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image by:Royal Society of Chemistry

 どことなく中二病的な響きがあるシャドーエネルギーは存在する。その抽出に成功したのが、世界で初めて開発された「影効果発電機(SEG/Shadow-Effect Energy Generator)」だ。

 この画期的なデバイスなら、室内で再生可能エネルギーを作り出すシャドーエネルギー社会が実現するかもしれない。

 シャドーエネルギーといっても、宇宙全体に浸透しているとされる仮説上のダークエネルギーとは違う。正真正銘の不可思議なエネルギーのことではなく、影と光のコントラストを利用して発電される電気のことだ。

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光と影のコントラストを利用して発電

 光あるところには影がある。それは世のいたるところを覆っているにもかかわらず、エネルギー源として使われることはない。それどころか従来の光を利用して発電をする太陽光発電にしてみれば、発電を邪魔する厄介者でしかない。

 だがシンガポール国立大学の陳瑞深氏が開発したSEGは、その影から発電する。

 SEGはシリコンウエハーに並べられた薄い金フィルムと、柔軟なプラスチック製の基板で構成されている。表面が完全に影に覆われている状態、あるいは完全に光で照らされている状態では、ゼロかごく少量の電気しか発電しない。

 だが表面に光と影の明るさのコントラストがあれば、そこに電圧の差異が生まれ、電流が生じる。たとえば流れる雲や揺れる木の枝、あるいは単純に太陽の動きなどによって影が動いてくれれば、1.2ボルト程度の発電を行うことができる。

 同じ条件でなら従来の太陽電池より2倍も効率的で、将来的にはさらに性能をアップさせることも可能であると見込まれている。

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Pixabay

モバイル機器への利用やセンサーとして応用可能


 SEGの発電量は今のところ少量なれど、デジタル時計などなら十分稼働させられるだけの発電ができる。モバイル機器やウェアラブルデバイス、あるいは家庭用スマートデバイスなどへの応用が考えられるという。

 またSEGをセンサーとして利用することもできるとのこと。表面を通過する影を感知して、物体の動きを検出するのだ。この性質を利用すれば、自己発電式センサーとしても応用することができるそうだ。

シャドーエネルギーが世の中を明るく

現在、研究チームは、金のフィルムを別の素材に変えてみたりと、SEGの製造コスト低下に取り組んでいるところだ。

 シャドーエネルギーが社会を一変させるかどうかは分からない。しかし、こうした再生可能エネルギーの選択肢が増えれば、化石燃料への依存は低下するはずだ。シャドーエネルギーが世を少しだけ明るくするのである。

この研究は『Energy & Environmental Science』(4月15日付)に掲載された。

Energy harvesting from shadow-effect - Energy & Environmental Science (RSC Publishing)
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2020/EE/D0EE00825G#!divAbstract

References:Using the ‘shadow-effect’ to generate electricity | NUS Research News 全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52291645.html
 

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