最近、大阪府吉村洋文知事と愛知県大村秀章知事の対立が注目されています。



大阪府吉村洋文知事(画像:吉村洋文公式サイトより)



大阪府知事と愛知県知事がコロナで対立、リコール運動もからむ
 5月11日記者会見で、大村県知事が、東京・大阪は医療崩壊が起きたと指摘しました。



愛知県大村秀章知事(画像:大村秀章公式サイトより)



 これに対して、吉村府知事は5月27日に自身のTwitterで「大阪で医療崩壊は起きていません」などと反論。両者の間でバトルが繰り広げられたたのです。


 その後、美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長(愛知県出身)らが、大村県知事をリコール(解職請求)するため政治団体を立ち上げたと発表しました(6月2日)。


 この発表記者会見の前日、高須院長は自身のTwitterにて、「吉村知事のご臨席の栄を賜れれば」と会への参加を呼びかけたところ、吉村府知事は、公務を理由に断りつつ「リコールは簡単にはいかないと思いますが、応援してます、なう」と返信しました。




 そもそも、大村県知事と吉村府知事の対立は、昨年に問題化した国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」から始まっていました。表現の自由の見地から、企画展「表現の不自由展・その後」の展示を認めた芸術祭実行委員会会長・大村知事に対して、吉村府知事が「知事として不適格。責任をとらないといけない」と批判したのです。


ネットでは対立激化。ハッシュタグで競い合う?!
 知事同士のやり合いを受けて、Twitter上では一般人も含めて論戦が激化しています。


 例えば、吉村府知事が属する政党「日本維新の会」の代表でもある松井一郎大阪市長は、先月27日、大村県知事への反論ツイートを投稿した際に、<#大村寝てろ>とハッシュタグをつけました。



<画像:松井一郎大阪市長Twitterより>



 これには、ネットで賛否が大きく別れました。


 吉村府知事・松井市長を支持する人たちは、「大村知事、松井市長にタグで直撃くらって草www(※ネット用語で笑ったことを示す表現)」「先にケンカを売ったのは大村知事だ」「大阪にからんで目立とうとしてんのか!」など大村県知事を批判。近畿地方Twitterでは<#大村寝てろ>がトレンド入りしました。


 一方、大村知事を擁護する意見は、「(吉村&松井は)科学的な根拠で反論しては?」「公人がこんな下品な発言をするとは」「防護服のかわりに雨ガッパを集めた人が言えること?」といったものが見られました。


 また、高須院長らによる大村知事へのリコール運動が始まると、〈#大村知事のリコールを支持します〉〈#大村知事リコールに反対します〉それぞれのハッシュタグをつけた両陣営の投稿が増加。


 6月に入り<#関西民放5局の偏向報道に抗議します>のハッシュタグがトレンド入りし、「日本維新の会」の政治家メディア露出の多さや保守系の論者を多くキャスティングする関西ローカルテレビ番組に違和感を示す投稿も増えています。




◆愛知と大阪はどんな県民性?
 こういったネットも巻き込んだ令和の“戦(いくさ)”を『名古屋の品格』『新・出身県でわかる人の性格』などの著者で、名古屋育ちの岩中祥史さんにうかがいました。(尾張<名古屋がある愛知県西部>と三河<愛知県東部>は気質が違うという説もありますが、ここでは愛知=名古屋と表現しておきます)


 大村知事の「大阪は医療崩壊」という愛知からの指摘に、大阪人が感情的に反発している状況について、「大阪人は、東京からのダメ出しには、まだ耐えられるけれども、日頃軽く見ている愛知からの指摘には腹が立つため」という見方もあるようですが…。


「大阪が名古屋=愛知を軽く見ていることはありませんが、“リスクを恐れないほうが世の中では上”というのが大阪の考え方。長い間経済で成り立ってきた大阪はリスクを恐れない。


 それに対し“触らぬ神に祟(たた)りなし”=リスクを嫌う名古屋からとやかく言われるのはイヤなんです」(岩中祥史氏。以下同じ)




◆大阪と名古屋、400年前の因縁
 そもそも、岩中氏によれば、よく“3兄弟”に擬せられる東京(長男)・大阪(次男)・名古屋(三男坊)については、歴史的背景を持つ関係性があるそうです。


江戸時代まで長らく日本の経済の中心地だった大阪は、東京に対しては『何するものぞ』という気持ちをいまでも失わずにいます。秘かな優越感といってもいい。


 と同時に、名古屋に対しては『大坂夏の陣・冬の陣』(1614-15年)以来、恨みに似た感情を抱いています。


 愛知県出身の徳川家康名古屋城を築かせたのは、豊臣(=大阪)の息の根を止めるためだった(築城にたずさわり経済的な疲弊を余儀なくされたのは、ほとんどが豊臣方の有力武将)。事実、それが功を奏し、豊臣(=大阪)は最終的に徳川に滅ぼされてしまいました。


 ただ、経済の中心は、それでも大阪にあり続けました。それが東京への優越感につながっているわけです」




 では、逆に名古屋人は「東京から下に見られるのは許せるけど、大阪にそうされると腹が立つ」といったことはあるでしょうか?


「相手が大阪だろうが東京だろうが、何の得にもならない争いに関わるのは避けようとするのが名古屋。とにかく、無駄はイヤ。『下に見られる』ことで損をするのなら話は別だが、損も得もなければ、ニュートラルでいられるわけです」


 東京と大阪の間にあって、淡々と、黙々と、自分たちの利を追求するのが名古屋だそう。“世の中、目立たずに得することのほうが、目立って損することより多い”ということを歴史から学んでいるために、目立つことを嫌うのも大きな特徴とのことです。


愛知県人は“目立つ”のが嫌いで「利」を重視?
 それでは、吉村府知事の高須院長への「応援してます」ツイートは、他自治体の長がリコールへに賛同するという異例の行動ですが、愛知県人の県民性は肯定的/否定的、どちらで受け止めるのでしょうか?




 Twitterでは<#大村知事リコールに反対>という投稿が、<#大村知事のリコールを支持します>という投稿数で上回り(「日刊スポーツ6月3日記事より)、全国的には大村知事リコールに反対の流れが強いようです。愛知県の県民性として、“ブランド好き”と言われますが、全国的な意見には一定の価値があるとみなして、そちらに流れる可能性が高いでしょうか?


「たしかに、それは言えそうです。メジャーについたほうが、“目立つ”というリスクをおかさずに済むから。いつ、どんな場合も、自分たちの『利』につながるほうをセレクトするのが名古屋なのです。相手が自分たちの『利』につながると判断すれば、どこだろうが区別したりはしないんですね。


 一方、大阪は『利』もさることながら、『目立つ』ことを重視する。商売・芸事ではそれがとても大事だから、習い性になっているのかもしれません。東京が大村リコール不支持を打ち出したりすれば、大阪のその度合いはさらにエスカレートしそう」


 愛知県も一枚岩というわけではなく、大村県知事のリコール運動について、河村たかし名古屋市長が「名古屋市民や日本国民の税金や名誉を守るために応援する」と発言しました。



<画像:河村 たかし(本人)Twitterより>



「大村県知事は、家業は農家、碧南市出身で西尾高校から東大、農水省というコースです。それに対し河村市長は、家業は古紙回収、名古屋市出身で旭丘高校から一橋大学、家業を継いだあと政界入りしました。


 二人とも、さほどエリートっぽさを感じさせない刻苦勉励タイプなので、名古屋ではウケがよいはず。ただ、両人の間にはライバル意識が強くありそうです。


 ちなみに、高須クリニックの高須克弥氏は、愛知県江戸時代以来続く医師の家系。高校も私学のエリート校東海で、どちらかというとお金持ちで恵まれている匂いがします」


 一般に、名古屋=愛知は政治家に対しても、「自分たちに利をもたらしてくれるか」という角度を、最終的には重要視するとのことです。


「都会化されている地域なので、いわゆる田舎的な保守とは一線を画してはいるものの、ウルトラな考え方や言動はしないし、警戒心も抱くんですね」


 大阪対名古屋の戦かと思いきや、愛知県内でも火の手があがる今日この頃。ネット世論で全国を巻き込んだバトルはまだまだ続きそうですね。


<文/女子SPA!編集部>



(画像:名古屋城 Instagramより)