長い時を越え愛される続ける女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「遙かなる時空の中で」シリーズ。6月18日(木)に発売予定のNintendo Switch向け新作『遙かなる時空の中で7』に向けて、これからシリーズに触れる方向けに3回に渡って「遙か」の歴史をまとめる本企画。3回目となる本稿では、シリーズ5作目と6作目について詳しくお届けします。1回目の基礎知識編、2回目のシリーズ1~4の解説もご一緒にどうぞ。皆様の遙かなる時空の旅のお供になれば幸いです。

文 / みかめゆきよみ

◆現代と異世界を駆け抜ける『遙かなる時空の中で5』

2011年2月24日に発売されたシリーズ第5弾。舞台は日本史でいうところの幕末。主人公の蓮水ゆきは留学先から帰国途中、飛行機事故に巻き込まれ異世界に時空移動してしまいます。PSPにて本編の『遙かなる時空の中で5』と、続編の『遙かなる時空の中で5 風花記』が発売されています。

◆『遙かなる時空の中で5』の八葉たち天の青龍:桐生瞬(CV.寺島拓篤) 主人公の家に拾われ兄弟同然に育てられた幼馴染。保護者代わりでありながら無口で無表情。主人公を守りつつも、必要以上に近づかず、そっけない態度をとる

地の青龍:坂本龍馬(CV.鈴村健一) 土佐藩開国派の幕末志士。明るく飄々としており、気が向いた時に主人公の前に現れては主人公を「お嬢」と呼び、気軽に話しかけてくる。人望があり、実力と行動力を備えた人物

天の朱雀:チナミ(CV.阿部敦) 水戸藩尊王攘夷派の幕末志士。天狗党の首領格。不遜だが、義理人情に厚く感動屋。恋愛沙汰には疎い。偉大な思想家の父や立派な兄を尊敬している

地の朱雀:沖田総司(CV.岡本信彦) 新選組(佐幕派)の一番隊隊長。いつも曖昧な微笑みを浮かべている。自分の意思や感情が欠けていて、上司のに命ならどんな任務でも表情一つ変えずに刀を振るう剣士

天の白虎:小松帯刀(CV.立花慎之介) 薩摩藩の家老。尊王佐幕派。理知的で合理性を尊ぶ。融通が利かなそうに見えて、適応力と現状を把握する能力に優れている

地の白虎:福地桜智(CV.竹本英史) 佐幕開国派の幕臣。艶やかで気だるげな雰囲気の美丈夫。「夢の屋」という名で情報屋としても知られている。神出鬼没で幕臣でありながら勢力に拘らず情報を提供している

天の玄武:アーネスト・サトウ(CV.四反田マイケル) イギリスの外交官兼通訳。開国派。ソフトで穏やかな態度を崩さない、王子様のような青年。外交官としては非常に有能で、どのような嫌味や差別も笑顔でかわすが……?

地の玄武:高杉晋作(CV.安元洋貴) 尊王攘夷派である長州藩の過激な一派のリーダー。冷酷で傲岸。堂々とした帝王のような風格がある。どのような危機的状況においても落ち着いており、精神的に成熟している

幕末に活躍する志士が思想や立場を越えて八葉として一堂に会する。まさにドリームチームです。

◆荒廃した現代と、幕末に似た異世界、2つの世界を行き来する!

これまでは異世界に行きっぱなしでしたが、『5』はゲーム中、何度も現代と異世界の行き来をします。しかし現代はなぜか砂漠が広がる荒廃した大地になっており、主人公と幼馴染外の人間は消滅しています。

時空の行き来には白龍の神子の主人公が持つ「時空の砂時計」が必要。異世界では行動するたびに砂が落ち、落ち切ると現代に強制的に戻されてしまいます。「時間は無限ではない」そう告げられているようで、一つの行動を起こすにも緊張感が走ります。

異世界では京、長州、日光が舞台になります。もちろん実際にある地名が登場! 主人公たちは異世界で出会った幕府の宰相・天海(あまみ)の助言に従い、荒廃した現代を元に戻すため奔走します。その中で、のちに八葉になる幕末志士たちと出会い、彼らと行動を共にしながら時代の激流に飲まれていくのです。

『5』は主人公の章をいったん終わらせると章選択が可能になり、いつでも各章の冒頭からやり直しができるようになります。仲間の「心の結晶」を集めて絆を深めると恋愛ルートが開放されるので、意中の相手のルートが開放されるまで何度もチャレンジしましょう!

◆武器封印と連携術が戦闘を彩る!

「遙か」シリーズは女性向け恋愛アドベンチャーゲームでありながら奥深い戦闘が特徴。『5』も戦闘システムがかなり本格的です。

そのひとつが「武器封印」。五行(木、火、土、金、水)それぞれの属性には相性があり、弱点属性で倒した敵は「魂」に変化します。これを武器に封印することで、新たな技が使えるようになります。

うまく封印すればキャラクターが持つ本来の属性とは異なる属性の技を持つことができ、次にご紹介する「連鎖術」にも大いに役立ちます。

武器レベルが一定値に達したり、特殊な怨霊を封印したりすると、名前や見た目が異なる新たな武器へと変化します。カッコよくなって封印できる場所も増加、いいこと尽くしです!

次にご紹介するのが技を決まった属性順に繰り出して発動する「連鎖術」。強力な敵全体攻撃なので、うまく使えば敵を1ターンでせん滅させることができます。早く倒せば「速攻」になり、八葉との絆もアップ! 先ほどご紹介した「武器封印」で複数の技をバランスよく覚えさせれば、発動可能な連鎖術のバリエーションが増え戦闘を有利に進めることができます。

主人公と仲間の絆が深ければ、連鎖術発動時に控えの仲間が追撃を加えてくれることも。追撃技は無属性になるので連鎖術の属性が味方にとって不利だった場合にかなり有効。逆に連鎖術の属性が有利な場合はキャンセルすることもできます。

技のカスタマイズと攻撃コンボの組み立てが強化された『5』。八葉をまとめる神子としての采配が試されますが、狙い通りにコンボが決まった時の爽快感はたまりません。オートバトルに切り替えることもできるので、戦闘が苦手な人も安心です。

戦闘で溜めた五行の力はキャラクターの強化や現代の復興に使うことができます。さらに砂時計の砂も回復するので、戦いは避けて通れないでしょう。少し複雑かもしれませんが、だからこそ仲間との絆をより深く感じられるというもの。志を共にする仲間に信頼を置き戦う、なんとも幕末らしいではありませんか!

◆倒幕、佐幕、尊王攘夷……立場は違えど、目指すはひとつ

幕末といえば約270年続いた徳川幕府が終わり、新たな世が生まれた動乱期。時代の転換期には犠牲がつきもので、数多の幕末志士がそれぞれの志に従い殉じていきました。国を憂う気持ちは同じなのに敵対し合わなければならない。そんな悲しい時代に時空移動し、「みんなを助けたい」とひたむきに願う主人公の気持ちに心を揺すぶられます。また、当初はまったく打ち解けなかった八葉たちが徐々に一つになっていく様子にも注目です。

◆シリーズ初! 黒龍の神子が主人公の『遙かなる時空の中で6』

2015年3月12日に発売されたシリーズ第6弾。舞台は日本史でいうところの大正時代にあたります。主人公は高校生の高塚梓。祖母のお見舞いの途中、異世界の帝都東京に時空移動してしまいます。『6』はシリーズ初の黒龍の神子が主人公です。黒龍は白龍の対となる存在で、応龍の陰の側面を持っています。

今プレイするならNintendo Switchの『遙かなる時空の中で6 DX』がオススメ。本編『遙かなる時空の中で6』と、後日談となる『遙かなる時空の中で6 幻燈ロンド』が1本にまとめられ、新規イベントも多数収録されています。

また、本作に登場する有馬一とダリウスは、コーエーテクモゲームスのキャラクターが総出演するアクションゲーム『無双☆スターズ』(PS4PS Vita)にも出演しています。他のタイトルのキャラクターとの掛け合いが見ものなので、こちらもぜひチェックを!

◆『遙かなる時空の中で6』の仲間たち

有馬一(CV.寺島拓篤) 帝国軍の対怨霊討伐組織、精鋭分隊の隊長。23歳。怨霊討伐において、帝国軍内で右に出る者はいない。軍人らしく、めったに笑顔を見せない高潔な人物。決断が早く、迅速果敢な行動をとる。龍神の神子を捜索している

ダリウス(CV.鈴村健一) 鬼の一族として、異質な美しさを持つ青年。24歳。幻術に秀でており、術を駆使して帝都の森の奥に潜んで暮らしている。異世界に時空移動した主人公を広大な邸にかくまった人物

コハク(CV.阿部敦) 帝都に蔓延する、原因不明の病を患った青年。病の影響で記憶を失っている。17歳。軍人に捕縛されそうなところをかくまわれた経緯で、ダリウスの邸に居候することに。明るく、てらいのない性格で、世話を申し出てくれた主人公を慕っている

片霧秋兵(CV.岡本信彦) 対怨霊討伐組織、精鋭分隊の副隊長。26歳。また、帝国軍の最高権力者・参謀総長の息子でもある。大人の所作を身につけた穏やかな好青年で、主人公を気にかけてくれる。亡き母親が華族の生まれでもあったことから、多彩な趣味を持つ

ルードハーネ(CV.立花慎之介) ダリウスより、主人公の世話役を命じられている少年。15歳。愛称は「ルード」。年の割には落ち着いており、大人びている。真面目な完璧主義者であり、ダリウス邸の家事及び財政管理は彼の手腕に任されている

本条政虎(CV.竹本英史) ダリウスの雇われ人。愛称は「虎」。29歳。人並み外れた強靭な肉体を誇り、危険な任務も厭わない。豪快で傲慢、非常識な言動が多く、邸に同居する主人公を翻弄する

萩尾九段(CV.四反田マイケル) 星の一族の青年。19歳。帝国軍の相談役。龍神の神子の召喚儀式を行った。神子を守る使命を何より大事にする、心優しい人物。長年、書物と向き合って暮らしていたためか世の常識とずれた、古風で天然な言い回しが多い

里谷村雨(CV.安元洋貴) カフェー「ハイカラヤ」に間借りしている小説家。35歳。気だるげな雰囲気をまとい、独自の観点で世を眺める男性。帝国軍と鬼の一族、どちらにも属さず、中立の立場をとっている。裏稼業で情報屋をしており、客を選ばない

洋風の装いや軍服がレトロモダン好きにはたまりませんね! 黒龍の神子として運命に翻弄されつつ、8人の男性たちとは帝都東京の怨霊を鎮めるため共に行動をします。『6』では鬼の一族と帝国軍の対立が描かれ、これまでより多くの鬼の一族が仲間として登場するのが特徴です。

◆『1』や『2』のシステムが復活

『6』には『1』や『2』のように暦があり、帝都東京を探索して決められた期日までに課せられたミッションを攻略しながら仲間たちと絆を深めていきます。鬼の一族が物語に深く関わってくるのも『1』と『2』に通じるものがあります。探索に同行者を2名を選んで連れて行く点も『1』、『2』のシステムを踏襲しています。もちろん探索の際には怨霊との戦いは避けられないので、怨霊と同行者の相性も考慮しましょう。

『幻燈ロンド』では主人公の拠点が選べるように。拠点では、家主の様々な一面が見られます。

拠点にカフェー「ハイカラヤ」を選ぶと村雨との生活を楽しむことができます。意中の相手と一つ屋根の下。なんだかドキドキしますね。村雨の洗濯物を受け取る主人公はよくできた女房のようです!

精鋭分隊の有馬一と片霧秋兵の住む下宿の一幕。食堂兼談話室でにぎやかな食事を楽しんだり、それぞれの自室で寛いだり。プライベートでは意外な一面を見せてくれます。

旧軍邸では星野一族の萩尾九段と、主人公の対である白龍の神子の駒野千代との生活が楽しめます。神子ふたりのガールズトークがとってもかわいいです! 世間に疎い九段の戸惑う様子が見ものです。

鬼の拠点である「蠱惑の森」も拠点にできます。ダリウスと虎は主人公の選択が意外だったようです。異世界に召喚されてから初めてお世話になった場所だけに、最も馴染みが深いかも。

探索に出かけると見覚えのある地形と聞き覚えのある地名が沢山出てきて、「「遙か」シリーズがとうとう近代にきたんだなぁ」と改めて感じさせられます。聖地巡礼もしやすいですね。それにしても、「蠱惑の森」にだけは行けないのが悔やまれます!

『1』と『2』のシステムを踏襲してはいますが、物語はまったく別物。初の黒龍の神子視点の物語ということもあり、「遙か」シリーズをこれからプレイしようという方にも勧められます!

◆陣取りと札を重ねる強化が決め手!

『遙か6』の戦闘システムはこれまでとはまったく異なり、決められたマスの中で自キャラの札を動かし敵を倒していくものになっています。札ごとに動ける範囲が異なるので、うまく敵の横に配置して攻撃をしていきます。敵をおびき寄せるためにあえて動かないのもひとつの手。

仲間の札が敵の上下左右にあると連携攻撃ができ、絆もアップします。五行の属性はしっかりあるので、有利な敵と戦えるようにしましょう。自分にとって有利か不利かがエフェクトで分かりやすく表示されるので、参考にするとよいでしょう。

戦闘中に倒した怨霊の札を手に入れることがあり、札を使って仲間を強化していくことができます。さらに、ストーリーを進めると怨霊の陰の気を吸収し、「使役」と「招霊」が使えるようになります。
「使役」は持っている札の怨霊を味方として戦わせる能力、「招霊」は主人公と隣接するマスに怨霊1体を呼び寄せることができる能力です。これらは陰の側面を持つ黒龍の神子ならではの力。

◆なんてったって大正浪漫

幕末の動乱から文明開化の明治を越え、国が富み文化が栄えた大正時代。レトロモダンな時代の雰囲気が心をくすぐります。画面のデザインもモダンな雰囲気で、シルエットで描かれた背景はとてもハイセンスです。

また、キャラクターのCGイラストにも注目。水彩のテクスチャを用いた手描き風のタッチになっています。タッチと世界観が実によくマッチしており、この時代が持つ幻想的な空気が伝わってきます。大正浪漫好きにはたまらないですし、プレイすれば大正浪漫の魅力に引き込まれてしまうでしょう!

声優が一新され、新たな風が吹き込まれた5と6。それぞれ独立した物語ですが、時代の転換期とその後の姿が描かれているので、合わせて楽しんではいかがでしょうか。



◆「遙か」シリーズが愛される理由

タイトルを順に振り返りつつその魅力を探ってきた本企画。平安時代の雅から、大正時代モダンへ、時代により雰囲気が変化してきましたが、「遙か」シリーズが一貫して揺るがずに持ち続けているのは「気品」ではないでしょうか。

もちろん恋愛アドベンチャーですから恋愛要素は大事です。ですがそれ以前に、「遙か」シリーズは世界を救うという壮大な目的があります。強い意志をもって運命に立ち向かう、崇高な志を持った主人公と、それを支える八葉たちの気高さに惹きつけられます。 戦いの中で育まれる絆と愛だからこそかけがえのないものになる。ただのロマンスではない、「ネオロマンス」であることに改めて気付かされます。

「遙か」シリーズも今年で20周年。シリーズそのものが歴史を重ねてきました。それぞれ独立したタイトルとして遊べるので、気になる時代から、気になる八葉から、楽しんでみてはいかがでしょうか?

いよいよ最新作『遙かなる時空の中で7』が6月18日に発売されます。7の舞台は特に人気のある戦国時代がモデル。群雄割拠の時代において、今度はどんな恋愛が待ち受けているのか、今から楽しみです。

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シリーズの根底にある「気品」こそがネオロマンス! 幕末の『遙かなる時空の中で5』と大正浪漫の『遙か6』を振り返る!【作品解説その2】は、WHAT's IN? tokyoへ。
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掲載:M-ON! Press