さまざまな理由で帰国できず、在留資格がない外国人の収容が長期化している問題をめぐり、法務省・出入国在留管理庁の専門部会がまとめた提言に対して、難民問題などに取り組む弁護士たちが強く反発している。

●日本生まれの子どもも処罰対象になるおそれ

有識者でつくる「収容・送還に関する専門部会」は6月、在留資格のない外国人(仮放免者)が難民申請中も送還できるようにしたり、国外退去命令を拒否すると罰則(送還忌避罪・退去強制拒否罪)を科すことなどを盛り込んだ提言をまとめた。

こうした状況を受けて、難民問題などに取り組む弁護士たちが6月29日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。高橋済弁護士は次のように専門部会の提言は深刻な問題があるとして批判した。

「難民申請の99%以上が不認定になっている現状において、(難民認定される人でも)みんな一度は不認定にされている。そういう前提があるにもかかわらず、『再申請は濫用だ』として送還できるようにするというもので、非常に問題が大きい」

オーバーステイの両親のもと、日本で生まれ育って、中高生になっていく子どももたちがたくさんいる。(罰則の新設は)、そういう子どもたちも(犯罪者として)処罰されてしまうおそれがある」

●調査がつくされてない

この日の会見では、ペルー国籍の高校生・ホセさん(仮名・仮放免)と、ガーナ国籍の大学生・アリスさん(仮名・仮放免)の肉声をおさめた録音データも公開された。2人とも生まれてから一度も日本から出たことがないという。

ホセさんは現在、株や金融についての勉強をしており、将来はそれらに関連する職業につきたいと考えているが、仮放免なので、「バイトもふつうの仕事もできない状態」だ。「とてもつらい状況です。早く在留資格がほしいです」と話した。

アリスさんは、日本で暮らす外国人を助けるような通訳の仕事に興味がある。しかし、彼女もこのままでは就職できない。「先が見えないまま勉強しています。すごくモチベーションをあげることが大変です」と訴えた。

仮放免の未成年者は300人程度とされているが、その中に日本生まれの人がどれくらいいるかなどはわかっていないという。高橋弁護士は「専門部会では、難民申請者やその家族の実態についても調査がつくされていない」と指摘した。

「日本生まれの外国人も処罰されるおそれ」 入管専門部会の提言に弁護士たちが批判