警察官には黒人に対する漠然とした恐怖心があって、今回の抗議デモの発端となったような事件がなくならないとも言われているんだ》

こうして黒人を、恐怖心を抱かせるような存在として伝えることは適しているだろうか?ネットでは「差別を助長しているのでは」との声がこう相次いでいる。

《「黒人=暴力的なデモ」を連想させるイラストや、オラオラ系の喋り方。情報の薄さと不正確さが際立つ》
《NHKは、こんなヒドい人種プロファイリングの絵を、全国放送で流しただけでなく、SNSで拡散?なぜ筋肉ムキムキで血が浮き上がってる?これこそ、米国だけでなく、世界で、何百万人の人が闘っている偏見と構造的な差別を象徴》
《白人警官は黒人に「漠然とした」恐怖心があるのだと言ったうえで、その「漠然とした恐怖」を表象するような、いかつい黒人像。差別扇動以外の何物でもない》

これまでも「Black Lives Matter」に関連するツイートを発信してきた大坂なおみ選手(22)は9日に動画を引用し、黒人男性がいぶかしむような表情をするGIF動画を投稿した。他にも英語ネイティブのTwitterユーザーを中心に動画は世界中に拡散。ジョセフ・M・ヤング駐日米国臨時代理大使も「侮辱的で無神経」と言及している。

NHKは9日、「番組では、デモの発端が、黒人男性が警察官に押さえつけられて死亡した事件であることを紹介した」と前置きしながらも「視聴者からこのアニメーションについて、問題の実態を正確に表していないなどというご批判をいただき、掲載を取りやめました」との声明を発表。現在、動画は削除されている。