テリー 僕らから見ると、渥美清さんって伝説的な人になってしまったわけですが、正直言って、どういう存在なのかが今でもよくわからなくて。

佐藤 そうか、俺はかわいがってもらったからね。

テリー 実は2回ほど「男はつらいよ」の撮影現場にお邪魔したことがあるんです。でも、渥美さんってふだんは人見知りだし、あんまりしゃべらない方でしたよね。挨拶だけしてスーッと行っちゃう、みたいな感じでした。

佐藤 そうそう、基本的にはそういう人だよ。よく一緒に御飯を食べに行きましたけどね、撮影中に「腹減ったなあ」なんて言うと、「六本木の寿司、行こうか。あそこ高いけど、うまいぞ」って、連れて行ってくれてね。

テリー そういう場では、どんな話をするんですか。

佐藤 そうだなぁ、最近見た映画や本の話とか。

テリー やっぱりふだんから物静かな感じなんだ。

佐藤 実は、渥美さんがすごいサービスをしてくれたことがあったんだよ。「お前、六本木の店なんかで歌ったりすること、あんのか」って聞かれたことがあって、「ありますよ」「じゃあ、その店行こうか」という話になった。店に着いたら「蛾次郎、『男はつらいよ』歌えるか。じゃあ、ちょっとバンドに言ってこい」と。

テリー へえ、カラオケじゃなくて生バンドが演奏する店なんですね、贅沢だ。

佐藤 で、イントロが始まったら「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯をつかい‥‥」と寅さんの仁義を切ったんだよ。その場にいたお客さんは「ワーッ!」ってもう大喜びしてね。

テリー そりゃそうですよ。渥美清の生仁義だもの。

佐藤 でも、それが終わったら「お前、行け」ってマイクを渡されて、歌は俺が歌ったの。

テリー あの渥美さんがそんなサービスをしてくれるなんて、相当珍しいことじゃないですか。

佐藤 そうなんだよ、誰も信用しない。関敬六にその話をしたら「ウソだろ、渥美さんはそんなことしない」の一点張りでさ。

テリー すごいな、それだけ渥美さんは、蛾次郎さんと一緒にいる時間を楽しんでいたんでしょうね。

佐藤 渥美さんの一声で、タヒチに行ったこともあるんだ。「蛾次郎、タヒチ行こうか。俺、全部(費用を)出してやっから。お前と俺、チーちゃん(倍賞千恵子)と山田監督と、あとスタッフ5人ぐらいで」なんて誘われて、1週間行ったんですよ。

テリー すごいメンバーじゃないですか、夢のようですね。

佐藤 楽しかったよー。ホテルに入って「じゃあ、2時にプールに集合!」ということになった。そしたら倍賞さん、ヴェルサーチかなんかのきれいなワンピース着てきちゃった。だから俺が「ダメだよ倍賞さん、ここはニューオータニじゃないよ、タヒチだから。俺がビキニ買ってやるから、それ着てよ」って言ったら、「自分で買うわよ!」って次の日は本当にビキニを着てきた。

テリー えっ、倍賞さんのビキニ姿!? いいなぁ、写真とかないんですか。

佐藤 ビデオを撮っていますよ、他人には見せないけれどね。

テリー そんなこと言わないで、お宝映像見せてよ!

佐藤 ハハハハハ、そんなに期待しないでよ。遠くで遊んでいるような内容だから。でも、みんなで泳いで飲んで騒いで‥‥。あれは本当に楽しかったな。

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