思ったより早く、赤裸々な事実が出て来ました。

JBpressですべての写真や図表を見る

「安倍さんから」の白い封筒との証言です。

 中国新聞の取材(https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=655693&comment_sub_id=0&category_id=256)に広島県府中町の繁政秀子町議(78)が答えたものが、6月24日明らかになりました。

 経緯を追ってみましょう。

 昨2019年5月、日付は明らかになっていませんが、第25回参議院議員選挙は公示日が7月4日、投票が21日ですから、それに先立つ直近の時期であることは動きません。

 その5月某日、前法務大臣の河井克行容疑者(57)から、白い封筒に入った現金30万円を渡され、それを受け取ったことを認めた報道は、多くの方がご覧になったと思います。

 繁政町議は自民党支部の女性部長を務めており、また、選挙期間中だけだったとのことですが、河井案里後援会長も務めたとのこと。

 これらに先立つ5月、地元出身の代議士である克行容疑者から、妻である案里容疑者が広島市中区に設けた選挙対策事務所に呼び出され、2人きりになったタイミングで、白い封筒を差し出されました。

「いただかれません。選挙できんくなる」

「安倍さんから」

 という極めてリアルな押し問答の末に、女性支部長という役職もあり

「安倍さんの名を聞き、断れなかった」として受け取ったものの、白い封筒は現在も使わずに手元に残っているとのことです。

 すでに証拠として押さえられているかもしれませんが、お金を返すといったこと以前に、まず捜査のテーブル上に集められるべき「封筒」であると言わねばなりません。

時系列で追う露骨なやり取り「1」

 この克行容疑者「繁政町議<安倍さんから>買収」が、5月何日の出来事であったか、報道からは定かに知れません。

 しかし、「克行容疑者」と「安倍さん」の接点は2019年のこの時期、極めて密接に設けられていたことが朝日新聞の「首相動静」と「中国新聞」の報道をまとめた赤旗の記事(https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-06-24/2020062401_03_1.html)などで周知のことか思います。

 5月23日に克行容疑者は「安倍さん」と、2019年としては4回目という、異例の多さでの単独面会の場を持っています。

 その直前の5月20日、案里容疑者の属する参院選第七支部に「第2回」にあたる3000万円の資金提供が行われています。

 広島市中区袋町電停前の「河井あんり」事務所が開かれたのは4月27日https://ameblo.jp/katsuyuki-kawai/entry-12457233874.html)と、現在もネット上に残っています。

 もし繁政町議が「安倍さん」袋を渡されたのが5月20日以降の下旬であれば、上記「第2回」資金提供によるお金が回った可能性があるでしょう。

 河井事務所にはこれに先立って4月15日、「第1回」の資金提供1500万円が支払われており、これは「追い落とし」のターゲットになった溝手顕正議員にも、同額が支給されたもの。

 これによって「中区袋町電停前」の事務所も開かれたものと察せられます。

 ごくごく一般的に考えて、最初の1500万円で事務所やポスター、ヒトの手配など常識的な手はずを整えた後、5月20日に「特別な」2回目の資金3000万円が提供され、23日に首相と単独面会もあり

「安倍さんから」

 という白い封筒に話がつながったと察せられますが、これは綿密な捜査によって跡付けられるべき性質のものでしょう。

 ここで一連の経緯を再度クロニクル=日付を追って整理してみます。

 いずれも2019年の出来事ですが、おびただしい接点と、露骨な選挙応援というより、なりふり構わぬ依怙贔屓選挙が手に取るようにわかるかと思います。

1月15日:河井克行容疑者、自民党総裁特別補佐として安倍首相と単独面会①

2月6日:田畑毅衆院議員に対する準強制性交容疑告発状提出

2月15日:田畑議員への準強制性交等の容疑が明るみに出、自由民主党離党

2月19日:参院広島選挙区で「2人目の自民候補」擁立(岸田政調会長・甘利選対委員長)。当初の予定候補は薬師寺道代参院議員(当時)

2月28日:克行容疑者、安倍首相と単独面会②

3月1日:田畑議員、衆院議員辞職。

3月2日:薬師寺候補は田畑前議員の後釜にシフト、河井案里擁立案。

3月13日:河井案里擁立決定。

3月20日:克行容疑者、安倍首相と単独面会③、案里容疑者、出馬表明。

4月15日:案里容疑者の参院選挙区第七支部に第1回資金提供1500万円➊

4月17日:克行容疑者、安倍首相と単独面会④

4月22日:「準強制性交」の田畑前議員、書類送検

4月27日:河井あんり選挙事務所、開設。ここで5月に繁政町議に「安倍さんから」封筒

5月20日:案里容疑者の参院選挙区第七支部に異例の第2回資金提供3000万円❷

5月23日:克行容疑者、安倍首相と単独面会⑤

6月10日:案里容疑者の参院選挙区第七支部に異例の第2回資金提供3000万円❸

 克行容疑者の県選挙区第三支部に資金提供4500万円❹

 この日1日で7500万=1.5億の半額、溝手候補への資金の実に5倍が投入されたことになる。

6月20日:克行容疑者、安倍首相と単独面会⑥

6月22日菅義偉房長官、広島で応援演説(https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190722/k00/00m/010/118000c

6月27日:克行容疑者の県選挙区第三支部に資金提供3000万円❺

 しめて克行容疑者の事務所7500万円、案里容疑者の事務所7500万円

 合計1億5000万円が、自由民主党本部から資金提供

7月4日参院選公示

7月8日二階俊博幹事長、広島で応援演説(https://www.sankei.com/politics/news/190713/plt1907130022-n1.html

7月14日安倍首相、参院広島選挙区に応援演説(https://www.sankei.com/politics/news/190714/plt1907140023-n1.html

7月15、16日:菅官房長官、参院広島選挙区に応援演説(http://www.anrinet.com/2019/07/7月15日%ef%bc%88月%ef%bc%89菅義偉内閣官房長官、河井あんり街/

7月21日参院選投票日、案里容疑者当選、溝手候補落選。

7月24日:克行容疑者、案里容疑者、安倍首相と面会⑦

7月30日:田畑前議員、準強制性交不起訴処分

8月15日:克行容疑者、安倍首相と単独面会⑧

9月3日:克行容疑者、安倍首相と単独面会⑨

9月11日:内閣改造、克行容疑者、法務大臣就任

9月17日:克行容疑者、法相として安倍首相と単独面会⑩

10月4日:克行容疑者、法相として出入国在留管理庁長官と安倍首相と面会⑪

10月30日:「週刊文春」あんり選対の公選法違反疑惑報道

10月31日:克行容疑者、菅官房長官同伴で安倍首相と面会⑫、法相辞任

 いかがでしょうか?

 あえて文章を挟まず、出来事を日ごとに記すことで、かえって露骨に見えるものがあるかと思います。しかも、推移はこれだけにとどまったわけではありませんでした。

時系列で追う露骨なやり取り「2」

 10月末日、克行容疑者の法相辞任の直後から別の動きが進み始めます。

 上記のようなやり取りが、世間の人の知るところとなったら、何が起きるか・・・。

 2019年11月から2020年1月にかけて、官邸から検察庁に、2018年7月25日に任官してまだ1年5か月の稲田伸夫・検事総長に早期引退の圧力がかけられたと伝えられます。

 検事総長は慣例では2年、ただし1956年8月14日まれの稲田氏は、理屈の上からは2021年8月までまる3年1か月在任することが可能でした。

 法務検察が後継検事総長として人事予定した林真琴氏は1957年7月30日生まれ。

 一般には稲田検事総長は2020年7月に2年で引退、林氏に検事総長を譲るシナリオを描いていましたが、そのど真ん中に1957年2月8日まれの黒川広務・前・東京高検検事長の誕生日=63歳定年が迫ってきたため、物事は泥沼状況を呈し始めます。

1月20日:第201回通常国会開会

1月23日週刊文春自民党本部から1億5000万円提供を報道(https://mainichi.jp/articles/20200124/ddn/041/010/023000c

 河井案里容疑者本人がそれを認めてしまいました。

https://www.youtube.com/watch?v=sNTkb39hCfA

1月31日:黒川東京高検検事長「前例なき定年延長」閣議決定(https://mainichi.jp/articles/20200131/k00/00m/010/243000c

3月3日:案里容疑者の秘書ら逮捕(https://www.asahi.com/articles/ASN333SWZN33PTIL003.html

3月4日ホテルニューオータニ投宿中の克行・案里容疑者に捜査

3月24日:案里容疑者秘書ら、広島地裁に告訴

3月28日:案里容疑者、薬物等服用で病院搬送

4月20日:案里容疑者秘書裁判、第1回公判(広島地裁)

5月1日:黒川広務東京高検検事長、賭けマージャン

5月13日:黒川広務東京高検検事長、賭けマージャン

5月15日:この時期、克行容疑者、案里容疑者に任意で事情聴取

5月19日:案里容疑者秘書裁判、第2回公判(広島地裁)

5月20日:黒川東京高検検事長の賭けマージャン発覚(https://bunshun.jp/articles/-/37926

5月21日:黒川東京高検検事長辞任

6月16日:案里被告秘書裁判、有罪判決(https://www.asahi.com/articles/ASN6J4H50N6DPITB016.html

6月17日:第201回通常国会閉会

6月18日:克行、あんり両容疑者、逮捕

 今回は淡々と、事実をクロニクルとして、つまり日を追って列挙することで、むしろ複数の出来事の緊密な関係が浮かび上がるよう、原稿を整えてみました。

 今見直してみると、5月20日に文春がスクープした「黒川賭けマージャン」は、この国の形が壊れかけていた状況を、危機一髪で救うヘアピンカーブ的な展開であったことが、改めて明らかかと思います。関係者の労を多とすべきでしょう。

 2020年1月31日明らかになった、晴天の霹靂というべき「黒川検事長定年延長」という、憲法の定める国の骨格、三権分立を危うくする、とんでもない「閣議決定」。

 これ自体が違憲そのものであるのは、論をまちませんが、その突発的な違憲行動の「動機」が、河井案件隠蔽を「守護神」黒川氏に担当させようという、比較的どうでもよい一過性の小悪事であったことに、あらためて国民は注目すべきと思います。

 もちろん、小悪事ではなく大悪事ですが、政体を転換しようといった大それた目的ではなく、特定犯罪事実の隠蔽程度のことという意味です。

「統帥権干犯」と「検事長定年延長」
国が壊れるモーメント

 最初はどうでもよいことから、国の形が壊れて行く。

 日本を第2次世界大戦で破壊した「統帥権干犯」という議論は、実は5.15事件で殺害された犬養毅らが創案したものでした。

 1930年のロンドン海軍軍縮条約で、軍部の方針と独立して軍縮交渉を進める与党立件民政党・浜口雄幸内閣~日本政府の姿勢を批判して「天皇の統帥権を干犯している」と攻撃したのは、ほかならぬ犬養たち政友会の論陣でした。

 浜口首相は軍縮条約締結後に襲撃されて執務不能~退陣~死去。

 その後を受けた、ロンドン軍縮会議で全権を務めた若槻禮次郎の第2次内閣は、勃発した満州事変で閣内不統一を起こして総辞職、その後を受けて組閣の大命を受けたのは当時すでに77歳だった犬養自身でした。

「統帥権」攻撃で結果的に軍部に感謝されていた犬養が、青年将校の攻撃目標とされて暗殺されたのが5.15事件。

 以後2.26事件を経て「統帥権干犯」という憲法にあいた風穴のために、日本はあの愚かな戦争に突入していってしまいました。

 ちなみに、敗戦後に独立を確保した最初の法務大臣が、犬養毅の三男、吉田内閣の犬養健で、犬養健法相が指揮権発動で汚職から守ったのが佐藤栄作自由党幹事長、憲政の初期に汚点を残した連中です。

 この連中の直接の子孫が、ほとんど同じ構造を、もっとたち悪く再生産している面がある現状を冷静に観察する必要があると思われます。

 黒川検事長定年延長は、明らかにこの国が壊れてしまうモーメントになりかけていまいた。

 それが、麻雀チョンボで辛くも脱出できた。まさに日本が崖から転落せずに済んだ、ヘアピンカーブ的な危機一髪だった、と言えるでしょう。

国の形を壊しかけたリスクからの脱出

 ここまで露骨に物事が明るみに出てしまうと、郷原信郎弁護士も指摘されるように、公職選挙法「交付罪」「受交付罪」の容疑によって、自由民主党本部の捜査は必須不可欠でしょう。

 この事件は、黒川問題を含め、国の本質的な構造にひびを入れかねない、とんでもない国家破壊的なリスクが、賭けマージャンがバレたなどという「ネズミ一匹」で辛くも回避された面がある、まさに危機一髪の出来事でした。

 故・團藤重光教授の観点に立つ、法務・検察の構造的問題なども指摘する必要があると考えますが、まずは真相の徹底究明と、膿を完全に出し切る措置が不可欠であるのは、誰の目にも明らかでしょう。

 現政権で「悲願」の何のと出ている「憲法」論議が、いかに問題外、論外であるか、自ら行動をもって示してしまったのが今回の顛末でしょう。

 正常化方向へ舵を切る契機として、二度とこのような腐敗堕落が繰り返されぬよう、的確な対処を講じる必要があります。

 今回の「ヘアピンカーブ」を奇禍としなければなりません。

 いまコロナパンデミックのみならず内政外交大変な時期、およそ日本が無用の憲法改変に手を付ける時期ではない。

 必要なのは、厳密な捜査であって、およそ改憲でゴタゴタする時期ではありません。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  持続化給付金に電通が選ばれる理由と日本の病巣

[関連記事]

選挙買収「自民党総裁の責任」は追及可能か?

河井夫妻の「広島代理戦争」、大逆転劇で起きること

6月17日、参院本会議に出席した河井案里容疑者(写真:Motoo Naka/アフロ)