韓国のケーブルテレビチャンネルtvNが制作し、同局の最高視聴率を塗り替えた話題のドラマ「愛の不時着」が、日本ではNetflixで2月から配信中。(※以下、ネタバレを含みます)

【写真を見る】美しすぎる…清楚で小動物のような黒目がちの瞳のソン・イェジン

韓国の女性が事故で北朝鮮に行ってしまい、そこでイケメンの兵士にかくまわれ彼と恋に落ちるという画期的なストーリーを展開し、日本でも視聴ランキングトップなるほどの人気を獲得している。その面白さの理由は? 筆者が感じた、ドラマとして優れている5つの要素について分析した。

■ 1)超えてはいけない国境を超えるという斬新な設定が刺激的

韓国の財閥令嬢ユン・セリ(ソン・イェジン)がパラグライダーに乗っている最中、突風に巻き上げられ、北緯38度線を超えて北朝鮮へ! 不時着した森の中でイケメンすぎる将校リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)に発見され、彼が国境近くの村に借りている家に匿ってもらいながら、帰国のチャンスをうがかう。

このドラマの肝は、まずこのとんでもないストーリーにある。誰もが「どうなっちゃうの? 彼女は無事に韓国に戻れるの?」と心配せずにはいられない設定で、セリが船で密航しようとしたり北の女性になりすましたりして、なんとか帰国を果たそうとする展開にハラハラドキドキ。

ふだん、私たちがニュースで見る現実とリンクしたスリル感は、他のドラマにはないものだ。密入国した人間は軍部に見つかったら命の保証はなく、もちろんかくまった人間も終わり。そのシビアさもリアルに描かれる。中盤、セリがついに国境線に足を踏み入れるところでピークに達する緊張感が、本作の最大の魅力だ。

■ 2)韓流ラブストーリーの王道を行く展開を楽しめる

物語設定は斬新だが、ヒロインのセリが財閥令嬢、恋のお相手ジョンヒョクはモムチャン(筋肉質の体を持つ男)なイケメンという人物設定は、いかにも韓流あるある。しかも、ジョンヒョクは北の“上級国民”であり、まるで「ロミオとジュリエット」のような南北のセレブ同士による禁断のラブストーリーになっている。

さらに、ジョンヒョクの美しい婚約者が出てきて、ジョンヒョクがセリと一緒にいるところにバッタリ。当然、韓流あるあるで、婚約者は嫉妬の炎を燃やしまくり、2人の恋を妨害。劇中で北朝鮮兵士が夢中になっている「天国の階段」などの韓国ドラマで何度も見てきた熾烈な三角関係が展開する。

また、韓流と言えば復讐劇だがその要素もちゃんと押さえてあり、さらに「韓流と言えば、最後に誰か死んでしまうの?」という嫌な予感もバッチリ当たってしまう!?

■ 3)ソン・イェジン&ヒョンビンの爆イケっぷりにうっとり

セリ役のソン・イェジンは日本では映画「私の頭の中の消しゴム」とドラマ「夏の香り」でおなじみ。色白で清楚感のあるルックスで、小動物のような黒目がちの瞳が印象的だ。それゆえに「私の頭の中のー」のようにけなげな役がハマるのだが、セリは複雑な家庭に育ったお嬢様で、他人に心を開かず高慢なところがあり、野心的なビジネスウーマン。一代で人気のファッション・コスメブランドを築き上げた。

そんなセリが北の闇市で密売されていた自社のコスメ商品を見かけ、庶民の奥様方にそのコンセプトを見事なプレゼン調トークで説明する様子が面白い。ぜいたくができない状況でジョンヒョクにシャンプーコーヒーを要求する態度はわがままにも見えるが、彼を愛するようになってからが、けなげなソン・イェジンの本領発揮。ついに彼女の素性がバレてしまい、電話でジョンヒョクに「サランヘヨ(愛している)」と伝える涙の表情が美しく、泣かせる。

一方、ジョンヒョクは辺境の中隊長で部下たちからは慕われているが、出世するタイプとは見なされていない。しかし、実はある高官の息子であり、首都・平壌にある実家は大豪邸。兵役中に事故死した兄の無念を晴らすという復讐心を胸に抱き、上司のチョ・チョルガン少佐(オ・マンソク)の不正を疑っている。

能ある鷹は爪を隠すタイプで一見ぼーっとしているようにも見えるジョンヒョクが、いざとなると、かっこいいアクションで敵を次々に殴り倒したり、バイクに乗りながら相手を狙撃したりするギャップに、みんなやられてしまう。身長185cmでスポーツ万能のヒョンビンを活かしきる設定が憎い。一転、ラブシーンでは、セリに「そんな目で見ないで」と言わせるほどストレートな愛情を浮かべる顔は、胸キュン必至。

■ 4)「パラサイト」のお母さんも! 個性豊かなサブキャラクターの魅力

魅力的なのは主役の男女だけではない。セリの兄から大金をまきあげ北朝鮮に逃げてきた怪しげな男ク・スンジョン(キム・ジョンヒョン)と、ジョンヒョクの美しい婚約者ソ・ダン(ソ・ジヘ)も、準主役として2人だけのシーンでも十分楽しめるほどの存在感を発揮する。北のセレブと南の詐欺師。どう転んでも恋に落ち結ばれることなんてなさそうな組み合わせだが、計算された展開でそれを結びつけていく脚本が見事だ。ツンデレを絵に描いたようなダンのキャラクターもかわいらしく、演じたソ・ジヘはこれから日本でも人気が出そう。

また、ダンの母親を演じるベテラン女優チャン・ヘジンにも注目。実はアカデミー賞受賞作「パラサイト 半地下の家族」でソン・ガンホの妻、つまり半地下で暮らす貧しい一家の母親を演じた人で、「愛の不時着」では見栄っ張りで押しの強すぎる母親をオーバーアクション気味に演じ、笑わせてくれる。その母親の弟を演じるのも「パラサイト」組の俳優パク・ミョンフンだ。他に、セリやジョンヒョクの両親、ジョンヒョクを慕う4人の部下、ジョンヒョクが暮らす村のおしゃべり好きな奥様がたなど、どの人物も印象的。モブキャラに至るまで個性豊かに描き分けられている。

■ 5)アクションシーンや海外ロケの本気度に満足 

北朝鮮が舞台となるこのドラマ。その風景はほとんどの人にとって未知の世界だが、本作では韓国内での撮影やモンゴルなどの海外ロケによって、その世界観を構築。まるでライトノベルで流行する“転生もの”のように、セリと共にひと昔前のアナログな生活を疑似体験できる。

中でも、セリとジョンヒョクの乗った列車が停電で10時間も停まってしまい2人が草原で夜を明かすくだりは、この舞台設定ならではのロマンティックなシーンに。国境近くで繰り広げられるトラックオートバイを使ったアクションも映画並みの迫力で、クオリティが高い。

毎回差し込まれるスイスロケの映像もスケール感をアップさせている。美しい山と湖に囲まれたその土地は、かつてセリが旅行し、ジョンヒョクが留学していたという設定で、そこで2人の運命は交錯していた。そんな奇跡が伏線としていくつも散りばめられているので、さすがに「遠い国でそんな偶然、何度もある?」とツッコミも入れたくなるけれど、北朝鮮の人も比較的自由に滞在できる永世中立国は、このドラマにとって欠かせない舞台になっている。

制作会社は映画「パラサイト 半地下の家族」のCJエンタテインメントと同じ資本のスタジオドラゴン。「国境を超えた愛」というこれまでなかった大胆な設定を、コストをかけてきっちりと描ききり、韓流ファンもそうでない層を満足させた手腕はお見事というしかない。2020年、必見の一作だ。(ザテレビジョン・小田慶子)

草原で夜を明かす2人が最高にロマンティック!