「麻雀で チョンボとなった 自民党

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・・・というのが、これから繰り広げられる一大捕物帖のコアでしょう。

 河井案里・現参議院議員の選挙参謀を務めた公設秘書が、広島地方裁判所から懲役刑の有罪判決を受けました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200616/k10012472221000.html

 禁錮以上の刑が確定した場合、検察は連座制適用を求める行政訴訟を起こしますので、河井案里議員の当選は無効になるでしょう。

 そうなれば溝手顕正元議員の6選が現実のものとなるでしょう。因果なものです。

 また、不正に支払われた選挙運動員への報酬額は「夫の河井克行・前法務大臣の意向を確認しながら決定」されたことを裁判所が認めています。

 河井克行・前法務大臣ならびに、妻の河井案里「前(になりつつある)」参院議員、夫妻への刑事責任追及は、いまや不可避と見られます。

 ここで問題になるのは、河合夫婦や事務所の銀行口座に、それと思しい現金の出入りがなく、自民党本部から提供された1億5000万円という常識を外れた巨額の資金が、これらに用いられたとみられていることです。

 捜査当局としてはカネの流れの解明が必須となっている。

 前代未聞の自民党本部の強制捜査(https://news.yahoo.co.jp/articles/b478869c5ac3b87d662e3c06fa6db8a057f74d55)が現実のカレンダーに乗った。

 誰もが指摘するのは、「政権の守護神」黒川弘務・前東京高等検察庁検事長の「マージャンチョンボ」による退場でしょう。

 次期検事総長のもとで、一連の問題は徹底して捜査のメスが入れられるでしょうし、またそうでなければなりません。

 ここで改めて気づくべきポイントがあります。それは「守護神」が実は2人いたという制度的な事実です。

 一人は、法務検察側から政権の不正という臭いものに蓋をする次官相当の「守護神」。

 しかし、もう一人は、その上に形式的に置かれた政権の臭いものに被せられる「蓋」に、気がつく必要があります。

「法務大臣」

 この制度をもう改めるべき時期が来ている。

 かつて大蔵省が財務省に改組解体されたのと同様、現在の「法務省」制度を、独立検察を中心に改め、内閣総理大臣の犯罪などをバシバシと裁くことができる「もはや戦後ではない」司法検察制度への脱却の必要性が今回の事態で如実になっている。

 時系列でみてみましょう。

仁義なき戦い「広島代理戦争」の時系列

 現在、捜査が進んでいる「河井案里」候補が出馬した「参院選」は「第25回参議院議員通常選挙」で2019年7月4日に公示され7月21日に投票が行われたものです。

 これに先立つ2019年2月19日 自民党政調会長で広島1区選出の代議士でもある岸田文雄氏は、広島選挙区で公認していた岸田派ですでに5選のベテラン、溝手顕正に加えて「2人目の擁立」を選対委員長甘利明から打診されました。

3月2日:「河井案里」擁立案が浮上

3月13日:正式に「河井案里」が2人目の候補に決定します。

 こののち、党本部は岸田派の溝手候補には1500万円、2番手だったはずの河井案里候補には1億5000万円という破格の選挙活動資金を振り込みました。

 河井案里候補のターゲットが最初から溝手候補であるのは明らかでした。

6月2日:決起集会、多くの有力者が東京から応援に広島へと詰めかけ、後述するように安倍事務所スタッフが広島に常駐、これは後々問題になってくるところでしょう。

結果的に 参院選広島1区は

トップ:森本真治(46)無所属=立憲民主・国民民主・社会民主・連合広島

329792

当選:河井案里(45)自民

295871

次点:溝手顕正(76)自民

270183

 となります。森本氏優位は揺るがない。そこに不正資金をつぎ込んでも、票など取って来られるわけがない。 

 最初から「必殺仕事人」案里「刺客」のターゲットは、溝手候補ただ一人に絞られていた。

 誰もが知る「仁義なき戦い」広島代理戦争だったわけです。

 誰の誰に対する代理かは措くとして、河井夫婦は将棋の駒でしかない。

 30年選手の自民党議員、溝手氏の票を奪って河井に「つけかえる」、保守票の内部移動に1億5000万円が使われたことがはっきり分かっています。

 広島でばら撒かれた莫大な資金は、自民党内での「勢力引き剥がし」にあった。

 広島代理戦争です。

 今回の選挙違反「実行犯」である河井克行氏のしっぽ切り(6月16日に夫婦そろって自民党離党の意向が報じられましたが)程度で済む話ではないでしょう。

 自民党本部のある千代田区平河町の意向として、これらの資金が広島県自民党の勢力地図塗り替えのためにばら撒かれたことがすでに万人の目に明らかなのです。

 捜査がどこまで進むのか、前代未聞の「自民党本部から特捜が大量の段ボール箱」という事態が待ち構えることになる。

 検察は一連の「黒川祭り」がありましたので、一切の値引きなしに「巨悪」退治に雪崩をうって突き進まざるを得ない。

 冒頭にも記した通り、河井案里氏が失職すると、自民党の不正資金もむなしく、溝手顕正氏が6選を果たし、永田町に返り咲きます。

 自民党広島県連は崩壊せざるを得ず、「2020年第2次広島代理戦争」で、さらに血の雨が降る(血の雨はやくざ映画だけにしていただきたいものです)・・・。

論功行賞としての「法務大臣」

 時系列に戻りましょう。

7月21日岸田派の溝手顕正氏落選、二階派の河井案里氏当選

9月11日:第4次安倍第2次改造内閣で河井克行氏が法務大臣として初入閣

 そして

10月31日:「週刊文春」の報道で法務大臣を辞任

 明けて2020年に入り

3月3日:広島地検は河井事務所の元秘書らを逮捕

5月13日:夫・克行氏が公職選挙法違反容疑で立件される方針発表

5月13日:黒川弘務・東京高検検事長は5月2度目の賭けマージャン

5月22日マージャンがリークされ「守護神」黒川検事長辞任

6月16日:秘書の懲役刑で夫婦そろって自民党離党

 という、お粗末な顛末と相成っている。

 個人的には、あるいは亡くなられた刑法の團藤重光先生がお元気なら、必ず言われたと思うのは、「河井法務大臣」によって、一人の死刑執行も行われなかったのは、不幸中の幸いと言うべきでしょう。

 こともあろうに、直前まで公職選挙法に露骨に抵触する「封筒」をばら撒いていた本人が、あろうことか「法務大臣」を任命され、それを受けるというのも厚顔無恥としか言いようがありません。

刺客スネ夫を小者と斬り捨てられるか?

 本質的に今回の選挙不正は自民党本部の意向によってなされたものなので、どの段階でどこまで捜査が進むかが本質的でしょう。

 すでに参院選前の2019年6月時点で、週刊文春は「あの男を許さない」(https://bunshun.jp/articles/-/12426)として、赤裸々に報道しています。

 2007年夏の参院選自民党が惨敗した折、防災相であった溝手顕正議員が、第1次政権首班であった安倍晋三氏を名指しで「もう過去の人」と批判した。

 こうした10年来の因縁、憎悪などがあり、2019年の25回参院選では「安倍事務所スタッフ数人を広島に常駐させるほど」の力の入れようであることが、選挙公示以前の6月時点で、すでに報道に流れてしまっています。

 河井克行議員は、首相補佐官時代の2016年、元秘書に対する傷害事件とパワハラで告発される(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/176500)など、地元での悪評は完全に定着していました。

 あだ名は「スネ夫」、裕福な家庭に育ってわがまま放題、座席の後ろを蹴る常習でタクシー会社から配車を拒否されているといった報道すら流れている。

 その「スネ夫」こと河井克行議員がバラまいた1億5000万円、確かに実行犯は「スネ夫」ですが、お金の出元と、それをどう使うかの指示は「出元」から出ていた。

 温厚な岸田文雄政調会長が珍しく「嫌い」と明言するという「スネ夫」だそうですが、奇しくも秘書「懲役刑」判決の日の晩、自民党二階俊博幹事長は「影響を及ぼすほどの大物議員でもなければ、そんなに大騒ぎするような立場の人」でもない(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200616/k10012472441000.html)と、河井克行議員は小者であることを強調しています。

二階から目薬」で事態収拾のつもりかもしれません。

 しかし、それは取りも直さず「スネ夫」はしょせん刺客に過ぎず、「大物」で「影響を及ぼす」「大騒ぎするような立場の人」まで特捜の手が回らなければ、意味ある再発防止にはならないと喧伝してしまうことになってしまった。

 さて、ではどんな大物、大騒ぎする立場の人まで、捜査の手が伸びるのでしょうか?

 そうしたゴシップは市井のマスコミに任せ、ここでは学術的な観点から指摘しておきます。

 筆者は團藤重光教授のお考えをもとに、そもそも「法務大臣」という職制をそろそろ解体すべき時期に達していると考えています。

 これについてはまた、稿を改めましょう。

「広島代理戦争」は、代理から永田町の内裏に、仁義なき戦いの舞台を移しつつあるようです。

(つづく)

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参議院本会議に出席する河井案里参議院議員(5月29日、写真:つのだよしお/アフロ)