WWF(世界自然保護基金)は、本日、報告書『COVID 19: urgent call to protect people and nature (COVID 19:人と自然を守るための緊急の呼びかけ)』を公表し、次のパンデミックを防ぐために必要な対応を提言しました。

報告書の中で動物由来感染症の主因として指摘するのは、森林破壊や土地利用の変化により生じた新たな病原体との接触、森林破壊の原因となる非持続可能な農業や畜産の拡大、そして病原体を拡散させる野生生物の取引です。

こうしたことを背景に、次の動物由来感染症パンデミックを防ぐ上で必要な、緊急に必要とされる行動を、国際社会、企業、市民社会組織、個人に対して呼びかけました。

■報告書『COVID 19: urgent call to protect people and nature (COVID 19:人と自然を守るための緊急の呼びかけ)』(英文)
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20200616covid1902.pdf
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1)WWFが報告書『COVID 19: urgent call to protect people and nature (COVID 19:人と自然を守るための緊急の呼びかけ)』を公表。次のパンデミックを防ぐために必要な対応を提言した。
2)その趣旨として、今後のパンデミックを防ぐ上で、感染症を拡散させるおそれのある野生生物の取引と消費を抑制すること、森林破壊を防ぎ土地利用の転換を抑制すること、そして、持続可能な食糧の生産と消費が可能な社会に移行する必要を指摘。
3)また、環境や人間、動物の健康を、一つの健康と考える「ワンヘルス」アプローチの視点が重要。
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スイス・グラン発】
WWFは、新しい報告書『COVID 19: urgent call to protect people and nature (COVID 19:人と自然を守るための緊急の呼びかけ)』を発表し、次の動物由来感染症(=人畜共通感染症)のパンデミックを防ぐ上で必要な、緊急に必要とされる行動を、国際社会、企業、市民社会組織、個人に対して呼びかけました。

WWFが報告書の中で動物由来感染症の主因として指摘するのは、森林破壊や土地利用の変化により生じた新たな病原体との接触、森林破壊の原因となる非持続可能な農業や畜産の拡大、そして病原体を拡散させる野生生物の取引です。



1990年以降、世界では178万平方キロの森が失われ、現在も約10万平方キロの森林が、農地や牧草地などに転換されています。政権が変わり、開発優先の姿勢が強まったブラジルでは、4月の森林減少率が前年比で64%も増加しました。

また、検疫をすり抜け、違法に行なわれる野生動物の密輸も後を絶ちません。

このような原因により引き起こされるパンデミックのリスクは、「人類への深刻な脅威」として、10年以上前から世界経済フォーラム(WEF)の指導者や科学者たちにより何度も発せられてきた危機でもあります。

感染症の専門家によれば、人の感染症のうち、実に6割が動物由来とされています。

また、現時点では確実ではないにせよ、新型コロナウイルス感染症COVID-19)も、こうした動物由来感染症の一つと考えられています。

発表にあたり、WWFインターナショナルの事務局長、マルコ・ランベルティーニは、次のように述べました。
「自然破壊と人間の健康とがつながっていていることを早急に認識しなければ、遠からず次のパンデミックに見舞われることになるでしょう。大きなリスクを抱える野生生物の取引を抑制し、森林破壊と土地利用の転換をやめ、持続可能な食糧生産に移行すれば、このリスクは抑えられ、生物多様性の損失や気候変動などにも対処できることになります」

また、WWFジャパン自然保護室シニアダイレクターの東梅貞義は、この問題が日本とも深くかかわっている点を指摘します。
「日本が輸入する木材や紙、パーム油などの原料や産品の生産が、海外の深刻な森林破壊につながっているケースがあります。また日本では、海外の珍しい野生動物を「エキゾチックペット」として数多く輸入し、販売していますが、こうした動物の取引や飼育の管理体制は、十分ではありません。密輸例も報告されており、これらの動物と共に病原体が持ち込まれてしまうリスクは十分にあるのです。野生生物を絶滅から守り、生物多様性を保全する取り組みは、これからは私たち自身の社会や、人間の健康を守っていく上からも、より重要な取り組みとなるでしょう」

WWFは、自然破壊につながる行動を変え、健康、福祉、生活を守る、人と自然の「新しい関係」(a New Deal for Nature and People)を提唱し、同じ環境を共有する人間と動物の健康を、一つのものとする考えである「ワンヘルス」というアプローチを支持します。

そして、2020年9月の国連生物多様性サミットに向け、この観点を野生生物の利用や開発にかかわる政策、ビジネスの意思決定に組み込むと共に、緊急の行動をとることを求めます。

【資料】 WWFの呼びかけ(抜粋)
<各国政府に対する呼びかけ>
●リスクの高い野生生物取引を停止し、違法な野生生物取引なくすための取締りを強化すること。
●森林破壊をくいとめ、紙や木材、パーム油などの農産物の生産が、土地利用の転換を引き起こさないようにする法律を整備し、政策を実行すること。
●世界の生物多様性保全に向けた、2020年以降の新しい、より意欲的な目標に合意し、そのための適切な資金を提供すること。
●野生生物と土地利用の転換を決定する際に、ワンヘルス・アプローチ(同じ環境を共有する、人間と動物の健康を、一つのものとする考え)を組み込むこと。
●人と自然の新たな関係を結び直し、生物多様性の減少を食い止め、人類益と地球益のために、自然を回復基調へと導くことが実現できるように、次の3つの2030年目標に国際合意すること
1)自然生態系を保護し回復させる目標
2)生物種と生物多様性を緊急保護する目標
3)生産と消費のフットプリント(環境負荷)を半減する目標

<企業と業界に対する呼びかけ>
●現状および新型コロナウイルスによる危機の収束後、あらゆる自主的な環境対策を実施し、強化すること。
持続可能な生産を促進すること。製品や原料の供給元までさかのぼれるトレーサビリティを確保し、消費者に持可能な食生活の選択を促すこと。食品サプライチェーンで生じる環境フットプリントの削減につながる、信頼のあるサービスを提供すること。
●すべてのビジネスおよび資金調達の決定にあたり、特に世界的な健康にとって脅威となるリスクへの対応として、ワンヘルス・アプローチを組み入れること。

<市民社会組織に対する呼びかけ>
●危機の影響を直接受けている、脆弱な地域社会とそれを取り巻く環境の改善をサポートし、その人々が新型コロナウイルスからの復興活動に、適切に参加できるようにすること。

<市民に対する呼びかけ>
●政府との協力のもと、自然と人のための「新たな関係」、すなわち、自然環境を危機に追い込んでいる現代の人の行動を変え、人間の健康、福祉、生活を守る新たな進路を目指す約束をすること。そのために生態系を保全し、気候変動(地球温暖化)への取り組みを強化すること。
●暮らしの中で、より持続可能な選択を行ない、食生活と消費習慣を変えること。

■報告書『COVID 19: urgent call to protect people and nature (COVID 19:人と自然を守るための緊急の呼びかけ)』はこちら
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20200616covid1902.pdf(英文)
ウィズ/ポストコロナ時代を見据えたWWFジャパンの見解はこちら(コロナ関連WWF基本情報)
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4333.html

配信元企業:WWFジャパン

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