株式会社ハート出版(本社:東京都豊島区池袋 代表取締役:日高裕明)は、林房雄の歴史評論の傑作『神武天皇実在論』を復刻。著者の林房雄は、日本の近代史を黒船前夜から開戦へといたる百年のパースペクティブで論じた『大東亜戦争肯定論』を『中央公論』に連載し、刊行と同時に論壇は蜂の巣をつつく大騒ぎとなる。本書はそのあとの、まだ論争の痕跡が残る頃に挑んだ作品で、本書もまた凄まじい限りの賛否両論があった作品である。


林房雄の歴史評論の傑作が本書『神武天皇実在論』である。
近年、日本でも考古学が発展し、従来謎とされてきた事柄が次々と解き明かされている。縄文遺跡の典型のひとつ、青森県三内丸山遺跡では戦争の傷をもった遺骨がでていない。じつに平和な集落で豊かな自然環境と食糧に恵まれ、泰平が継続されていた。いまから五千五百年前のことである。
林房雄の直感は、この頃に日本では天皇の起源があると推定した。
三内丸山の中心部に復元された大集合住宅の主柱は高さが三十四メートルあったと推測されているが、もしそうなら今日の摩天楼に匹敵する建築技術が縄文中期には存在していたことになる。縄文は想像を絶するほどの高度文明だった。
したがって本書の基底に流れる歴史観は、まず天皇の起源は縄文中期であり、神武天皇は実在したばかりか、その前に何代もの皇統があったとする。こうした林房雄の本能的仮説の正しさが近年の考古学地質学、生物学の発達によって証明されるようになった。縄文時代の謎の解明が飛躍的に進んでいるのである。

縄文中期から弥生時代の初期にかけて、太陽信仰の神話が誕生し、集落に長(おさ)がうまれ、地域集落の連合に「王」が生まれ、それが「大王」となるのが天皇制の原点だから神武天皇以前に、天皇の原型である大王の存在が確実にあったことになる。
林房雄は本書『神武天皇実在論』でこう力説している。
「クニトコタチに始まる天神七代、アマテラスに始まる地神五代にウガヤフキアエズ朝五十一代を加えて、その平均在位期間を現代風に三十年と想定すれば、神武天皇以前に六十三代、千八百九十年の時間があり、それに神武天皇以後の二千五百年または二千年を加えれば、天皇の発生はちょうど縄文中期、その最盛期にあたることになる」

三内丸山遺蹟の規模は五百人前後だったと推定され、集落にはまとめ役の長がいて、春夏秋冬の季節に敏感であり、様々な作業を分担し合い、クリ拾い、小豆の栽培、狩猟、漁労はチームを組んだ。各々の分担が決められ、女たちは機織り、料理、壷つくり、食糧貯蔵の準備、そして交易に出かける斑も、丸木舟にのって遠く越後まで、黒曜石や翡翠を求めて旅した。
待機児童とか、老老介護、生涯独身、孤独死などとはほど遠い、理想的な助け合いコミュニティが存在し、平和が長く続いた。縄文時代の一万数千年間、日本では大規模な戦争はなく、その証しは集落跡から発見された人骨から、刀傷など戦争の傷跡はなく、障害者の人骨も出てきたため集落全体が福祉のシステムであって、面倒を見合っていたことが分かる。
農耕民族と狩猟民族の血で地を洗う戦闘はなかった。争いごとを好まない日本人のコアパーソナリティは、縄文中期の天皇の原型の誕生とともに深く根付いてきたのである。

本書の復活は、日本史の謎の究明にいどむ一方で、戦後の歪な偏向歴史教育の是正にも繋がり、様々な文脈において意義が深いと言える。

(巻末の宮崎正弘氏の解説を抜粋)


【書籍情報】
書名:神武天皇実在論
著者:林 房雄
解説:宮崎正弘
仕様:四六並製・240ページ
ISBN:978-4802400978
発売:2020.06.01
本体:1500円(税別)
発行:ハート出版
商品URL:http://www.810.co.jp/hon/ISBN978-4-8024-0097-8.html
記紀にもとづく天皇の系譜
富士古文書による神々の系譜
古事記による神々の系譜

【著者】林 房雄(はやし ふさお)
明治36(1903)年、大分県生まれ。東大法学部政治学科中退。プロレタリア文学運動で活躍したが、昭和11(1936)年、転向して『青年』、『西郷隆盛』などを発表。戦後の代表作に『息子の青春』、『文学的回想』など。また昭和39(1964)年に刊行した『大東亜戦争肯定論』は大きな反響を呼んだ。昭和50(1975)年、72歳で逝去。

配信元企業:株式会社ハート出版

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