自民党二階俊博幹事長(81)の動きが活発だ。

 6月9日夜。東京・赤坂の割烹「津やま」で小泉純一郎元首相らと会食。二階氏は散会後、記者団に色紙を掲げて撮影させると、車で立ち去った。小泉氏が書いて二階氏に渡したという色紙には「お金より大事な物 信頼」。空前絶後の予算やら、一律10万円給付の前に、国民の信頼を取り戻さないとダメだ――。普段の講演でも脱原発に動かぬ安倍政権に批判的な小泉氏の真意はそんなところだろう。注目すべきは、それをわざわざカメラに示した二階氏の思惑である。

 実は二階氏、もう一つ布石を打っていた。安倍首相が忌み嫌う石破茂元幹事長への接近だ。津やま会合の前日、二階氏は石破氏と面会。9月に予定される石破派のパーティーでの講演を依頼されると即快諾。会見でも「石破さんには将来、さらに高みを目指して進んで欲しい。期待の星の一人だ」と持ち上げた。最近、二階、石破両氏は少人数の会合を水面下で重ねる。石破派内には「二階派と合流する手もあり得る」(石破氏周辺)との期待感が広がるほどだ。

 もっとも、自らの選択肢を増やすことこそ力の源泉だと知悉する二階氏にとって、石破氏は一つのコマに過ぎない。二階氏は様々なポスト安倍候補に「俺に何でも言ってこい」と声を掛ける。6月11日には総裁選を目指す下村博文選挙対策委員長稲田朋美幹事長代行が主導する議連にも出席。130人超の前で「しっかり協力する。思い切って前進して欲しい」とエールを送るなど融通無碍だ。「狙いは秋にも行われる内閣改造での幹事長残留です。一連の行動は『俺を大事にしないと、ろくな事にならないぞ』という首相へのメッセージ」(政治部記者)。9月8日まで続投すれば、「政治の師」と仰ぐ田中角栄元首相が持つ幹事長在職最長記録を超える。「田中先生を超えたら、盛大にお祝いしよう」と意欲満々だ。

 頼まれ事を探しては引き受け、実現する。そしてまた依頼が舞い込む。このサイクルで力を増幅させてきた二階氏は、時に「会議で寝ていた」「老人特有の症状か」と言われるものの、その実、衰え知らず。最近では、最側近の林幹雄幹事長代理が「それはやめた方がいいです」と忠告しても「何を言っているんだ!」と応じない場面もある。政治部デスクは「二階氏の政局観が益々冴え渡り、強気でいるのはコロナの影響」と明かす。安倍首相の求心力低下と反比例するかのように、夜の会合を自粛する健康的生活で体調がすこぶるいい。国会閉会後に活発化する政局で、二階氏は最大のキーマンとなりそうだ。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年6月25日号)

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