新型コロナウイルスの影響で、テレワークが始まった人も多いと思います。そんな中、「ずっとウェブカメラに姿を映していなければなりません」という相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

女性の会社は、昼休みの時以外ウェブカメラで姿を映すことになっています。同僚など7〜8人の姿が映し出されているものの、管理者の姿は一切出ません。

会議をするわけでもないため、女性は「始業や終業など必要な場合のみカメラオンで済むと思うのですが…。四六時中カメラに映されることにストレスが募り心身共に不調です」と疑問を感じているようです。

ツイッターでも「PCカメラ常時ONとか疲れるよ。管理じゃなくて監視したいのかね?」「テレワークカメラで監視だからまじで嫌だ」「カメラ付いて1日3回朝昼夕の点呼とるかとか監視されているみたい」という声が複数ありました。

テレワークの場合、常時カメラオンは法的に問題ないのでしょうか。山本幸司弁護士に聞きました。

従業員にはプライバシーや人格権がある

ーー会社が従業員にカメラをオンにさせることは問題ないのでしょうか

会社は、従業員に対して、業務上必要な指揮命令をすることができます。テレワーク中の従業員に、ウェブカメラで自分の姿を撮影させ、パソコン画面上に映し出すことについても、それが業務上必要であれば、場合によっては許されることがあります。

しかし、従業員にはプライバシーや人格権があり、会社はこれらを尊重しなければなりません。

テレワーク中に自分の姿が同僚のパソコン画面に映し出され、自分が誰に、いつ、どのように見られているかも分からないとなると、従業員のプライバシーや人格権の侵害となることもあるでしょう。

ーーどの程度までなら許されるのでしょうか

会社がテレワーク中の従業員にウェブカメラでの撮影を命じて良いかどうかについては、なぜ撮影を命じるべきかという必要性とその方法、従業員の不利益などを検討し、相当な理由があるといえるかどうかによって判断することになるでしょう。

相当な理由があるといえるかどうかは、会社ごと、事案ごとに、個別に判断する必要があります。

業務上の必要性があるか?

ーー判断の基準としては、何がポイントになるのでしょうか

この問題を直接取り扱った裁判例は、現時点ではないと思われます。

しかし、この問題と類似する裁判例、たとえば会社が職場に従業員を監視する監視カメラを設置した事例などや、個人情報取扱業務に関する行政機関の見解などを参照すると、以下の4点が重要なポイントになるのではないかと考えられます。

(1)会社が撮影を命じる業務上の必要性があるか
例えば、会社が従業員の業務の遂行状況を確認する必要性や、労働時間を管理する必要性、業務上の情報を管理する必要性などが考えられます。

撮影による従業員の不利益が大きい場合には、そのような不利益が及ぶことを考慮してもなお撮影を命じなければならないといえるだけの、高度の必要性がなければならないと考えます。

ただし、いかに必要性があったとしても、従業員の受忍限度を超えるような指揮命令は、認められません。

(2)会社が撮影を命じる目的が正当か
特定の従業員のみを狙い撃ちにして撮影をさせている場合には、不当な目的があるとして、違法になる可能性があります。

(3)撮影の方法、撮影された映像の取扱い
撮影対象を撮影目的の達成のために必要な範囲に限定するなど、プライバシーに配慮しているか、業務時間外の撮影を命じていないか、撮影された映像が目的外利用されていないか、映像を不必要な人が見ることができないようになっているか、目的を達成するために別の手段がないか等が考えられます。

従業員のプライバシーや人格権に対する制約を小さくするための配慮が必要です。

(4)撮影の根拠・手続
行政委員会である個人情報保護委員会は、個人データ取扱業務に関してですが、従業員をビデオオンライン等で監視するモニタリングを実施する際に、次の4点に留意すべきとしています。

モニタリングの目的をあらかじめ特定したうえで、社内規程等に定め、従業員に示すこと。
モニタリングの実施に関する責任者と権限を定めること。
・あらかじめモニタリングの実施に関するルールを策定し、その内容を運用者に徹底すること。
モニタリングがあらかじめ定めたルールに従って適正に行われているか、確認を行うこと。

これらの留意点は、テレワーク中の従業員にウェブカメラで自分の姿を撮影させる場合にも、参考になると考えられます。

ーー無制限に撮影することは、従業員のプライバシーの観点からも避けるべきということですね

はい。テレワーク中の従業員にウェブカメラで自分の姿を撮影させ、同僚のパソコン画面に表示させることは、個別具体的な事情により違法となり得ます。

従業員にとって、業務時間中に常に自分の姿が撮影され続けるというのは、不快であることが多いと思われます。

会社としては、従業員の撮影が業務上本当に必要なのか、従業員のプライバシーや人格権を侵害していないか、慎重に検討する必要があるのではないでしょうか。

【取材協力弁護士
山本 幸司(やまもとこうじ弁護士
広島弁護士会所属。企業法務(上場企業、医療機関など)、不動産、労働、相続・離婚問題、刑事事件などの分野で経験を積み、広島市で独立開業。税理士と共同して、法務・税務の両面からトータルサポート
事務所名:山本総合法律事務所
事務所URLhttp://www.law-yamamoto.jp

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