ライター編集者の速水健朗がメインパーソナリティをつとめるTOKYO FMニュース報道番組「TOKYO SLOW NEWS」。スローニュース株式会社協力のもと、ストレートニュースだけではなく、ジャーナリストが自ら足で稼いだ選りすぐりの調査報道(スローニュース)にフォーカス。独自の視点でニュースを深掘りします。毎週木曜日は週替わりパートナーが登場。6月4日(木)の放送は、ジャーナリスト伊藤詩織さん(第1、第5木曜パートナー)とともに「ネット誹謗中傷、規制で解決できるのか?」について考えました。本記事は、番組後編の内容をお届けします(※6月4日(木)放送当日の内容です)。

(左から)速水建朗、伊藤詩織



誹謗中傷を受けたときに……
速水誹謗中傷を受けた本人が非常にダメージを負っている状況で、本人が情報開示の手続きをし、裁判で名誉毀損を認めさせるということは、非常に心理的なハードルが大きいと思います。(日本の職場で女性がハイヒールおよびパンプスの着用を義務づけられていることに抗議する社会運動)「#KuToo」で注目された石川優実さんも、インターネット上で、ものすごく誹謗中傷を受けたそうです。

伊藤:石川さんもいろんな苦しい言葉を直接受けていて、「そういった言葉は社会全体から攻撃されているように苦しかった」と言っています。そこでやっぱり大変だったのが、その言葉に向き合うということなんですけど、彼女がすごいのは、そういったメッセージに対して応答しているんですよね。“こういった言葉を投げかけられているんだ”ということを世界に訴えるためにもリプライをしていたそうです。お話を伺ったなかで印象的だったのは、「そういったなかで応援の言葉を投げかけてくれる人がいたり、誰かがアクションを起こしてくれたりすることに本当に助けられた」と言っていたんですよね。

速水なるほど。“これはおかしいんじゃないか?”と思う人は、たくさんいるはずなんですよね。そういう意味では、ある種、社会で受け止めるための仕組みのようなものに、プラットフォームを武器にすることもできるという事例なのかなと思いました。それでも、みんなが気持ちではわかっていても、じゃあ実際にそれを手助けできるか……というと、おそらく難しい面もあると思います。

伊藤:やっぱり今必要なのは、そういった誹謗中傷を受けたときに、どこに相談していいのかという“受け皿”も必要なのではと思います。個人的に戦っていては、本当につらい作業になってしまうので。

速水:みなさんのメッセージも読みながら進めたいと思います。

<40代・男性からのメッセージ
「いわゆるネット規制での解決は、残念ながらできないと思います。これで余計にダークネットコミュニケーションができてしまうと考えています。ネットに関しては、日本人の陰湿な部分がよく表れており、陰口などが大好物。匿名なら、なおさらです。何かの規制が入れば、より“濃い黒さ”が出るのではないかと思いますが、残念ですけど、いたちごっこかな……」

という意見もいただいています。匿名でネット上に書き込んだ内容と同じことを、面と向かって言えるのか? ということはありますよね。

伊藤:そうなんですよね。日本のTwitter での投稿は、75%が匿名と言われています。アメリカや韓国は30%台と言われているので、日本では2倍以上が匿名です。

私の経験では、道を歩いていて声をかけてくださる人は、かなり温かい言葉をかけてくださるんですね。オンラインにあふれているような、聞いていて本当に体が冷たくなるような言葉というのは、オフラインの世界ではかけられたことがなかったんです。本当にシンプルなことですよね。面と向かって、その人に対してこの言葉が投げかけられるのかということ。規制ではなくて、そういったところを心がけたいですよね。

表現の自由と規制
速水メッセージをもう1通ご紹介します。“ネットの書き込みを匿名にしない”というご意見もいただきました。

<50代・男性からのメッセージ
「(匿名での誹謗中傷投稿は)きちんと特定すべきだと思います。それこそ、いま問題になっている特別定額給付金の支払い口座と同じように、(SNSに)投稿する人も特定できるように、マイナンバーを明記すべきだと思います」

この問題で非常に重要なのは、ネットには、ある種の“表現の自由”なんかを広げていくような力というものがあるということです。

たとえば、韓国でもネットでの誹謗中傷が問題になり、芸能人がその被害で死を選ぶようなケースもたくさんありました。そのなかで「実名制のネットの導入」というのがおこなわれたのですが、発言の自由・表現の自由と相反する部分もあり、違憲判決になっています。

被害者が投稿者にたどり着き、裁判という形でわかりやすく退治できるような仕組みも必要だと思いますが、SNSプラットホーム側が放置している問題もあります。そこに関しては、フランスなどでは、悪質で差別的な投稿は24時間以内に削除しないと企業側が罰則を受けるようなルールができていたりもします。プラットフォーム側に課すべき責任も当然議論されていくべきですし、日本人コミュニケーションの部分もあるのかなという気もします。

例えば、トランプ(米大統領)の発言なんかは、誰かを叩くときに“こいつはダメなんだ!”という叩き方をすると、相手は人格攻撃に関しては反論のしようがない。それは誹謗中傷の問題にも近いところがありますよね。“この部分の、この発言が”という批判なら、いくらでも返しようがありますが。

伊藤:そうなんです。そういった建設的なディスカッションにつながるものであればいいのではないかなと思います。

速水:今日は「ネット誹謗中傷」を、どのように解決していくのか……というところまでは非常に難しいのですが、その手がかりみたいな議論ができたのではないでしょうか。伊藤さん、ありがとうございました

<番組概要>
番組名:TOKYO SLOW NEWS
放送日時:毎週月曜~水曜20:0021:00
パーソナリティ:速水健朗
週替わりパートナー(毎週木曜):伊藤詩織(1、5週目)、堤未果(2週目)、カリン西村(3週目)、浜田敬子(4週目)
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/tokyoslownews/
ジャーナリスト伊藤詩織「面と向かって、その言葉を投げかけられるのか…」“オンラインの誹謗中傷”を語る