森友学園との土地売却をめぐる文書の改ざん問題で、財務省近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんが自ら命を絶って2年。第三者委員会による公正な調査を求め続けてきた妻・雅子さんは6月15日安倍総理、麻生財務大臣に宛てた35万筆の署名を提出した。しかし麻生大臣は「今の段階で再調査を考えているわけではない」とし、改めて再調査を否定した。

・【映像】森友問題「再調査を」35万人署名になぜ黙殺? "国民の声"どう届ける? ネット署名の意義


■日本最速・最多だったキャンペーン

 雅子さんが利用したのは、従来のように街頭に立ってお願いするものではなく、キャンペーンサイト『Change.org』による“ネット署名”だった。時間や場所に左右されないこともあり、プリンアウトすると段ボール5箱分にもなる35万筆が、わずか3カ月で集まった。

 「Change.org」の武村若葉カントリーディレクターは「誰でもキャンペーンを立ち上げられるので、本当にいろいろな主張が展開されている。メールアドレスによる認証も行っているし、同じIPアドレスからの短時間でのアクセスなどスパム的な動きについても検知し、水増しに当たるものは削除するなど、信憑性を担保する仕組みも備えている」と話す。

 「Change.org」では、これまでも様々なキャンペーンが展開されてきた。2014年、都議会で「お前が結婚しろ」などのヤジを飛ばした議員の処分を求め5日間で9万人の署名が集まり、本人は謝罪し会派を離脱。また、2016年には奄美大島の巨大クルーズリゾート計画に対し、治安や環境の悪化を懸念する5万人が署名。鹿児島県知事に提出され、計画は中止されている。「意思決定に影響を与えたケースは数えきれない。アメリカでは最近、ジョージ・フロイドさんの問題で、現場にいた警察官たちを逮捕し、裁判にかけてくださいというキャンペーンが立ち上がり、実際に逮捕されている」。

 そんな「Change.org」で展開されたキャンペーンの中でも、とりわけ今回は“日本最速”、そして“日本最多”だったのだという。「黒川元検事長の賭け麻雀問題に関するネット上での呼びかけも拡散していたが、やはりコロナの影響で、身近な問題と政治の問題が密接な関係にあると実感した人が増えたこともあると思う。これまで最も多かったもので12万筆くらいだったので、少しでも声を届けたいと考えた人が多いのだろうと感じる」。
 

■「35万」という数字の持つ意味

 NHK記者として森友学園問題の取材に携わり、大阪日日新聞の論説委員となった現在も取材を続ける相澤冬樹氏は「提出のタイミングは損害賠償請求の裁判が始まる前にということと、国会の会期を意識してのことだったが、その直前に35万筆を超えることができたのには大きな意味がある。このキャンペーンに多くの賛同が集まっていることについて会見で尋ねられた菅官房長官が、“星野源さんと安倍総理コラボ動画に35万もいいね!が付いた。それに比べれば少ない”という趣旨の回答をした。雅子さんはそれを聞いて、“次の目標は35万にする”と活動を続けていたからだ」と話す。

 ジャーナリストの堀潤氏が「自民党Change.orgで集められた待機児童に関する署名については受け取り、政策に活かすと言っていた。都合の悪いものは受け取らないというのはダブルスタンダード」だと憤る。

 この点について相澤氏は「再調査に結びつかなければ署名をやった意味がないと受け止める人もいると思う。しかし、35万人もの賛同者が集まったこと、そして、それでも再調査をする必要がないと考えていることが明らかになったことには価値があると思う。妻の雅子さんも、これだけの人が賛同してくれたにもかかわらず再調査をしないのはひどいと感じてはいるが、勇気づけられてもいると思う。俊夫さんが亡くなった時、雅子さんは本当に独りぼっちだった。段ボールに詰められた署名は全て雅子さんの自宅に送られ、これだけの味方がいると俊夫さんにも報告された。いよいよ15日からは裁判が始まるが、これは証人として佐川元理財局長などの重要人物を呼び、真相を解明していくのが狙い。原告にとって心強いものになる」と話した。
 

■新しいハッシュタグを使った展開も

 今後について相澤氏は「Twitterで“#赤木さんを忘れない”というハッシュタグを使っていたが、今度は裁判に向けて新たなハッシュタグを作ろうと考えた。俊夫さんは上司に改ざんをさせられて命を絶つことになったが、上から理不尽なことをやらされて、その責任も負わされるということは、世の中にたくさんあると思う。これは他人事ではない。誰にでも起きることだということで、“#赤木さんはあなたです”というのが、メッセージとしてもふさわしいと思っている。そして、署名が集まった時、“そんなの裁判でやればいい”と言った人もいた。そうではなく、政府が最初からきちんと調査をしていれば、雅子さんが個人で費用を負担し、裁判を起こす必要もなかった。その意味で、“赤木さんに真実を”だ」と説明。

 また、「裁判のスタートに合わせて、『私は真実が知りたい』という本が全国の書店に本が並ぶ予定だ。今日中(6月29日)に校正が終わらなければダメだと言われていたが、この番組に出るので、なんとか先延ばしてもらった。帯のイラストは、絵が得意な赤木雅子さんの手描きだ」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
 

▶映像:森友問題「再調査を」35万人署名をなぜ黙殺? "国民の声"どう届ける? ネット署名の意義

赤木俊夫さんの妻が森友問題“再調査”を求めた署名キャンペーン 「35万」という数字が持つ意味