7月5日投開票の東京都知事選挙に向けて激しい選挙戦がスタート。現職の小池一強の様相を呈すなかで、過去最多の22人が出馬を表明。そこで本命候補以外の演説を見て、彼らの主張を聞いてきた。

東京都知事選2020首都決戦・ド本命候補以外の主張

 新型コロナウイルスへの対応、’21年夏に延期された東京五輪パラリンピック開催の是非などが争点となっている東京都知事選7月5日の投開票日に向けて、いよいよ佳境を迎えようとしている。

 現職・小池百合子候補の圧勝が確実視されるなか、元日弁連会長の宇都宮健児候補や前熊本県副知事の小野泰輔候補、れいわ新選組代表の山本太郎候補らがどれほど票を削るかが焦点といわれている。

 一方で都知事選といえば、過去にドクター・中松氏や故・内田裕也氏など無頼系独立候補の出馬も話題を集めたが、今回はどんなニューフェイスが揃ったのか? 記者が熱戦の舞台、首都東京を歩いた。

◆異色の候補者たちが語るそれぞれの思い

 まずは、スマイル党推薦の介護士・込山洋候補が駅頭に立つ渋谷に向かった。スマイル党といえば、天使のコスプレ姿で政見放送ジャックするなどド派手なパフォーマンスで4度、都知事選を戦った(いずれも落選)マック赤坂氏(現・港区議)を思い浮かべる方も多いだろう。何を隠そう、込山候補はマック氏の付き人をしていた“正統後継者”なのだ。しかし、街頭演説を見る限り、往年のマック氏を彷彿させるようなキレッキレの「スマイル!!」の連呼は鳴りを潜め、笑顔はぎこちなく初々しい印象を受けた。支援者の女性に込山候補の魅力を聞いてみた。

「彼は1年間渋谷・ハチ公前で清掃活動を続けたり、とにかく実直な方。46歳とまだまだ若いので、未来がある有力な候補者だと思う」

 続いて、西本誠候補が同じ場所で演説を始めた。自称“スーパーレイジー君”と名乗る当選挙きっての異色な候補者だ。雨が降りしきる中で特攻服を身にまとい複数のダンサーとともに、ダンスパフォーマンスを披露し始めたではないか。これには渋谷の街にいた多くの若者も足を止めていた。演説では「風営法の緩和と待機児童ゼロ」といった施策や「ハロウィンのような選挙にしたい」という抱負を語っていた。演説終了後に、西本候補にコメントを求めた。

「伝えたいメッセージ? とにかく眠っている若者の票を獲得したい」

 演説では暴走族の集会を想起させる場面もあったが、記者には彼の誠実さが感じ取れた。また、金髪が印象的な西本候補の支援者に話を聞いた。

「『若者が選挙に行けば日本の政治が変わる』という思いに賛同して、一緒に戦っています」

 選挙後半戦、さらなる磨きをかけたパフォーマンスを披露できるのか? 無頼系独立候補としての真価が問われそうだ。

 翌日は新宿で街頭演説を行う・国民主権党党首でユーチューバーの平塚正幸候補の元へ。彼はひたすら「新型コロナウイルスはただの風邪!」という主張を繰り返し述べていたが、この日、足を止める人はほぼいなかった印象だ。本人に直撃したところ「コロナは風邪だということを改めて伝えたい。ただ、ネットで妨害行為を受けているのがツラいです……」と話すなど、逆張りの公約を掲げるだけあって厳しい選挙戦を強いられていた。発言が過激ゆえに多くの都民には受け入れてもらえない現実があるようだ。

◆無頼系候補者たちが負け戦でも出馬する理由

 現職・小池一強の下、なぜ過去最多の22人の出馬があったのか?

 マスコミではなかなか取り上げられない無頼系独立候補の取材を積極的に行うフリーライター畠山理仁氏に話を聞いた。

「以前から都知事選は候補者の多い選挙といわれていますが、その要因は首都・東京の注目度がどこよりも高いこと、全国どこからでも立候補できることが挙げられます。300万円という供託金を没収されることは、大きなリスクですが、都知事選は無所属でも政見放送を流すことができる。何か訴えたいメッセージがある人にとって、300万円は安いのだと思います。それから今回はコロナ禍の選挙ということで街頭演説やビラ配りなどを普段通りに行えない不自由さがあります。無頼系の候補者は街頭演説で人を集めることがなかなか難しい。『ネットを使った選挙戦になれば勝機はあるかも!』と読んだことも一因かと思います」

 畠山氏に今回の選挙で注目している候補者について聞いた。

「私としては22人すべての候補者に注目してほしいというのが本音です。強いて言えば、前回の都知事選政見放送で卑猥な言葉を連呼して、音声をオフにされた後藤輝樹候補ですね。今回も性器の名称を連呼するなど、かなり過激な政見放送をしています。彼としては、前回の政見放送で狭められた表現の自由の幅を広げたいという思いがあるようですが……。まっとうな政策も数多く提言しているのでマニフェストもぜひ見てほしいですね。また、その他だと、“消費税廃止”を公約に揚げて山口県からやってきた竹本秀之氏の理論はまだまだ未完成なのですが、消費税について考え直すきっかけを与えてくれる。無頓系独立候補たちが提言する公約をうまく生かせるような都政になっていけば、理想的です」

 都知事選終盤は、本命候補以外のユニークな発言や理論上は難しい公約にも目を向けて一考してみるべきかもしれない。

▼込山 洋氏「東京を笑顔に溢れる街にしていきたい!」46歳/介護士
・介護施設の増設
アニマルポリスの設置
・毎月8日をスマイルデーにする
’15年4月より渋谷ハチ公喫煙所にて1年間喫煙所の清掃活動を行う。’16年4月よりスマイルマック赤坂氏の秘書。’16年9月介護職員初任者研修課程取得

▼西本 誠氏「眠っている若者の票を狙う!」33歳/歌手
・風営法の緩和
ペット殺処分における罰則の強化
・待機児童ゼロ
宮崎県宮崎市出身。政治団体スーパーレイジー君」代表。金髪姿で特攻服を着たまま演説を行う。「百合子か、俺か」という楽曲を配信リリース

▼平塚正幸氏「新型コロナウイルスはただの風邪にすぎません!」38歳/ユーチューバー
コロナ前の生活様式に戻す
ソーシャルディスタンス三密対策、自粛は不要
・ワクチンを打たない自由
ユーチューバー、社会活動家。国民主権党党首。YouTubeチャンネルではカバー曲配信なども行い、歌声はなかなかのモノ

後藤輝樹氏「表現の自由の幅を広げていきたい!」37歳/自営業・トランスヒューマニスト
・選挙の供託金廃止
・月8万円のベーシックインカム
キャッシュレス
東京まれの横浜育ち。’16年の都知事選政見放送では異例の“音声オフ”となった編集映像がオンエアされたことでも話題に!

◆マジメな候補者がいない!“レジェンド”が語る首都決戦

 コロナの影響で、これまで経験したことのない選挙戦が繰り広げられているが、7度の出馬を誇り“都知事選レジェンド”ともいえる発明家のドクター・中松氏はどう見ているのか。

「注目するような候補者は一人もいませんね! 過去最多の22人が出馬したそうですが、コロナに関する医学的な知識を持っている人はいない。また、経済対策についても希薄。これでは小池百合子候補に勝つことは無理でしょう。山本太郎候補は演説については素晴らしいと思いますが、学歴がわからない。高学歴ではないので若者代表の西本誠氏は、舞台が違うでしょうと言いたい。パフォーマンスをしたければステージの上に立てばいい。『コロナは風邪』と言い張る平塚正幸氏については無根拠すぎる。選挙というのはもっとマジメなモノであるべき」

 無頼系候補者を斬り捨てた中松氏が思う都知事選の争点は?

コロナでしょうね。そこから派生して東京五輪の延期や廃止についての問題なども出てくるでしょうから。それから、SNSオンラインだけの演説ではまったく意味がないと思っています。現状で緊急事態宣言は解除されているワケですし、街頭での演説や握手をしないと熱量や迫力は伝わらないですよ!」

 そこで三密防止の問題を解決する発明をしたという。

「飛沫感染と接触感染を防止すれば感染の拡大は止まる。私が発明した、透明板で顔全体を覆う『スーパーメン』や指先に貼るテープ状の『安タッチ』を使えば、感染なしでこれまで通りの選挙に近い活動ができる。ぜひ実践してほしい! 最新の発明を駆使しないと今回の都知事選は勝てませんよ」

 決戦の日まで残りわずか。無頼系独立候補の新たなスターたちにも審判が下る。

畠山理仁氏】
フリーライター。著書に『黙殺 報じられない”無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)など。大手メディアが取り上げない独立系候補の取材を積極的に行う

ドクター・中松氏】
国際創造学者にしてフロッピーディスク、灯油ポンプを生み出した世界的な発明家。7度の都知事選出馬をはじめ、数多くの選挙に出馬するなど選挙でもレジェンド的存在である

<取材・文/瀬戸大希 撮影/横田一>
※週刊SPA!6月30日発売号より