16日、公選法違反疑惑について、記者会見する前経済産業相の菅原一秀氏。(写真/時事通信社

◆世論の怒り爆発。#菅原前経産相の不起訴に抗議します ハッシュタグも
 不可解な起訴猶予処分が下された。東京地検特捜部は6月25日、選挙区内において公設秘書が代理で有権者に香典を手渡すなどした公職選挙法違反容疑で刑事告訴されていた菅原一秀前経産相(58)=東京9区=を不起訴(起訴猶予)とした。(参照:時事通信

 特捜部が司法記者に不起訴の理由として説明したのは以下の2点。

●「大半のケースでは自らが弔問しており、香典の代理持参はあくまで例外と位置づけられ悪質性が低いと判断。公職選挙法を無視または軽視する姿勢が顕著とまでは言い難い
●「経産大臣を辞任し、会見で事実を認め謝罪したことを考慮

 前経産相の不起訴報道に世論は一斉反発。ツイッターには #菅原前経産相の不起訴に抗議します ハッシュタグが立ち、東京地検特捜部の判断に異議を唱えるツイッターデモが起こった。

◆直近の公設秘書2人が公選法違反常態化を証言
 奇しくも菅原を経産相辞任に追い込んだ週刊文春は、この日発売の最新号で『”香典持参”秘書が告発「菅原前経産相の悪事、すべて話します」』と題した告発記事を掲載。
 昨年10月、同誌に元町会会長葬儀での菅原名義の香典渡しをスクープ撮りされた公設第一秘書、そして週刊誌に情報を漏らしたのではと菅原に疑われ軟禁された公設第二秘書が今年3月に菅原事務所を退所、週刊文春の取材に応じたのだ。記事では菅原の指示による公選法違反を始めとした数多の違法行為の常態化が直近の公設秘書の証言によって明らかとなっており、検察の不起訴理由が現実に即していないことは明らかだ。

 同日のNNNの報道でもこの二人の前公設秘書は、支持者をランク分けして香典と枕花を届けるよう細部まで口を挟む菅原の指示内容を暴露している。

◆前公設秘書代理人が怒りのツイート連発
 前公設秘書2人の代理人を務める郷原信郎弁護士(郷原総合コンライアンス法律事務所)は今回の東京地検の判断に #菅原前経産相の不起訴に抗議します ハッシュタグを付けた怒りのツイートを連発している。

“『直前に告知して「会見」を行い、誰も質問も追及もできない状況で、大汗をかきながら、意味不明の説明をしたことが「記者会見においても事実を認め謝罪した」ことになるのか。この人物にとって、選挙区内の弔事は「香典ばらまき」の機会に過ぎない。この「罪」に対して罰金刑すら科さないことは理解不能』”

“『【大拡散‼】免許持って運転する人がスピート違反して赤切符切られたら罰金払う。選挙で当選した国会議員の公選法違反が発覚したのに、「大臣辞めた」「謝罪した」から罰金も払わないで済まされる。そんなことが罷り通るのか?もう誰も交通違反の罰金など払わない。』”

”『これが、違法な定年延長強行の後「賭け麻雀」で辞任した黒川氏の後任検事長に就任した”林真琴検事長の初仕事”か?これ程、国民の期待を裏切り、バカにした話があるだろうか?』“

(以上、出典は郷原弁護士のTwitterより)

◆検察の不起訴判断は妥当なのか?

不起訴発表から一夜明けた菅原議員の自宅兼連絡所

 東京地検が“考慮”した“事実を認め謝罪した会見”は、菅原が国会会期末前日の6月16日自民党本部で行った緊急会見のことだ。〈参照:時事通信社汗だくの菅原は「一部公職選挙法に触れる事案がございました」と最低限の公選法違反のみを認め、形だけ反省して見せた。現に議員辞職はおろか離党すらも否定し、責任を取る意思が欠片もないことは明らかだった。

 前公設秘書の証言を始め、これまでの当サイトを含む一連の報道から菅原が公選法を始めとする法令を無視ないし軽視してきたことは明白である。そもそも昨年10月の経産相辞任は、公選法違反を認めその責任を取って辞めたわけではない。それがなぜ”考慮”の対象となるのか。議員辞職すらしていない。検察の不起訴理由は根拠が薄弱であるばかりか事実誤認だとしか思えない。

◆反省コメントと裏腹に続々と報じられる「違法行為」
 菅原は不起訴を受け「不用意な行動を心から反省し、多くの皆さまに迷惑をかけたことを深くおわび申し上げる。今後とも法令遵守の上、精進していく」とのコメントを出したが、一連の公選法違反は「不用意な行動」などではなく周到に用意した行動であり、法令遵守が聞いて呆れる。

 週刊文春最新号に掲載された公設秘書の告発によると、菅原は秘書に他党の選挙ポスター剥がしを指示していたという。その一方で2017年5月、菅原は自身のポスターが剥がされた事件について「もし組織的犯罪なら断じて許さない」とツイートしていた。こんな人物が宣う法令遵守には如何なる説得力もない。

Tweets by sugawaraisshu

 文春にはこの他党のポスター剥がしの他、選挙区内の有権者へのお歳暮や陣中見舞い、後援会幹部への線香配り、会費以上の金額を町会などに渡していたこと、秘書への罰金制度や通勤手当の詐取・上納、後援会幹部を使った軟禁など菅原による違法行為の数々が記載されている。

 また、菅原事務所は疑惑を追う筆者と藤倉善郎氏に対し、虚偽の110番通報だけでなく虚偽の刑事告訴まで行っている。
〈参照:公職選挙法違反疑惑を指摘のジャーナリストを国会議員事務所が警察に虚偽通報か|HBOL〉
〈参照:「建造物侵入罪」濫用で狭められる報道の自由|HBOL〉

 そもそも筆者が菅原の追及を始めたのは2017年統一教会との関係を掴んだからだが、昨年6月に菅原陣営が我々への虚偽告訴にまで手を染めた事の発端は、菅原による有権者へのカードカレンダー配布という公選法違反案件の追及だった。
〈参照:統一教会イベントで2世信者を激励した議員に「信者運動員使用」疑惑浮上。本人を直撃|HBOL〉

フリー記者を恐れる小心な代議士は、いつ一般有権者に前に立つのか
 菅原については昨年10月経産相辞任後に1か月以上国会を欠席したにもかかわらず300万円超のボーナスが満額支給されたことも非難を呼んだ。その後も雲隠れの末、ようやく今年1月の通常国会召集日にやはり汗だくで会見を行ったのは国会の自民党控室、16日の会見も自民党本部、それぞれ国会記者や司法記者しかいない場だ。

 菅原には最も恐れる私や藤倉氏と言ったフリージャーナリストがいる場では会見を行う気概すらないのだ。
〈参照:菅原一秀前経産相、本人不在で秘書らが年始の駅頭挨拶。記者を見るや否や、自民党の幟をほったらかして一斉逃亡|HBOL〉

 菅原はこれまで説明責任を果たすと言いながら、捜査に支障があってはならないとの口実で何も語ろうとしてこなかった。しかし、検察の捜査が不起訴となった現在、菅原が有権者・国民に対し説明責任を果たすことには何の支障もないはずだ。9か月以上、朝の駅頭を行っていないにもかかわらず「毎日駅にいる」のキャッチフレーズを掲げる菅原は、いつ一般有権者の前に立つのか。菅原の練馬事務所に照会すると、駅頭活動の再開時期は判らないという。

 常態化した有権者買収によって国会議員の座を得たのであれば、当然行うべきは議員辞職のはずだ。そんな菅原が有権者にどう説明責任を果たすのか。秋にも噂される次期衆院選において有権者は判断するだろう。

◆検察による悪しき前例がまた一つ追加
 菅原を刑事告発した市民は、公選法違反を認定しておきながら不起訴としたのは不当として、検察審査会に審査申し立てを行うと表明している。

 今回、菅原議員の起訴を見送った検察は「本人が違法行為を認めて謝罪すれば起訴されない」という悪しき前例を作ったことになる。起訴と不起訴の判断をどのように線引きするのか、検察にも説明責任が求められている。(文中一部敬称略)

<取材・文/鈴木エイトジャーナリスト)>

【鈴木エイト
すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:@cult_and_fraud滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

16日、公選法違反疑惑について、記者会見する前経済産業相の菅原一秀氏。(写真/時事通信社)