自動販売機運営の会社に対して、5人の従業員が残業代など未払い賃金計約2400万円の支払いと、不当な配置転換の無効を求めて東京地裁に提訴した。また、付加金として約1800万円も求める。提訴は6月22日付。

原告は「シグマホールディングスグループ自動販売機ベンダーシグマベンディングサービス(V社)」(埼玉県さいたま市)、「シグマロジスティクス(ロジ社)」(東京都品川区)の従業員計5人で、自販機産業ユニオンに加盟している。

6月29日に会見した従業員は「会社は定額働かせ放題の固定残業代を悪用している」と訴えた。一方、シグマグループは「定額を超えた分は別途支払っており、定額ではない」とし、両者の主張は真っ向から対立している。

従業員「月平均100時間の残業」

原告A〜Dさんの4人はV社の浦和営業所(さいたま市)に、原告Eさんはロジ社の大田営業所(東京都大田区)に所属している。いずれも2012年5月以降に入社し、運転・商品補充など「ルートセールス」の作業に従事していたが、2020年6月1日にV社のAさん、Bさん、Dさんの3人は配置転換を命じられて倉庫業務に就いている。

原告側が裁判で主に求めるものは2つ。未払い賃金の支払い請求と、配置転換の撤回だ。

(1)未払い賃金の支払い請求

実際の労働時間は企業からの資料提供を待って計算する必要があるものの、原告側は従業員が月平均100時間、最長で150時間もの残業を強いられていると主張。また、人数不足と作業量の多さから、1時間の休憩をほとんど取れていないという。

また、団体交渉において、シグマグループは、総支給額のうち、基準内賃金を「基本給」「達成手当」「地域手当」とし、基準外賃金を「定額残業手当」「配送手当」「営業手当」「休日出勤手当」に当たると主張したそうだ。

これら定額残業手当などの基準外賃金を「固定残業代」とみなしているそうだが、原告側は固定残業代として適切に運用されておらず無効として、2017年12月勤務分から計算し直して請求している。

代理人の市橋耕太弁護士は「通常の賃金として固定的に支払われるものと、残業代を区別しないといけない。また、定額残業手当は、何時間分に対する手当として支払われているのかわからない。金額が変わったりもする」。

配置転換は組合員を狙ったもの?

(2)配置転換の撤回

原告は配置転換の無効も主張している。6月に配転の命令を受けた5人中、3人が組合員。残り2人の非組合員もA、Bさんのチーム、Dさんのチームメンバーだった。

原告側は、浦和営業所にはルートが40以上あり、100人近くのセールスマンがいることから、組合員を狙ったものだとして、不当労働行為であると主張。ユニオン6月26日東京都労働委員会に救済を申し立てた。

同社からは「ルートを他社に引き継ぐことで生じた余剰人員を倉庫業務に就かせた」と説明を受けたが、「納得のいく説明ではない」とする。

また、先立って2020年3月5日には、大田労働基準監督署が、Eさんの働くロジ社大田営業所に、4項目の是正勧告を出した。

ユニオンの青木耕太郎執行委員らによると、是正勧告にあたって以下の事柄が認定されたという。36協定で定める時間外労働の上限「79時間」を超えた残業、最長で月200時間超の時間外労働(管理職)、法定の休憩時間(8時間労働につき1時間)が取られていないこと、割増賃金の不払い。

ただし、その内容をめぐってもユニオンと会社側の言い分が食い違っている。

青木執行委員によると、是正勧告が出されてなお、長時間労働がなくなっていないという。

「会社は『休憩も取りなさい』と言うようになったが、取れるようになる具体的施策がないため、休憩は取れていない。未払い賃金に関しても支払いがされていない」

会見に出席したAさんは労働の長さときつさを嘆く。

「6〜8月が飲料業界の最盛期とされていて、500ミリペットボトルの運搬量は涼しい時の2倍。作業時間も増えますが、会社は固定残業代を悪用して、何時間働いていても、賃金が固定される定額働かせ放題に等しい環境を作り上げてきました」

シグマグループは「未払い賃金」存在せず

原告側の主張に対して、シグマグループはどう反論するのか。6月30日弁護士ドットコムニュース編集部の取材に、グループの顧問弁護士、ロジ社・V社の総務部長が答えた。

ーー原告側は未払い賃金の支払いを請求しています

総務部長 「未払い賃金のほうがございません。適切にお支払いさせていただいております」

顧問弁護士 「みなし残業代手当(固定残業代)については、裁判所でみなし残業代手当であるという認定が出ると考えています。また、その記載は(従業員との間の労働)契約書に載っています。

各種諸手当に関しては、時間外手当相当分としてお支払いをするということが賃金規定に記載されております。また、みなし時間外労働手当については、大田労基署も適法であると判断しております」

ーー原告側は倉庫業務への配置転換は不当であると主張しています。配転に理由があれば教えてください

総務部長 「当社の就業規則の第10条『会社は業務上必要がある場合は、勤務場所、あるいは職種を特定して採用されたものでも、転勤、職種の変更、および出向、転籍を命ずることができる。社員は期間内にこれに従う義務がある』に基づいて配置転換を適切にやらせていただいております」

ーー今年3月5日、労基署から是正勧告が大田営業所に出されましたが、どのような勧告で、どのような改善を実施しましたか

総務部長 「是正勧告は確かに受けておりますが、詳細な内容に関しては差し控えさせていただければと思います。ただ、労基署にも、すでに改善を認めていただいております」

ーー是正勧告がなされた後に、割増賃金が支払われたという認識でしょうか

総務部長 「是正勧告がなされる前に割増賃金は支払いました」

(編注:7月2日午後1時55分、午後6時半修正)

過労死ライン超でも「残業代」は定額? 自販機の補充員ら、2400万円求めて会社提訴