大阪のラジオ局、FM802が自信を持って1ヵ月間毎日、特定の楽曲をOAするヘビーローテーション。そのヘビロアーティストに、自身のルーツとなる楽曲のアンケートを取り、その話を交えながらFM802DJがインタビューする企画【FM802×SPICE ヘビロな人のヘビロ曲~あの人のルーツはこの10曲~】。今回は、2020年5月のヘビーローテーションアーティスト・Vaundy。5月27日(水)に発売された1stアルバム『strobo』の「灯火」が5月度のヘビ―ローテーションに選ばれていた。今回の対談はFM802で『BRIGHT MORNING』(毎週金曜、6:00-12:00放送)を担当しているDJの内田絢子が、ヘビロ曲についてはもちろん、一枚のアルバムに秘めた想いや、一風変わった方法で選ばれたルーツ曲について、さらには内田も思わず唸るVaundyの憧れの人物についても語ってもらった。

FM802『BRIGHT MORNING』(DJ:内田絢子)

FM802『BRIGHT MORNING』(DJ:内田絢子)

●僕は「変わっていくシンガーソングライター」としてやりたいんです●

Vaundy

Vaundy

ーー本日はよろしくお願いします。今月で二十歳という若さにもビックリしているのですが、そもそも音楽に興味を持ち始めたのは、何歳の時だったんでしょうか。

あまり覚えてないのですが、物心ついたときから、自分の周りに音楽を聴いている人が多くて。カラオケにもたくさん行きましたし、歌を歌うと褒めてもらえたんですよ(笑)。だから歌うのが好きになったし、それが歌手を目指すキッカケになっているのかもしれません。

ーー当時はどんな曲を歌っていたのですか?

小学校の頃は、当時放送されていた仮面ライダーの曲ですね。あと小田和正さんや、『仮面ライダーW』のつながりで吉川晃司さんも聴いていて。それからアニメソングボーカロイドにも興味を持って、動画サイトで歌い手をやっていました。

ーー曲作りはいつ頃から始めたのでしょうか?

曲作りは中学生からですね。パソコンを自由に触って良いという家庭だったので、独学で楽曲のミックス作業とか、基本的なパソコンの知識があればできるようなことをやっていました。初めて音源という形で残したのは中学校3年生のときだったと思います。

ーーそれはどんなジャンルの曲だったんですか?

ジャンルとか無く、ぐちゃぐちゃでしたね。今のような曲は作っていなかったです。

ーーその頃からジャンルレスだったのですね。それでいうと、先日リリースになった1stアルバム『strobo』は、一枚からいろんなジャンルの音楽が聴こえてきて驚きました。

「いろんな音楽が楽しめる」という声はファンの方からもよく頂きます。それはありがたいことだと思っているんですが、でも僕がやりたいことは更に一歩踏み込んだ部分で、そこがまだ伝わってない気がしています。

ーーそれはどういった部分ですか?

やっぱり皆さんのどこかで「この曲よりも、この曲がいい」という意識がまだあるはずなんです。それを聴いてくださる皆さんから無くしたくて。

ーーなるほど! いろんな面を全部含めて好きになってもらうと。曲によって全然違うから、どの曲で出会ったかによって『strobo』を聴いたときの驚きポイントはきっと違いますよね。

絶対違うと思います。「Vaundy○○派」みたいなのができちゃうかもしれないんですよね(笑)

ーー私は「東京フラッシュ」で初めてVaundyさんの音楽に触れたので、クールな印象があったんですが、「怪獣の花唄」とか「Bye by me」はビックリしました。確かに、その逆も然りということですもんね。

僕は「変わらないシンガーソングライター」よりも、「変わっていくシンガーソングライター」としてやりたいので、今は新しい方向でもっといい曲を作れる自信があるので、これからも楽しんでもらいたいと思います。

ーー本当に今を生きているという感じがします。そうやって常に更新し続けていらっしゃるので、ラジオで紹介する度にキャッチコピーが難しいなと思うんです。

僕もよく分かってないです。マルチクリエイターとしてやっているつもりで、音楽にとらわれた活動はしたくないなとは思っているので、たしかにキャッチコピーは難しいですね。……「歌う天然パーマとか」?(笑)

ーーメモしておきます!(笑) マルチクリエイターと仰いましたが、音楽にだけでなく、アートなどもそれぞれ今学んでらっしゃるんですよね。

そうですね。今デザイン系の大学で勉強しています。音楽だったり、そのデザインをやることだったりは、僕の自己表現のツールという考えなので、いずれもっとフィールドを広げて行きたいなと思っています。

ーー私が音楽でVaundyの世界を好きになったように、これからはデザインとか音楽以外の部分で魅力に触れるかたが増えるということですね。めちゃくちゃ楽しみです。

僕自身も楽しみです!

●考えてしまうということは、まだ経験が足りていないということ●

ーーFM802ではVaundyさんの音楽面である、最新アルバム『strobo』より「灯火」を5月度ヘビーローテーションとして1ヶ月たっぷりオンエアさせて頂きました。

ありがたかったです。「ラジオで流れてました」とか言っていただける事が増えて、前より知名度があがったんだなと思いました。ここからまだまだ先に行きたいですね。

ーー「灯火」はたくさん傷つきながらも歩みを止めず、後半から力みなぎってくる感じが、スタジオで聴いていて力をもらえましたし、ギターのリフもかっこよくて印象的です。どのような過程で制作を進めたのですか?

ギターのリフは練習していて、思いついたままを曲にしたんです。あとの部分も含めて大体1日でデモを作成しました。

ーー1日ですか!?

デモ曲に関しては、毎回1日以内に終わらせてることが多いです。僕は考えたらやめることにしていて。考えてしまうということは、まだ経験だったり、技術力、音楽を聴いてる数が足りていないということなので、考えて立ち止まったらすぐボツにします。だから良いと思える曲は一日で作り終わりますね。

ーーすごいですね! 「灯火」は歌詞も印象的です。歌詞はトラックにしっくり来る言葉を感覚で載せていくとお伺いしたのですが、その言葉は、やはり自分の経験とか感じた事から浮かぶのでしょうか?

自然に出てきた言葉を使ってるのですが、確かに今まで味わってきたことや、身体で感じ取った感覚だからこそ優先して出てきてるのかもしれません。「灯火」は何のニュースだったかは覚えていないのですが、ニュースを見てちょっと悲しい気持ちになって「あー、俺、今何してんだろう」みたいな感情をそのまま乗せました。

ーーなるほど。あと、この曲はドラマ『東京ラブストーリー』の主題歌としてもストーリーすごいリンクしていて、すごくハマっていますよね。

そうなんです。ドラマチームの皆さんにお声を掛けていただいたときも、そのための書き下ろし曲でもなかったので、ドラマの世界観に合うかわからなかったのですが、いざ観てみるとバッチリで良かったです。

●僕もまだまだ未熟だなと思い知らされますね●

ーーそんな「灯火」も収録されているアルバム『strobo』ですが、この多種多様な音楽が詰まったアルバムを聴くと、気になるのはルーツ! そこで今回「Vaundyのルーツとなった10曲」をセレクトしていただいているのですが……それぞれの時代を作った名曲がズラリと並んでいますね。

「僕のルーツ」と訊かれた時にすごく悩んだんです。なので今回はルーツというよりも、分析しなきゃいけないなというものを集めています。あ、サカナクションはただ僕が好きで入れています(笑)

ーーサカナクションが唯一比較的新しい曲ですもんね(笑)。 

サカナクション含め、並んでる楽曲一つ一つには様々な方向性があるんですけど、時代を作った曲には、きっと共通して「面白い」とか「凄い」と思えるものがあると思っていて。

ーーまた新しいルーツセレクト方法ですね。

そうですね。今、音楽塾で洋楽の研究や分析を行ってるのですが、ヒットする理由というのは絶対あって。それは時事的なものや、時代背景もあると思うんですが、それ以上に国民が持ってる共通的な好きという感情や、気持ちいいという意識が絶対あるはずなんです。それを今も分析しながら探しています。

ーーこの10曲の中で、分析しながらこれはビックリしたなというのはどの曲ですか?

デヴィッド・ボウイの「Heroes」は、本当に分解して聴いても、なんで成り立っているのか分からなくて。変化の付け方を含めた構成力が並大抵のものじゃないというか。同じ流れ、同じテンションなのにちゃんと落差があって、感情を感じるんです。この中で唯一、未だに何でなんだろうと思っています。

ーー分解しても分からないと、自分の要素として取り入れるのも難しそうですね。

そうなんです。分解しても分からないから真似ができない。僕もまだまだ未熟だなと思い知らされますね。

ーーあと気になるのは、10曲中2曲だけ邦楽がセレクトされていますよね。

小田和正さんはルーツと言えるかもしれないです。昔よく聴いていた曲ですし、僕が一番最初に自分のお金で買ったアルバム小田和正さんなんです。

ーー初めて買ったアルバム想い出深いですよね。Vaundyさんが思う小田和正さんの魅力はどこにありますか?

声とメロディだと思います。僕はジャンルごとに声を変えるタイプなのでまた違うのですが、小田和正さんは声が本当に素晴らしくて、別の人の曲を歌っても自分の歌になる。それはかなり凄いことだと思っています。

ーーVaundyさんが曲によって声色を変えるのは、昔から意識されていることなのでしょうか。

動画サイトの歌い手をやっていた時に得たものですね。歌い手ってボカロPさんが作る音楽に対応しなきゃいけないんです。自分の声色をどこまでその曲にあった声にできるかを意識して歌っているうちに身につきました。

憧れはずっと「世界一になった僕自身」

Vaundy

Vaundy

ーー色んな声色が聴こえて来るのはリスナー側としてもすごい楽しませてもらえるし、驚きもあるVaundyさんの大きな魅力です。あと魅力といえばもう一つ、口ずさみやすいフレーズが多くありますよね。

そこは大事にしています。1回聴いて「好きじゃないな」と思っても、3時間ぐらい経つと歌っちゃうメロディーを意識していて。自分が歌って気持ちいい音楽じゃなく、自分と周りが歌ってて気持ちいい音楽を作ろうという意識はしています。

ーーアルバムを聴く度に口ずさんでるフレーズが増えてたりするんですが、それはVaundyさんの手のひらで転がされているということですね。これから先も転がしてください(笑)

任せてください。転がします(笑)

ーー先日20歳になりましたが、どんな20代を送りたいですか?

人と何かを作るという事にどんどん馴れていきたいと思っているんです。音楽をやってると僕の場合一人で作る時間がすごく多くなっちゃうんですけど、人とクリエイティブなことをもっとやってみたいので、これからは勉強して服を作りたいとか色々思っています。

ーー他の人のアイデアが加わることで、どんなものが生まれるんだろうという好奇心はあります。

そうですね。MVを作ってもらうときも、今は監督の感覚というか、思った通りに作って欲しいと言っているんです。そこの化学反応みたいなものもすごく好きなんですけど、やっぱり人と何かを作る時に一番大事なのは、その知識を自分も持っておくことだと思っていて。だからいろんなことを勉強して、理論的に自分が理解した上で人と一緒に作った方がいいものができると思っています。

ーーここから先めちゃくちゃ楽しみです。最後に、憧れている人はどんな人ですか?

昔から思っているんですが、僕は自分の中にいる最強のアーティスト「Vaundy」という存在に憧れて、そこを目指しているんです。具体的に「〇〇さんです」と決めてしまうとそこまでしか行けないじゃないですか。憧れはずっと「世界一になった僕自身」なんです。

ーー名言いただきました! 世界一になったVaundyを私達にも見せてください。本日はありがとうございました

取材=内田絢子(FM802) 文=城本悠太

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