「東京が感染爆発を起こしている!?」

2020年7月2日107人の新型コロナウイルスの新規感染者を出したばかりの東京で3日、新たに124人が感染していることがわかった。これは第2波が来たのだろうか?

東京都小池百合子知事は、お得意の言葉遊びのように「夜の街への外出を控えてください」と繰り返すだけ。政府は、菅義偉官房長官が「直ちに緊急事態宣言を出す状況に該当するとは考えてない」と突き放したばかりか、西村康稔経済再生担当大臣が「みんなが努力しないとウイルスには勝てない。また同じような緊急事態宣言になる」と逆ギレしたかのように強い口調で国民にハッパをかける有様だ。

ネット上では「東京だけでもロックダウンしないと、元も子もなくなる」という不安の声が強くなっている。主要メディアの論調とネットの声から読み解くと――。

専門家は「第2波の深刻な事態」と「まだ大丈夫」に二分

専門家たちは、今回の東京都感染者数が、一気に3ケタに跳ね上がったことをどう見ているのだろうか。

じつは一番厳しい見方を示しているのは、小池都知事のブレーンであり、会見に同席した国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長だ。東京新聞7月3日付)「都内感染107人 小池氏『夜の街で増加 自粛を』」によると、こう述べたのだった。

「感染経路不明の数も増えており、(小池都知事は積極的な検査を行った結果の増加だとしているが)陽性者数の増加は積極的な検査によるものではない。7月1日までの直近7日間の経路不明者は27.1人、前週比158%となっており、この状況が続くと、4週間後には約6倍(1日当たり160人)、さらに4週間後には約40倍(1日当たり1080人)になる」

と推計したのだ。

つまり、1週間ごとに1.6倍のペースで増加していくというのだ。ただし、このペース7月1日が67人だった数字を元に試算している。7月3日124人と、すでに2日間で2倍のペースになっているから、もっと急上昇する可能性もあるわけだ。

東京医大の濱田篤郎教授(感染症学)も毎日新聞7月3日付)「コロナ再拡大現実味」の中で、こう警鐘を鳴らした。

「深刻な事態だ。感染が『夜の街』でとどまっているうちに早急に手をうつ必要がある。7~8月は、秋以降に予想される第2波に向けて体制を整えたり、医療従事者を休ませたりする大事な時期だ。今感染が広がるとそれができなくなる」

東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授(感染症学)も、産経新聞7月3日付)「東京コロナ再燃兆し」の中で、こう厳しい見方を示している。

「都内の感染状況は(隣接する神奈川、埼玉、千葉への伝播も顕在化して)全国に影響を与え、大規模な流行になる可能性がある。検査を徹底した経緯はあっても、第2波の前段階につながっていくと捉える必要がある」

として、早く手を打つべきだと強調する。

その一方で、確かに心配な状況ではあるが、今年4月の第1波の時の状況とは異なり、経済活動を止めるほどではないだろうと、やや楽観的な見方をする専門家も少なくない。聖路加国際大学大学院の遠藤弘良・公衆衛生学研究科長は、日本経済新聞7月3日付)「都、2か月ぶり100人超感染」のなかで、こう指摘している。

感染者の中で経路不明者が一定数いることが懸念材料だ。神奈川などの近隣県で増えているのも東京の影響がある。(しかし、さらに感染者が増えても)4月の緊急事態宣言時と違い、すべての経済活動を止める必要はないだろう。クラスター感染者集団)が発生しやすい一部の業種に休業要請をするなどの対策であれば、日常生活への影響も限定的にできるのではないか」

順天堂大学の堀賢教授(感染制御学)も朝日新聞7月3日付)「感染者7割若者 都外にも影響」の中で、こう述べている。

「感染拡大基調であることは間違いない。(しかし)以前は症状がある人が保健所を通じて検査していたが、今はホストクラブの従業員らが症状はなくても集団で検査を受けている。今回の100人超えは4月とは意味合いが違う」

いずれにしろ、放置しておいていいはずがなく、政府や東京都は新たな対策を示すべきだという声が目立った。たとえば、朝日新聞7月3日付)「『次の波』に備え国は戦略を示せ」に掲載された橋本英樹・東京大学教授(公衆衛生学)の、こんな意見に代表される。

「これまで感染症対策の柱だった結核は少数の患者を追いかければよかったので、紙ベースでも十分対応できた。新型コロナは多数の患者に同時に対応しなければならず、しかも感染確認から経過観察、接触者リストに至るまで膨大なデータ収集を必要とした。結果、システムの未整備によって保健所の業務が滞った」

橋本教授は「紙ベース」の保健所に国の新システムが導入されたが、集めたデータをどう役立てるのか、国、都道府県市町村のそれぞれの役割が不明確だと指摘する。

「国は集めたデータをいつ、何の判断に使うのか明確にする必要がある。次の波が来るまでに、国の対策本部は情報収集や利活用についてデータ戦略を示すべきだ」

と強調するのだった。

緊張感ゼロで東京都の数字を信用しない政府

今回、東京都と政府ともに「経済を優先」をする立場から緊急事態宣言の再発令には消極的な姿勢が目立った。毎日新聞7月3日付)「再発令慎重『総合的に判断』景気悪化を懸念」は特に政府の緊張感のなさを、こう追及する。

「政府は今回、東京で2か月ぶりに100人を超えても再発令には消極的だ。首相や関係閣僚が対応を協議する『連絡会議』が20分で終了。首相は記者団に『高い緊張感をもって、東京都と緊密に連携していくことが大切』と述べたものの、官邸内に『緊張感』は漂っていない」

という。

その理由は、景気回復の兆しがいっこうに見えないどころか、前日(7月1日)に日銀が公表した6月の企業短期経済観測調査(短観)で、リーマン・ショック級の悪い数字が出たこともあった。毎日新聞が続ける。

「再び緊急事態宣言を発令すれば更なる景気悪化は避けられず、与党内からも『もう一度出すのは無理だ』(自民党幹部)とけん制の声があがる。政府・与党内には東京都の対応への不信感も募る。『東京アラートは小池都知事のおもちゃだ。中身が変わらないのに(緊急事態宣言を出しても)意味がない』(自民党幹部)と懐疑的な見方が強くあった」

そもそも東京都が発表する感染者数に政府の不信感があったというのだ。政府関係者は「感染者の内訳も都は、はっきりさせていない。経路不明と若い人の関連も、情報が出てこないのでよくわからない」と漏らしたという。そんな東京都が発表する数字に、右往左往して再び緊急事態宣言を発令することなどできるかというのが政府のホンネのようだ。

東京都「国が緊急事態宣言しなければ何もしません」

一方、朝日新聞7月3日付)「要警戒 休業無し 都『国の緊急事態宣言なければ』」は東京都側の慎重な事情を、こう説明する。

「再び広がり始めた感染状況を受けても、都は再度の休業要請には後ろ向きだ。都幹部の一人は『これ以上、経済を止めることはできない。国の緊急事態宣言をしない限り、都としてやることはあり得ない』と明かす」

また、朝日新聞は今、政府にとっても緊急事態宣言を出すのは「最悪のタイミング」だとして、

「政府は段階的に経済社会活動の水準を引き上げていく方針で、イベントの参加人数上限を1千人から5千人に引き上げる次のタイミング7月10日に控える。むしろ、観光や飲食業向けの『Go To キャンペーン』による消費喚起と人の移動を急ぎたい考えだ。菅官房長官は『経済を回していかないと』と頻繁に口にする。官邸幹部は『単純に人数だけを見ても仕方がない』」

と説明。冷ややかだ「夜の街。お互いに責任をなすりつけた形だ

こうした政府と東京都の対応をネットの人々は、どう見ているだろうか。

ヤフーニュースが「みんなの意見」で「緊急事態宣言、再発令は必要と思うか」とアンケート調査を行ったところ、7月3日18時現在、「思う」84%、「思わない」13%(18万1279票)と、圧倒的に「緊急事態宣言を出すべきだ」という声が多かった。

「夜の街」に責任転嫁する小池都知事は職務放棄だ

ネット上では、小池都知事が「夜の街へ出かけるのを控えて」と強調するのなら、「東京都が夜の街対策を急ぐべきではないか」という声が非常に多かった。

「夜の街のせいで感染が広がっているのなら、原因がわかっているのだから、何らかの対応が必要なのでは。自粛要請に従わなかったパチンコ店に対しては店名まで公表し、マスコミが連日店に殺到して批判した。でもパチンコ店からはクラスターは出なかった。それに比べて、クラスターが発生しているホストクラブやキャバクラは店名も公表しないし、指導が甘すぎる。もう一度、接待を伴う飲食店を休業の対象にするなど、もっと強く規制して欲しい。そうしないと真面目にやってきたほかの飲食店の努力が無駄になる」
「都知事が『夜の街控えて』だけしか言わないって、あまりに無策で悲しくなりますね。『控えてほしい』では政策ではありません。行政として、認めるのか、認めないのかはっきりさせるべきです。『控えて』といわれていうことを聞く人ばかりだったら、こんなに広がらないよ。夜の街に近づくなと言うだけではなく、行政ができることを考えてほしい」
「客の安全を確保したり、従業員の検査を定期的にやっていたりする店舗には『安全』を都が認証するとか。そういうこともなく、忌避意識だけを植え付けるやり方では、うまくいかないと思うし、個人の良心にまかせるような発言は職務放棄と等しい」

また、「夜の街」にばかり責任があるかのような小池都知事のスタンスにも疑問の声も多かった。

「『夜の街』はホストクラブやキャバクラを想起させる言葉。同情や共感ではなく、侮蔑や反感を呼ぶ言葉だ。感染者自業自得、感染したほうが悪いという観念を植えつける。自衛せずに感染した124人に責任がある、都知事の私に責任はないと思わせる。責任転嫁にはもってこいの言葉だ。風俗産業で勤務している方々に対する差別でしかない」
「『夜の街』でなければ安全、という誤った認識を与える危険もありますが、今の首都圏で安全なところなんてどこにもないいでしょう。人が集まるところに身を置けば感染率が上がる。満員の通勤電車の中だってホストクラブと同じリスクだと思う。ホストクラブだと場所が特定されてわかりやすいからやり玉にあがるだけ。経済を再開させれば、そういう密集した環境と感染予防を徹底しながらどう共存していくか、を考えることが大事だと思う」
新宿区関係者です。新宿区長とホストクラブ経営者は協力して一生懸命に対策しています。それで感染者の数字が増えている現実があります。それはほとんどメディアに取り上げられませんが」

「東京だけ封鎖して」という地方民に都民大激怒

一方、「緊急事態宣言」を出すべきだという人の中には、全国一律ではなく、東京都首都圏だけを「ロックダウン」(都市封鎖)すべきだという意見が、特に地方の人から目立った。

地方民です。東京・神奈川に滞在していた方から新型コロナが検出され、私の住む県では何日かぶりの感染者が発表されました。うちの県では各自治体が頑張って患者の受け入れ体制を整備していますが、僻地で感染者が出ればお手上げです。首都圏での感染者数の急増は本当に不安です。お願いだから、首都圏だけ緊急事態宣言をもう一度出して、首都圏からの人の移動だけを制限していただきたい」
「私も地方民です。東京からの移動制限だけでなく、仕事などで東京に行く人が多いのでその制限も必要です」

これに対しては、東京都民から猛反発が起こった。

「都民ですけど、やっぱり地方の人はそういう考えなのですね。納得。消毒しながらも観光地を盛り上げるべきなのか、自粛するべきなのかよく分からなかったのですが、観光地に行かないようにします」
「都民です。もちろん地方になんか行きません!旅行が趣味でしたが、毎年お世話になっている旅館の皆様に不安感を抱かせてはなりませんもの。反対に地方の方にも絶対に東京へは来ないで欲しいです。ご自分の地域だけで生活と経済が成り立っていると思うなら、ずっとそこにお住まいください。わざわざ東京に降り立って更に公共交通機関を乗り継いで千葉のディズニーランドなどには行かないで下さい!」

(福田和郎)

「もう一度休業したいですか」と述べた西村康稔経済再生大臣(2020年6月8日の政府インターネットテレビより)