またしても、人気タレントの不倫報道が世をにぎわせています。「あんなにきれいな奥さんがいて、なぜ?」と感じた人もいることでしょう。

 私は長年、恋人・夫婦仲相談所で不倫の相談を受けていますが、不倫は妻や夫のルックスなどは全く関係なく起こるものです。「イケメンでモテるから不倫する」「“美魔女”妻だから不倫する」、そして、「妻が美人だから夫が不倫しない」という法則は一切ありません。

 穏やかな口調で地味な装いの妻、七三分けの黒縁眼鏡で真面目そうな夫…どんな人でも、危ない世界に踏み入れる可能性があります。私はいつも「道路を歩いていて、足元にあった穴に突然ストンと落ちるようなもの」と比喩しています。

ステイホームで夫への不満が加速

 PTA不倫、職場不倫、自転車不倫、ダブル不倫、四角不倫――。形態によって、不倫の呼び方は異なります。本来、不倫は悪いことですので、ネーミングによって軽く扱うのはよくないとは承知しています。

 ただ、端的な言葉で表すことで、社会的な不倫問題が夫婦の会話のきっかけになることを提案したいと思っています。他者の事例をきっかけに、お互いの“不倫観”を知るのです。不倫についての意見交換は、2人の間に風を通すことになるはずです。

 コロナ禍のステイホーム中、不倫カップルはどうしていたのか。事例をヒアリングしましたので、夫婦の会話の議題にしてみてください。「自粛で会えないんだし、これを機会に別れるだろう」「会えないから余計に燃えるのでは」…さて、皆さんの予測はいかがでしょう。

【夫が経営する会社の取引先の男性と…梨衣さん(仮名、30代後半)のケース】

 梨衣さんの夫・克次さん(仮名)は、中規模の建築材料関係の会社を経営。梨衣さんは経理や事務を手伝っています。梨衣さんの不倫は昨年始まりました。コロナ前です。

 ある日、急用ができた克次さんの代わりに、梨衣さんが打ち合わせに行きました。雨のため、顧客の田川さん(仮名)を車で駅まで送ることに。車の中で、田川さんから、「奥さん、きれいですね。社長がうらやましいなあ」と言われ、梨衣さんはまんざらでもありませんでした。急ぎの要件をやりとりすることになり、LINEを交換。ここから、2人の仲は急接近します。田川さんは梨衣さんと同じ年齢で、既婚です。

 梨衣さん夫婦は、梨衣さんの母親と同居なので、家や子どものことは母にかなり協力してもらっています。つまり、梨衣さんは1人で外出できるのです。梨衣さんは自分の車も持っているので、田川さんを乗せ、近所の人に会わないよう郊外のホテルに向かいます。月に4~5回、秘密で会う関係が続いていました。

 そして、新型コロナによる“ステイホーム期間”がやってきます。外出自粛で田川さんと会えない中、だんだんと夫のわがままさが見え始めました。

 家事を梨衣さんと母親に任せて、部屋にこもる。床にこぼしたみそ汁を「拭いて」と言うと、「掃除は苦手」と言いながら、適当に足で雑巾を動かす…だらしなさが目につきます。こうした日々のいら立ちを解消してくれたのは、田川さんとのLINE。会いたい気持ちを抑え切れず、またこっそり会うようになりました。

 梨衣さんは自粛期間中、在宅でパソコン作業に専念し、田川さんと会うときは「買い物に行く」「ママ友にオンライン授業のサポートの仕方を教えてもらう」など、それなりの理由を伝えて家を出ます。以前は特に、克次さんと険悪ではなかったそうです。なぜ、他の男性に会うのか聞いてみました。

「高校時代からモテる方で、チヤホヤされると舞い上がるタイプだったんです。でも、結婚するともうそんなことはなくて、寂しさを感じていました。夫は仕事と子どもに夢中だし、その2つしか話題がありません。

彼(田川さん)は『いつもきれい』『一緒にいると元気になれる』とか言ってくれて…ベッドでも優しくしてくれます。夜の営みが雑な夫とは大違い。彼のためなら、エッチなことも何だってできます。夫にそれほど不満はなかったんですが、ステイホームでずっと一緒にいると、意外に不満は出てくるものですよ」

 梨衣さんは性的にもオープンで、欲求はかなり高い方です。克次さんとは自粛期間にセックスレスになり、足りなくなった分を田川さんとの密会で満たしているようです。

「本命」だけでなく、さらに…

【本命の不倫相手と会えず、自転車圏内で別の不倫相手を2人見つけ…さや香さん(仮名、40代中盤)のケース】

 自宅近くの食品会社で事務仕事をしている、さや香さん。夫との仲について「100点満点でいえば30点くらい」といいます。暑い時期はステテコとランニングシャツで歩き回ったり、目の前でおならをしたり…次男が生まれてからは、さや香さんを女性として見てくれたことが一度もなく、“母親”や“お手伝いさん”、またあるときは“友達”のような20年間だったそうです。

 2年前、元職場のパーティーに招待され、気になっていた上司と再会してから不倫が始まりました。コロナ禍の外出自粛中も彼とLINEを交わすたびに会いたい欲求が高まり、「こっそり会いたい」と申し出ます。

 しかし、彼は「リモートワークで平日は出掛けられないし、休日は妻に外出の言い訳ができない」ときっぱり。その上、「もし、陽性になって経路をたどられると関係は終わりだ」とたしなめられます。

 彼と会えない上、夫と一緒の時間が長くなり、ストレスはたまるばかり。さや香さんは営業中の美容院を探し、ヘアカットに行くことに。電車は乗りたくないので、自転車圏内で探したそうです。「うっとうしい夫と離れて、気分転換したかった」といいます。

 その美容院は、店長と見習い生の2人で時短営業中。店長が丁寧に髪を洗ってくれたり、「店は自粛で大変ですよ」と世間話をしてくれたりして、ささくれていた気分がスッと和らぎました。

 その後、手作りパンを持って美容院に通うようになります。毎回、閉店前の時間にシャンプーを予約。そして、客が少なく、見習い生を休ませている日を見計らって、店長を誘いました。「私、夫とは別居してるの。コロナで心細いわ」と、うそをついて。

 年下で独身の店長は、誘いに乗ってきました。ラブホテルの2時間休憩、お風呂でしっかり体を洗い流し、アルコールで念入りに手を消毒して体を重ねます。「電車に乗りたくない」と言いながら、相手と濃厚接触。「矛盾している」と思いましたが、不倫自体が矛盾しているので、詮索はやめました。それからも、美容院の「その日最後の客」として予約し、ホテルに行っているそうです。

夫婦で話し合うきっかけに

 さや香さんのワイルドぶりはとどまることを知らず、今度は子どもの同級生の父親と散歩中に会い、「休校のことで、心配事があるから話しましょうよ」と話題を振り、LINEで日時を決めて、時々2人で会うように。在宅ワークの夫たちが平日の午後、息抜きでの散歩中に「不倫に罪悪感を持たない女性」の甘い言葉に誘われると、厄介なことになるかもしれません。

「前の不倫相手とはもう会わないのですか」と尋ねてみました。

「はい、新しくできた美容師の彼と続けたいと思います。奥さんの監視下だとなかなか会えない時代になりましたから、相手が独身だと気が楽です。○○くんのパパは、マスクしておしゃべりするくらいでいいです」

 妻たちの敵ともいえる、いやらしい言葉ですね。「自粛中の不倫、不届き千万」という声が聞こえてきそうです。家族にコロナをうつすリスク、バレたときに周りを傷つけるリスク…数々のリスクを抱えながら、なにゆえ続けるのでしょうか。

 さや香さんはコロナ前から不倫を始め、自粛中に二股不倫をするという極めて特異な例です。しかし、不倫で女性としての承認欲求を満たし、自粛中はストレス解消が目的という点は、共通する人もいそうです。

 他にも「LINEで不倫相手とつながることで、ステイホームを乗り越えられた。早く会いたい」と願う人、「コロナの不安な状況で、頼れるのはやっぱり不倫相手だ」という人もいます。感染に対する厳重警戒が求められる中、「密な接触を避けなければ」と感じながらも会わずにいられない“本気恋愛”の不倫カップルもいます。しかし、不倫継続を選ぶ前に、アフターコロナの夫婦関係をどう変えていくのかを考えることがベストな選択です。

 皆さんの予測はどうでしたか。「コロナ不倫」という議題のもと、夫婦会議をしてみる機会になればと思っています。

「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美

外出自粛期間中の不倫とは?