
現代の戦いは超限戦と言われ、場所や手段を選ばない。
超限戦は中国の戦争観そのものである。いかなる限界も境界もなく、すべての文明の利器は戦争の手段になりうると見るのが、中国流戦争観の真骨頂である。
習近平総書記以下の中共独裁政権はいま、超限戦で米国の世界覇権に挑んでいる。
この挑戦に対し、米国のドナルド・トランプ政権もまた対中封じ込め総合戦略を発動し対決姿勢を露わにしている。
米中覇権争いは後戻りできないところにまで熾烈化しており、その中での日本の立ち位置もまた問われている。
米国の本格化した対中対決戦略
米中対決は価値観、体制の対立を根底にして、経済、貿易、金融、情報、技術など、あらゆる面で激化している。
米国は、鄧小平時代の改革開放以来、中国の経済成長を助ければ、いずれ中国は欧米型の民主化された自由で開放された体制に転換していくとみて、対中関与政策をとり、中国の米国内への投資や貿易関係の拡大、人の交流などを促進してきた。
しかし、中国民主化の期待は裏切られた。
例えば、2015年のバラク・オバマ大統領と習近平国家主席の首脳会談で、習近平主席が南シナ海の軍事化の意図はないと約束したにもかかわらず、中国はその後も南シナ海の軍事基地化を強引に推し進めた。
米国はオバマ政権末期頃から、中国の経済成長がむしろ中国の軍事力の増強近代化や監視社会の強化を促進し、共産党独裁を強化する結果になったことに気づいた。
トランプ政権は、関与政策を転換し、中国を最大の脅威とみて対中封じこめ政策を展開している。
トランプ政権は、2018年の『国家防衛戦略』において、「世界的な安全保障環境は、自由で開かれた国際秩序に対する挑戦と、長期にわたる戦略的な国家間の競争再来という特徴を持つ」との、関与政策の前提とは全く逆の国際情勢認識を示している。
さらにその認識の上に立ち、「米国の繁栄と安全にとり中心的な挑戦勢力」となり、「長期的な戦略的競争者」となるのは、『国家安全保障戦略』において「修正主義大国」と分類され、「権威主義的モデルに合わせて世界を形成しようと欲している中国とロシア」であると、明確に規定している。
中でも中国については、長期的に最大の脅威になりうる「戦略的競争者」とみて、対抗意識を露わにしている。
このような戦略方針に基づき、トランプ政権は、中国封じ込めのために、国力のあらゆる局面を動員した総合戦略を打ち出し、矢継ぎ早に実行に移している。
米国が中国株への投資を禁じたことに中国が強く反発している。
中国は2001年のWTO(世界貿易機関)加盟以降、米国など開放された自由に売買できる株式市場を利用し、企業買収、投資による支配、技術買取りなど一方的に受益してきた。
また、中国は米国に対する知的所有権侵害で3兆ドル、サイバー攻撃で3兆ドル、不公正貿易で2兆ドルの不当な利益を得てきたと、トランプ政権はみている。今回の措置を招いたのは中国の利己的政策と言える。
香港問題により米中対決にはさらに拍車がかかった。
中国では米中貿易戦争とコロナ禍により、既に経済は落ち込んでいた。そこに今回の香港の民主派弾圧をめぐるトランプ政権の対中経済制裁が発動され、中国経済はかつてない破局に直面している。
中国の民間証券会社の調査員によると、農村移民を含め7000万人(この数字は当局により即日削除され調査員は解雇された)が既に失業し、米国の専門家によると、失業率は現在すでに20%、今後は約30%に達するとみられている。
中国当局は、景気刺激策をとろうにもGDP(国内総生産)の3倍にのぼる赤字と大量の失業者のため有効な対策を打つのは困難とみられる。
中国の国会に当たる全人代後の記者会見で、ナンバー2の李克強首相が、中国では約6億人の月収1000元(約1万5000円)程度の貧困層がいると表明している。
公式には中国の国民1人当たりのGDPは1万ドルに達したとされているが、中国の統計数字は誇大で信頼できず、極端な格差社会であることが暴露された。
これは2020年までに全面的な小康社会を建設し脱貧困を約束してきた習近平総書記の政策目標達成が、失敗に終わったことを意味している。
経済成長が実現できなくなれば、共産党独裁統治の正統性は失われ、今後独裁体制に対する不満が爆発し、全国規模の暴動に拡大し共産党独裁体制の崩壊に至るかもしれない。
米国も国内に分裂と格差を抱えているが、トランプ政権になり貧困率が低下している米国に比べ、ジニ係数0.6前後とされる極端な格差と、6億人の膨大な貧困層を抱える中国の内部矛盾は、米国よりもはるかに深刻である。
全国暴動の発火点になりうるのが、香港の民主派デモである。
そうである以上、今回、党中央が全人代で「香港国家安全法」を閉幕日の5月28日に可決させ、1984年の英中共同声明で2047年まで維持すると約束された一国二制度を、早くも形骸化させ独裁貫徹の挙に出たのも当然かもしれない。
同法は、国家転覆、テロ・分裂・スパイ行為、外国の干渉を防止し厳罰に処する条例の迅速な制定を、香港政庁に義務付けるものとみられている。
米国は、国務長官に一国二制度の検証を少なくとも年1回義務づける「香港人権・民主主義法」を制定している。米国は、中国への制裁を強め米中対立は決定的になるであろう。
技術戦争の面でも、英国の提唱により、ファーウェイに対抗してG7印豪韓で5Gを共同開発することになった。
また米商務省は、米国に由来する技術を使った半導体は、外国製であってもファーウェイへ輸出することを禁止した。
この禁輸強化措置は、半導体製造装置などで米国由来の技術を使う台湾の半導体メーカーTSMCからの輸出を封じる狙いがあるとみられる。TSMC側も米国に工場を建設することを決定した。
ファーウェイの5Gのための半導体供給は、韓国のサムソンと台湾のTSMCに依存してきたが、これで両社とも米国側に立つことになり、今後ファーウェイへの半導体供給は止まることになる。
これは5Gのみならず、中国の軍需産業にとっても手痛い打撃となるであろう。
超限戦を信奉する中共からみれば、パンデミックも有力な武器として利用できる。
米軍では空母4隻など4528人が感染し15人が死亡したと報じられている。米当局は即応性に問題はないとしているが、中国軍は、米軍の即応性が低下しているとみているのか、東シナ海、南シナ海などで活動を活発化させている。
中国は今年に入り、大規模防空演習を実施し、台湾、中朝国境のほか香港と尖閣列島の周辺、中印国境でも軍と準軍隊の活動を活発化させ、挑発行為を強めている。
また、今年8月にハワイ近海で行われる米海軍主催のリムパック(環太平洋合同演習)に対抗して、空母1~2隻を含む独自の大規模軍事演習を今年夏に南シナ海で計画していると報じられている。
これに対抗して米海軍も、コロナ禍で停泊していたセオドア・ルーズベルトを復帰させ、空母3隻を西太平洋に集結させている模様である。
トランプ政権はすでに、低出力核兵器を潜水艦に再展開し、中距離核ミサイルの発射試験にも、艦艇に搭載した高出力レーザー兵器による無人機の撃墜試験にも成功するなど、長期の戦略的競争者である中露を意識した、戦力の増強近代化に拍車をかけている。
トランプ政権は、中でも核戦力の増強近代化には特に力を入れている。
中国は、同条約の制約を受けることなく一方的に中距離核戦力を西太平洋やインド洋に向けて展開してきた。
その結果、今では中国は、米空母の接近を阻止し東・南シナ海などの沿岸海域への侵入を拒否できるミサイル配備態勢を構築している。
米国のINF全廃条約からの脱退も、このような中国に対抗することが主な狙いであった。
中国は核軍備管理交渉に応じる意向を否定しており、今後米中露の間で新たな核軍拡競争が起きる可能性が高まっている。
米中の東アジアでの軍事力対峙はかつてない規模に達し、互いに力の誇示に余念がない。正面衝突は当面ないとみられるが、双方とも一歩も引かない姿勢は明白であり、軍事対峙が西太平洋を焦点に今後も進展するとみられる。
香港、台湾、南北朝鮮と、日本周辺では明日にも武力弾圧、抵抗、米中軍事対峙という事態が起こりかねない状況である。
危機が起きれば、日本は最大の影響を受けるが、日本国内ではコロナ対策に追われ安全保障には余り関心が集まっていない。
コロナ禍と香港問題で米中対決決定的
コロナ禍による米国内での死者は約11万人に達した。米国は親中的だった民主党も含め中国共産党に対しては、本当に激怒している。
既に情報、経済では米中は戦争状態にあると言って過言ではない。今後は米中覇権争いが本格化し、世界は米中2ブロックに分断されるであろう。
コロナの発生源をめぐり、米中の情報戦が熾烈になっている。中国のメディアは総力を挙げてウイルスの発生源は中国ではなく米国だと反論している。
しかし問題は発生源ではなく、中国当局が、武漢でのヒト・ヒト感染の事実を隠蔽して虚偽の報告をし、武漢からの人の移動を止めず世界中にウイルスを拡散させたことにある。
その責任は明らかに習近平総書記以下の中国共産党指導部にあると言える。
欧米ではコロナ拡散に対する中国の責任を追及し訴訟が相次いで起こされている。その総額は100兆ドルを超えると言われているが、中国は責任を回避し支払いに応じる気配はない。
むしろ中国共産党は自らの責任を認めようとせず、米国に責任転嫁をしている。
逆に国内ではいち早く収束したと宣言して、世界中にマスク外交を展開し、救世主であるかのように振舞っている。
このような中国共産党の利己的かつ偽善的な姿勢は、その国際的信頼を失墜させた。
また宣伝工作に瞞着されてきた世界各国も、中国共産党独裁体制の事実隠蔽と欺瞞の体質を知ることになった。今後、中国は世界から孤立し、米国の対中封じ込めが本格化するであろう。
香港国家安全法は今期全人代で成立し、米国は、一国二制度は崩壊したとし香港へのビザ、関税面などの優遇を廃止し対中経済制裁を強めている。中国は内政干渉と反発し、勢い付いた香港民主派の弾圧にいずれ出るであろう。
他方のトランプ大統領も大統領選挙を控えており、今では超党派の合意になっている対中強硬策では、安易な譲歩はできない状況にある。
予告通りトランプ大統領は、香港優遇措置をやめ中国と香港の当局者に制裁を課し中国人入国も停止しWHOから脱退すると表明した。
一国二制度を損なう組織と個人に制裁を科する香港自治法案の審議が米議会で進められている。国際銀行間取引の情報システムの利用禁止も含まれ、中国の国際金融取引を中止させる効力を持つとされている。
資本流出を招き中国の金融システムは崩壊し、中国はドルに依存しない通貨圏を創るしかなくなるだろう。
一国二制度が形骸化した香港からは、今後200万人以上が脱出し金融センターの機能は失われるとみられている。
香港国家安全法制定に伴い香港では今後民主派の抵抗が強まるであろう。
香港の民主派デモを当局が力で弾圧することがあれば、米国は軍事プレゼンス強化も含めた強行措置をとるとみられる。
ただし、米国の介入には限界がある。
本質的に内政問題である香港に対する中共の武力鎮圧に米国は直接介入できず、対中金融制裁、香港優遇措置停止にとどまるとみられる。
香港は1997年に中国に返還された時点で、英国の主権下にある民主的で自由な体制から中国の共産党独裁体制下に組み込まれた。
北京の共産党中央から軍と警察を送り込まれ、支配下に置かれている現状では、民衆が抵抗運動をしても、結局は仮借のない力の支配に屈するしかない。
このことは、新疆ウイグルやチベットでも起きたことであり、香港も共産党独裁の力の支配に屈することになるとみられる。
米中戦争のリスクを犯してまで、米軍が香港のために軍事介入に踏み切ることはないであろう。
次の防衛ラインとして米国が現在力を入れているのが、台湾である。
米国は台湾の潜水艦建造支援を決定した。米国は台湾防衛を貫くとみられる。
他方の香港は、大陸に取り込まれることになり、数百万人の香港市民が、台湾や英国、米国などに逃げ出すことになるであろう。
米中覇権争いのカギを握る金融
米中覇権争いの鍵を握るのは金融である。
米国は中国の株に1.9兆ドルを投資し中国は1.1兆ドルの米国債を保有している。しかし、米国のトランプ政権は、マイク・ペンス副大統領の演説でも明示されているように、経済利益より安全保障を優先する方針に転換した。
香港国家安全法制定が全人代で決議されればトランプ大統領は「強烈に反応する」と明言していた。
場合により、中国の在米資産や米国債凍結という強硬手段もとられるかもしれない。中国共産党政権側も同様の報復措置を取り、米中金融戦争の様相になるとみられる。
その際に注目されるのが、香港の金融ハブとして果たしてきた地位の行く末である。
中国への外資の直接投資の3分の2は香港経由である。米国が、香港の特別な地位を認めなくなり、元ドル交換を封じれば、元は暴落する。
また中国軍需産業の対米投資および米国からの投資・技術移転が禁じられれば、中国経済は米国からの資本と技術情報を絶たれ、先端両用技術の研究開発や製造は窮境に立たされるであろう。
元暴落に伴い、輸入品の国内物価が高騰し、豚肉や大豆製品が高騰するなど庶民生活を直撃するとみられる。失業者もあふれ、民衆の不満も鬱積する。暴動が多発し全国規模に拡大すれば、共産党独裁体制も揺るがしかねない。
このような危機を乗り切るためには、早急に米国に替わる輸出入市場を開拓しなければならないが、同時に元決済に応じてくれる国でなければならなない。
そのため中国は、国際的な元通貨圏を構築する必要に迫られることになる。
中国経済がドル圏から追われても、取引に応じてくれそうな反米国は、露、イラン、シリアなど多数存在する。
中国は、これら独裁的国家に要求度が高くかつ利益の大きい先端兵器や両用品、港湾などのインフラ、原子炉等を輸出し、仮想通貨も活用しながら、独自の通貨圏と通商圏を創ることを追求することになるとみられる。
そのための発展戦略が「一帯一路」であり、軍事的覇権拡大の意図を秘めつつ、ユーラシア大陸から各大陸へと中国の支配する通貨・通商圏が拡大することになるかもしれない。
ただし、反米国が中国の経済・金融支配を受け入れるとは限らない。
中国の元圏拡大と一帯一路構想が中国の思惑通りに進むか否かが、今後の中国の覇権の維持・拡大を左右することになるであろう。
いずれにしても、中国の支配力が拡大した陣営内では軍事化が進み、中国モデルを真似た、政治社会体制の独裁主義と監視社会の強化、軍事偏重経済が進展することになるであろう。
このような、ユーラシアを中心とした独裁的国家群の対中連帯の可能性を考慮すれば、欧米中心の民主・自由陣営は、ソ連と異なり、簡単に対中封じ込めで中国共産党の独裁体制に勝てると楽観はできない。
活発化する中国の非公然破壊活動
中国は米国に対する非公然破壊活動も発動している。
極左集団ANTIFAが扇動する暴動が渋谷や全米25都市で起きた。
クルド人や黒人等抑圧されてきた人種、民族の人権を盾に、警察の取締りをビデオに撮り、多言語で拡散して他地域から仲間を集め暴動を煽るという手法は、共通している。
このことは暴動が偶発的なものではなく、組織的に世界規模で計画準備されたものであることを示している。
米国サンタモニカの警察は暴動現場で3人の中国人を逮捕した。彼らは中国領事館から、デモに参加し黒人の暴力と破壊を煽動し、愛国主義精神を発揚して党と国家のため新たな貢献をするよう指示されたと言っている。
また真偽のほどは明らかではないが、当時の領事館員とのやり取りを示すビデオもSNSで流されている。
中国外務省は機を失することなく、全米での暴動を反米宣伝に利用してきた。
これらの手法は、非公然破壊活動によく使われる手口であり、中国の工作機関が関与していたことは間違いないであろう。
また、その狙いについても、単に香港での民主派弾圧から中国国内や世界の目を逸らすためだけにはとどまらない。
トランプ大統領の強硬策が生んだ国家の分裂、金持ち優遇政策による格差拡大、コロナ対策の失敗による失業増大などの諸問題が、黒人貧困層にしわ寄せされたために暴動が広がったとの、反トランプ勢力の主張を後押しすることにもなる。
本来の目的は、トランプ再選阻止にあるとみるべきであろう。
人種差別問題という米国社会の根深い亀裂を突く、今回の黒人暴動は全米に広がりトランプ政権を苦境に追いやっている。
コロナ禍に伴う不況と人種対立は、対応を誤るとトランプ再選を阻むことになるかもしれない。
このような中国の非公然工作に米国は警戒を強めている。
米国は今年6月1日から米国に滞在する中国人留学生など36万人のうち3000~4000人を国外退去させ、今後は中国人留学生の受け入れも再入国もさせないとの措置を施行している。
米国の対中制裁はネット空間にも及び、中国の対外ネットワークも遮断される。
中国はかねて米国が支配する既存のネット空間に替わる独自のインターネット網を創ることを主張してきた。
貿易、金融に続き世界のネット空間も二分され、中国は5Gによる独自の「デジタル一帯一路」の世界展開を目指すであろう。
世界の都市部を覆う民生用GPSの7割はすでに中国製になっている。技術覇権問題と連動し、ネット空間の支配権の争奪も激化するであろう。
日本のとるべき戦略
5月に全人代が開催されたが、中国は中国共産党の独裁体制であり、共産党大会が実質的な国家権力の最高機関であり、全人代は追認セレモニーに過ぎず憲法より党規約が上位にある。
人民解放軍も中国共産党の私兵であり、治安機関も司法も行政も言論機関もすべてを党が支配し指導している。
中国は、日本とは政治・経済体制も価値観も全く異なり、自由も民主主義も法治も根差していない一党独裁国家である。
中国の対外姿勢も、力を背景とする露骨な覇権拡大を目指し、徹底した自国中心主義であり、国際協調の余地はない。
例えば、中国は、コロナ対策で対中非難を強める豪からの牛肉の輸入を禁止した。弱い者いじめは中国共産党の常套手段である。
中国は豪の反中姿勢に懲罰を加えるとともに、南太平洋への進出を強め日米豪の連携を断つための外交圧力として利用しようとしている。
覇権追求欲と経済利益だけの唯物主義が支配する中国に対し、日本は毅然とした姿勢をとるべきである。
中国経済の落ち込みで日本は大きな打撃を受けると言われているが、上に述べたように、中国経済はかつてない苦境にあり、中国の経済成長への期待は過去のものになっている。
脱中国が日本のとるべき道であり、親共親中は独裁に屈し世界から孤立する道である。
尖閣周辺の中国の活動はコロナ禍の中で強まっている。
海警は武装警察に組み込まれ中央軍事委の直接指揮を受けており、日本と違い即応性が高く武装力が強化されており、一瞬の油断もできない。
香港での弾圧が強まり、多数の香港市民が亡命した場合、中国は居留民保護態勢の弱体な日本の、在中企業に圧力を加え、尖閣占領も狙ってくるであろう。
すでに尖閣諸島周辺の接続水域には、連続して2カ月以上連日中国の公船が侵入し、4回以上領海侵犯も起きている。
さらに日本の領海内で日本の漁船を2時間以上にわたり追尾するという事態まで生じている。
この追尾行動は、日本領海内にまで尖閣諸島周辺では中国の司法権が及んでいることを誇示し、実効支配の実績を創るための工作と言える。
将来の尖閣侵略のための準備行動とも言える、撃沈されても当然の挑発行為である。
日本の過度に抑制的な国境警備にかかる対処行動基準を見直し、断固たる措置をとれるようにすべきである。
台湾沿岸警備隊は今年6月、領海に侵入した中国船を拿捕している。このような決意と行動なしに、国境離島と周辺領海を守ることはできない。
また中国の経済破綻と混乱は不可避である。
危機はしばしば複合して起こる。コロナ禍対策のみではなく、尖閣諸島での侵略や挑発への即時対処、近隣国の混乱に伴う法人・日本企業の保護、帰国、大量難民の受け入れの態勢整備など、国を挙げた早急な危機対応体制の整備が必要である。
香港問題を契機とする米国の対中金融経済制裁、米中軍事力対峙は長期化するとみられる。
事態打開のため、中国が、米大統領選挙とコロナ対応、中東不安定化による米軍の即応性低下などの隙をつき、今夏、周辺のいずれかの正面で局地の軍事的勝利を得て国内外で威信を高めようとする可能性もある。
日本は自らこれらの危機に対応しなければならず、独力対処の態勢を早急に整えねばならない。
今夏が米中対決の山になり、米軍牽制と原油価格吊り上げのためロシアとイランがペルシア湾で事を起こす可能性もある。
尖閣防衛、在中在香港に加え、在中東の邦人・企業保護、シーレーン防衛なども必要になるかもしれない。
政治は米国、経済は中国という虫の良い立場は維持できず維持すべきでもない。
米中覇権争いのなか世界は二分されるであろう。日本のとるべき選択は、米国と共に今の国際秩序を守ることにある。
中国共産党の独裁体制も彼らの価値観も、もはや統治の正統性を失っている。中国経済は破綻する可能性が高く、脱中国を急ぎ、かつ尖閣危機に備えるべきである。
しかし防衛態勢の現状は、実に危うい限りである。
人も弾薬・ミサイルも装備も足らず予備も備蓄も緊急生産能力も欠けている。
民間力を動員して活用する権限も能力も、民間防衛のシェルターもない。専守防衛なので信頼できる独自の打撃力もない。
できる限り早急に自立防衛体制を構築し、危機に備えねばならない。
米国との関係で、日本にとり望ましいのはトランプ氏再選である。
トランプ大統領は、中国の覇権を許さず、サプライチェーンを北米に戻し先端両用技術の再生を目指している。その政策は日本の国益にも適っている。
他方のバイデン氏は、中国から資金を得ており、中国人亡命者受入れを拒否した親中派である。
バイデン氏が大統領になれば、米国の軍事、外交力も弱まり、福祉偏重のバラマキ政策により米国経済も悪化するであろう。
安全保障上、台湾は日本にとり韓国より重要な国である。
台湾は中国の一部というのは歴史的にも国際法的にも虚偽宣伝に過ぎない。
大陸との国交回復に際し台湾と国交断絶し中共の台湾征服の野望に妥協した日米政府の誤判断は、台湾独立要求の高まりと中共の武力介入という結果を招くことになるかもしれない。
中国共産党は今年2020年を台湾統一の目標年として、人民解放軍の戦力整備をしてきた。このような危機の中では、トランプ政権の台湾支援政策と連携し、台湾との連携を安全保障面でも強めるべきである。
国内法制面では、緊急事態条項を憲法に盛り込むべきである。
今回のコロナ危機でもそうだったが、新たな危機が起こるたびに、犠牲が出てから特措法でその場しのぎをすることを日本は繰り返してきた。
その結果多数の国民が犠牲になってきた。緊急事態条項導入反対者はその事実を直視すべきであろう。
世界の憲法では緊急時の国家社会の存続のために、私権制限を伴う緊急事態条項を規定するのは当然となっており、緊急事態の規定がないのは日本国憲法だけである。
また、想定外の危機にも柔軟に即時に対応できるよう、緊急事態は限定せず包括的な内容に止めておくべきである。
日本国内での非公然破壊活動も既に行われている。
極左集団ANTIFAが扇動する暴動が渋谷でも起きている。クルド人など抑圧されてきた民族の人権を盾に警察権力の横暴を訴え、中共の香港デモ弾圧から目を逸らすための中共の撹乱工作である。
日本には中国人留学生は約11万人いるが、中国籍の公民は国外にいても諜報活動等祖国の安全と利益を擁護する義務を負っており、学者、研究者、ジャーナリスト、企業人なども同様である。
このような非公然活動や諜報活動を封じ、社会の健全性を保ち、国益と国民を保護するためには、スパイ防止法と秘密保護法が必要である。
以上を総合すれば、日本は世界が二分される中、自由と民主、自由経済の陣営に立つことを明確にしつつも、安全保障と経済面での他国依存からの脱却を進め、歴史と伝統の価値を再認識し、自信と誇りを持って、ボスとコロナの時代に、中共独裁政権に対決する第一線国家として毅然と生きぬくことを基本戦略とすべきである。
コロナショックによる変化としては、グローバリズムの破綻、国家と国境の価値の再認識、共産中国の欺瞞隠蔽体質と野心、米中覇権対立の不可避、国連とWHOなど国際機関の腐敗と無力、日本の危機管理体制の不備と現憲法の危険性、中国へのサプライチェーン依存の危険性、自律分散ネット社会到来、成長神話崩壊などが挙げられるであろう。
このような変化は日本にとり、新たなチャンスの時代が到来するとも言える。
毅然とした自立防衛・経済体制の構築、および緊急事態条項制定などの憲法改正、スパイ防止法と秘密保護法の制定も含めた、大胆な国内法制変革の断行こそ、日本がポストコロナ時代に生き残る道である。
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