うっかり口の中を噛(か)んだ、疲れがたまったときなどにできると言われる口内炎、早く治したいものです。そこで、口内炎についてよく耳にする情報の真偽について、歯学博士で歯科・口腔衛生外科の江上歯科(大阪市北区)院長・江上一郎先生に伺いました。

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■だ液が口内炎を改善する

Q1.口内炎ができるのは体質だから仕方ない!?

江上先生 口内炎にはさまざまな原因が考えられます。ストレスや疲労、栄養バランスの乱れで免疫力が低下し、口の粘膜が弱まって破れやすくなってできるケースが多くあります。ヘルペスウイルスの感染やカビの一種であるカンジダ菌の増殖が原因のケースもあります。

ホルモンバランスの乱れや貧血、体調の変化などによってだ液の分泌量が減ると、ちょっとした傷が口内炎に発展してしまう可能性もあります。

また、歯の磨き残しが原因で、細菌が繁殖して口内炎ができることもあります。正しい歯磨きで口の中を清潔に保って、口内炎を予防しましょう。

Q2.口内炎を治すには、だ液が効力を発揮する!?

江上先生 はい、そうです。だ液は、口の中を細菌から守って清潔に保ち、口の粘膜を保護し、炎症を沈める役割があります。だ液の分泌を促すことで、口の中に生息している雑菌の繁殖を抑えることができます。だ液を分泌させるためには、食べ物をしっかり噛(か)んでください。

だ液の分泌量が少ないと感じられる方は、口内炎のほか口臭やむし歯の悪化にも影響します。歯科や口腔外科でだ液の分泌量をはかり、体質改善のアドバイスを受けてください。

Q3.口内炎ができたときはビタミンを摂取するといい!?

江上先生 口内炎ができる原因の一つに、栄養バランスの偏った食生活が挙げられます。皮ふの細胞の活性を促す作用のビタミンB2が不足すると、唇や舌などの粘膜が影響を受けて、口内炎ができやすくなるのです。

ですから、そのようなビタミン不足が原因の場合には、ビタミンB2を主とした製剤を服用するのは有効です。

しかし、だ液の分泌量の低下やウイルス感染など、別の原因の場合は、効果はありません。

Q4.口内炎ができたときは歯磨きをするといい!?

江上先生 口の中を清潔にするために、歯磨きは最も適しています。ですが、口内炎ができているときには慎重にしてください。

ブラシが患部に触れないようにして、やさしく磨くことが大切です。普段使っているブラシよりもヘッドが小さくて、毛の柔らかいタイプを選ぶとよいでしょう。

また、発泡剤を含まない低刺激の歯磨き剤か、歯磨き剤なしでブラッシングするようにします。

舌の前方や口蓋(こうがい。口内の上側の壁)が広く荒れる口内炎の場合は、1日に3回程度、刺激が少ないうがい薬でうがいをしましょう。市販の洗口剤やうがい薬には、アルコールや刺激の強い香料などが含まれている種類もあるので、注意して刺激が少ないタイプを選んでください。うがい液は40℃程度に温めると刺激が少なくなります。

Q5.口内炎は放っておけばそのうち治る!?

江上先生 口内炎は患部がこすれやすく治りにくいのが特徴です。特に、1週間以上治らない場合は腫瘍(しゅよう)の可能性もありますので、軽視は禁物です。

また、同じ場所に何度も口内炎ができるという人は、歯並びや歯の形が原因の場合があります。眠っている間や無意識のうちにほおの内側を噛(か)んだり、唇が歯でこすれて傷ができる場合は、再発する危険が高いでしょう。

そのような場合は、歯科で「口の中を傷つけやすい歯並び」か、ほかに原因があるのかを診断してもらってください。原因がはっきりすると対策がとれます。歯の形に問題がある場合は、矯正や歯を削るなどの治療をすることもあります。

口内炎ができたときは、何が原因かを見つめ直して対処しつつ、何度も同じ場所にできるときや長く完治しない場合は歯科を受診するようにしましょう。

監修:江上一郎氏。歯学博士。専門は口腔(こうくう)衛生。歯科・歯科口腔外科の江上歯科院長。
江上歯科 大阪市北区中津3-6-6 阪急中津駅から徒歩1分、御堂筋線中津駅から徒歩4分 TEL:06-6371-8902 http://www.egami.ne.jp/

(岩田なつき/ユンブル)

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