宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」をめぐって、タバコ論争が巻き起こったのは記憶に新しい。日本禁煙学会や喫煙文化学会、著名人まで巻き込んだ論争に発展した。

確かに映画内では、レストランやホテルの客室といった人が集まるシーンでの喫煙場面が多かった。職場も分煙されておらず、上司から平社員までタバコを手放さない。1930年代の話だから仕方がないと言えばそうだが、公開直後から「喫煙シーンが多すぎる」という声は上がっていた。

時代の流れは「タバコNO」だが…

アメリカでは未成年への影響を考慮して映画の喫煙シーンを減らしているというし、日本でもほとんどの公共の場で禁煙となっている。職場での「完全禁煙」を盛り込んだ安全衛生法の改正案が作成されるなど、時代の流れは完全に「タバコNO」である。

それでも、仕事中でも喫煙OKの「風立ちぬ」的職場は、まだ現存するようだ。労政時報による、人事労務担当者・約5000人に聞いた調査(2011年2月)では、職場で分煙対策をしていない会社が2割弱残っており、何ら喫煙対策を実施していない会社も0.6%あったという。

理由は「喫煙室等を設けるスペースがないため」「社内の合意が得られないため」だそうだ。時代の趨勢から言えば「喫煙者優遇」とも取れそうだが、キャリコネの口コミを見ても、こうした職場はまだ存在するようだ。

福島・白河市の観光会社に勤務する60代のホテルスタッフは、「営業所内トップが喫煙者のため、建物内・事務所内で喫煙OK」と明かす。こと喫煙に関しては、職場で声の大きなオジサンの意向が強く反映されてしまうのだろう。

東京・内神田でメディア事業を手がける会社に勤務する20代女性は、「喫煙者が多いが、分煙がうまくいっていないため、においが染みついている」と不満を漏らしている。いちおう喫煙室を作っていても、部屋の隙間や空調から煙が回ってくるので「席にいてもマスクが必要」という人もいた。

出世したければ、タバコを吸え?

ここまで喫煙シーンが堂々と扱われていたのは、宮崎監督がヘビースモーカーで、職場であるスタジオジブリにおいても自席で堂々とタバコを吸っているという背景もありそうだ。

タバコはダメとか長時間労働はダメとか、下らないことにガタガタうるさいから日本はダメになったんだ」とでも言いそうな勢いである。きっとジブリでも、監督に「タバコ臭いからやめて」と言える人はいないに違いない。

転職サイトDODAの調査によると、タバコが「出世に影響する」との回答が17%あった。上司といっしょにタバコを吸い、コミュニケーションを取る。職場が喫煙OKでもそうでなくても、そうした交流が出世にまで影響することがあるようだ。

 「(出世しやすいのは)タバコを吸う人。喫煙所で重要なことが決められていることも多い」(カプコン・30代男性)
「出世したければ、タバコ部屋で部門トップと会話をする機会を増やすこと」(富士通・30代男性)

こうしたタバコの「効能」に対する評価は、投稿者の主観を反映している面もあるだろう。しかし、現に「タバコ部屋人事」という言葉もあり、「タバコNO」の世界的趨勢に抗う部分が日本のサラリーマン文化にはありそうだ。

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