この度、株式会社Kids Public(東京都千代田区 代表:橋本直也)は、同社が運営する「小児科オンライン」及び「産婦人科オンライン」に、産後女性を対象とした産後うつスクリーニング評価システムを実装し、精神的負担を抱える女性の長期的支援への活用を2020年2月から開始しました。
スマホから産婦人科医・助産師・小児科医に気軽に相談できる環境を活かし、安心して子育てができる支援を行うとともに、精神的負担の大きな産後女性へのより手厚いケアを提供します

●背景1:日本で大きな課題となっている「虐待報告件数増加」や「産褥婦の自殺」

日本では、世界の中でもトップレベルの「妊娠出産を安全に迎えることができる体制」が整っています。それは、周産期死亡率、新生児死亡率、乳児死亡率、妊産婦死亡率などの指標をみてもわかります。しかしながら、近年では妊産婦や育児中の女性におけるいくつかの課題が浮き彫りになってきています。その例として、「虐待報告数増加」や「産褥婦の自殺」が挙げられます。厚生労働省から発表されている児童相談所での児童虐待相談対応件数は年々増加傾向にあり、保護者の精神疾患や精神不安、育児ストレスなどが背景に存在すると考えられています。また、2016年以降、妊産婦における自殺が想定以上に多く発生していることが把握され、産後うつ病をはじめとした精神疾患が強く関連していることが報告されています。

参考:
厚生労働省平成30年児童相談所での児童虐待相談対応件数(速報値)
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000533886.pdf
社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会:子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第15次報告)2019年
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000533868.pdf
・竹田 省:妊産婦死亡“ゼロ”への挑戦,日産婦誌 2016;68(9):1815–1822.

●背景2:産後うつ病のスクリーニングが産後1ヶ月以降は困難な現状
産後うつ病発症の危険因子として、妊娠中の継続した不安、非妊娠時ならびに妊娠中のうつ病の既往、社会的支援の不足、家庭内暴力などがあります。また、産後うつ病は産後3ヶ月時点で最も多く認められ、3ヶ月以内に発症することが多いと報告されています。現在では国内のほとんどの医療機関で、産後1ヶ月時点での産後うつ病スクリーニングが実施されていますが、それをすぎると産婦人科との接点が減り、産後うつ病スクリーニングの実施が困難となるといった状況があります。このため、産後1ヶ月健診を終えた後の時期に、産後うつ病発症やその可能性がある女性をどのようにして拾い上げるかという問題は、大きな課題と考えられます。

参考:
Gavin NI, et al. Perinatal depression: a systematic review of prevalence and incidence. Obstet Gynecol. 2005 Nov;106(5 Pt 1):1071-83.

●オンラインでの産後うつ病スクリーニングとフォローアップにより産後うつ予防や行政機関への連携を図る
通常、医療機関で実施される産後うつ病スクリーニングには「エジンバラ産後うつ病質問票(Edinburgh Postnatal Depression Scale:EPDS)」が用いられます。EPDS日本語版は妥当性を検証された評価スケールで、現状は紙ベースで実施されていますが、日本国内でEPDSをオンライン上で活用している事例はほとんど報告がありません。一方で、海外では情報通信機器を用いた産後うつスクリーニングに関する研究報告が数多く出されており、EPDSが最も多く利用されています。
日本国内ではまだ知見が少ないため、遠隔健康医療相談にEPDSを組み合わせることによる産後女性の長期的支援を図るとともに、関連データを集積・解析することで、国内における産後女性の支援に貢献したいと考えています。なお、弊社ではEPDS結果により精神的負担が懸念される女性に対し、オンライン相談の促しやメールでの情報提供、フォローアップ評価などを実施しています。

参考:
Martínez-Borba V, et al. The Use of Information and Communication Technologies in Perinatal Depression Screening: A Systematic Review. Cyberpsychol Behav Soc Netw. 2018 Nov 30. [Epub ahead of print]

●システム実装直後に集められた500件の解析結果
2020年2月以降に、オンライン上で回答があったEPDSの結果500件を集計すると、以下のようになりました。あくまでも回答があった結果のみの集計であり、母集団全体へ一般化することはできませんが、スクリーニング陽性者が少なくないことが伺えます。

・回答者のうち産後1-3ヶ月が40%と最多で、4-6ヶ月(29%)、10-12ヶ月(24%)、7-9ヶ月(4%)、1ヶ月未満(2%)でした。
・全体で37%の回答者がスクリーニング陽性(合計点9点以上)でした。
・産後時期ごとでは、陽性者の割合は1ヶ月未満(75%)、1-3ヶ月(39%)、4-6ヶ月(29%)、7-9ヶ月(71%)、10-12ヶ月(33%)でした。

●産婦人科オンライン代表 産婦人科医 重見大介コメント
近年では妊産婦の精神的不安やうつ病に関心が集まっています。産後うつは7名に1名の割合発生するとも言われており、妊娠中からの細やかなサポートや産後の支援充実といったさまざまな取り組みが国内でも整備されつつあります。
ところが、行政や医療機関では、マンパワーの確保が難しいなどの面から体制整備が簡単には進められていないように感じています。そのような社会状況において、オンラインのメリットを活かし、妊娠中から産後の長期間を切れ目なく支援できるしくみ作りは、精神的負担を抱えている女性にアプローチできる可能性を広げられるかもしれません。
今回の集計結果では約4割の女性で産後うつ病の懸念があり、さらには産後半年以上が経過しても精神的負担を抱えている女性が少なくないことが示唆されました。もし不安やストレスがあったり、誰かと話をしたいといった場合には、ぜひ私たちにご相談いただければと思います。産婦人科オンライン、小児科オンラインに参加する産婦人科医、小児科医、助産師が、適切な情報の提供とともに不安に寄り添い、妊娠中~産後の女性を全力でサポートします。

●本件に関するお問い合わせ先
株式会社Kids Public 広報室
■所在地:東京都千代田区神田小川町1−8−14 神田新宮嶋ビル4階
■TEL:03-4405-9862
■E-Mail:contact@syounika.jp
■設立日:2015年12月28日
■代表者:代表取締役社長 橋本 直也(小児科医)
■事業内容:「子育てにおいて誰も孤立しない社会の実現」を理念として、インターネットを通じて子どもの健康や子育てに寄り添う。遠隔健康医療相談サービス「小児科オンライン」(https://syounika.jp/)「産婦人科オンライン」(https://obstetrics.jp)及び医療メディア「小児科オンラインジャーナル」(https://journal.syounika.jp/)「産婦人科オンラインジャーナル」(https://journal.obstetrics.jp/)を提供。

配信元企業:株式会社Kids Public

企業プレスリリース詳細へ

PR TIMESトップへ